「ウィズコロナ」での新車発表会舞台裏

華やかなイベントの裏で縁の下を支える広報のオシゴト

2020/08/05
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新型クロスオーバーEV「 #日産 アリア 」が発表となりました。日産として重要な位置付けとなる世界戦略車ですが、新型コロナウィルス(COVID-19)がなかなか収束しない中、世界に向けた発表記者会見をどのように実施するか、難しい舵取りを迫られました。
今回の #日産ストーリーズ ではその渦中で奮闘した広報部員に焦点を当てて、一見華やかに見える新車発表会の舞台裏を時々刻々でご紹介しましょう。

中堅広報部員の吉成は入社14年目。電子部品メーカーから日産に入り、購買やグローバルセールス、社内広報を経て1年半前から商品広報を担当しています。元々発表会運営のメイン担当ではなかったとのことですが、どのような経緯で白羽の矢が立ったのでしょうか?

日産 アリアの発表会場は「 #ニッサン パビリオン 」という、横浜本社近隣にある期間限定の展示場で実施されました。実はニッサン パビリオンのこけら落としとなるアリア発表会は、新型コロナの感染状況を考慮して日程がなかなか確定せず、世界中から報道陣を招くことも断念し、ほぼ「無観客試合」となることに。これに伴い吉成の役割も大きく変わりました。
「元々海外プレスツアー(海外から報道陣を招聘し発表会を始め国内関連施設を取材いただくプログラム)を担当して場所の手配などを進めていたのですが、各国から日本への渡航も難しくなり、ツアーは中止。急遽5月の連休明けになって発表会そのものの担当になりました。」

2017年の #日産リーフ のワールドプレミア(世界初公開の発表記者会見)や2019年の #東京モーターショー のプレスデー(記者会見を伴う報道向公開日)も経験してきた吉成ですが、今回は勝手が違います。
「新型コロナの影響で4月から原則在宅勤務になって、現場の下見以外、準備期間はほとんどリモートで進めなければなりませんでした。同僚にちょっと話しかければ済む話もSkypeで、資料の共有や社内会議はTeamsで、社外の協力会社との調整はZoomで……」となかなかこれまでと同じ感覚で進めることはできなかったようです。

約1ヶ月半の準備期間を経て、7月9日朝7:45いよいよ現場入り。竣工直後のニッサン パビリオンを目の当たりにした吉成は「これが仮設?!と思えるほどしっかりした作りでしたね。デザインもクルマに合った洗練した感じで」と、これまでずっと睨めっこしてきた図面とは全く違う印象を受けたといいます。

(在宅勤務とオンライン会議の様子)

パビリオンの建設と一般公開期間の施設の運営はマーケティング部門が担いますが、7/9から発表会などの各種広報イベントの期間中は広報部門に託されます。中には非常に細かい仕事まで……。

(ニッサン パビリオン事前入館証)

「入館の管理が大変でした。発表前の秘匿車両を扱うので出入者は厳重に管理しなくてはならないですし、広報部員やメディア関係者だけでなく、車両を準備する開発部門や、イベントに関わる協力会社など1日に数百人が出入します。しかもいわゆる『三密』を避けるため同時に入館する人数に制限をかけ、超過した関係者には人数を減らすよう協力を依頼する必要が出てくるなど、通常の新車発表とは勝手の違う仕事が多かったですね」と、日々各部署との調整が続きます。

最終的に、今回の発表会は完全オンラインの「バーチャルイベント」になりました。そこで、臨場感を出しつつ幅広いリッチなコンテンツするための新しい試みとして、ドローンによる空撮など事前収録した内容も織り交ぜることになりました。そして、7月9日から13日はそのための撮影に当てられました。ところが、

「完成した施設を見た広報以外の様々な部署から、『こんな素晴らしい施設なら、ぜひうちも使いたい!』ということで、『CMの撮影を』『WEBサイト用の竣工写真を』『VIPの視察に』などさまざまな想定外の要望が舞い込んできたんです。これを本来の広報イベントの準備の合間を縫って調整するのに苦労しました。せっかくの素晴らしい施設なので、最大限、皆で活用したいという想いと、こちらの撮影も予定通りに進まないと発表会に間に合わないという不安。すべてが干渉しないよう再調整しなければならず……」

想定外といえば、さらにリモートワークならではの課題が。

「(前述の)各撮影クルーや車両、機材などの搬出入の動線は予め図面で決めていたんですが、現場で実際に見てみると段差があったり、荷捌き場からハンドキャリーする距離が長かったり、雨が降った際に高価な電子機器を含む機材が濡れるリスクがあったり、動線が交錯して他の撮影部隊のフレームに写り込んでしまったりと、平面図だけでは気づかない課題がいくつも出てきました。これについては現場を多く経験した商品広報のベテラン社員からアドバイスを受けて交通整理するすべを学びました」

(入館申請書(左)、インタビュー予定表(中)、会場レイアウト(右)、マニュアル(左下))

7月14日。ライブ配信とZoom運用チームの設営開始。今回はYouTubeやTwitterなどのライブ配信によるオンライン発表会となったため、本番の発表会以外に、世界各国のメディアとニッサン パビリオンをZoomでつなぎ、フォローアップのインタビューを実施しました。その数1日で30件以上!これをパビリオン内6カ所にカメラ、映像スイッチャー、照明、マイクミキサー、Zoom運用からなるインタビューエリアを設置します。

「各所に回線、電源、テーブル、椅子などの備品はいくつ必要か?他のイベントと交錯しないよういつ設置すべきか?など集約して代理店に指示します。それぞれのインタビューエリアで音声が干渉しないか、お互いのカメラに写り込まないか、並行して作業中の他の業者やクルーの出入りの音がインタビューの邪魔にならないか、かなり神経を使いました。これだけ準備しておけば、明日の本番日は大丈夫、あとはそれぞれが順調に進むかを見届けるだけと思っていました。」
ところが、そう物事はうまくいくとは限らない。その話は、後ほど。

(オンラインインタビューエリア)

7月15日。朝6:50パビリオン入館。いよいよ発表会本番の日を迎えました。記者会見への来場は無いとはいえ、梅雨の中休みは搬出入作業が濡れずにすむだけでなく、気分的にも嬉しいもの。

各インタビューエリアでは映像、音響、Zoom接続の最終テストなどが行われており、並行してCM撮影が会場内別のエリアで実施されていました。CM出演者やクルーとインタビューエリアの役員やスタッフと交錯しないよう綿密に調整を重ねてきましたが、ここでトラブル発生。

「ワイヤレスマイクが被っている。チャンネル変えて!」

インタビューの音響担当の一人が慌てた表情で駆け寄ってくる。ワイヤレスマイクは電波を使いますが、電波法で割り当てられた周波数が30チャネルあり、同じ空間で同時に使用できるのは6チャネルまで。これを干渉しないように各インタビューエリアの機材で調整していましたが、CM撮影で来場した別のクルーが同じチャネルを使っていたために不具合が生じてしまいました。あわてて重複していると思われる周波数を書いたメモを持って担当者がCM撮影現場まで走り、解決を図りました。

14:00、発表会ライブ配信開始。YouTube(日英)、Twitter(日英)、Facebook(日)、LinkedIn(英)と計6つのソーシャルメディアで配信されていることを確認。14:45、放送終了。チャット欄ではコメントが滝のように流れ、速報値では各チャネルの合計視聴数は10万におよび、SNSでは一時ツイッターのトレンドにも上がり、反響の強さに手応えを感じました。
ホッとするのも束の間、19時までずっとインタビューが回ります。ここでまたトラブル発生。

「インタビュー中に車両を照らしている天井のムービングライトが突然グルグルと回り出したんです……」

代理店経由照明業者に連絡して対処。どうやら原因は高度な通信機能を内蔵したムービングライトのプログラムが、他の持ち込み機材の通信と干渉してしまったようです。最後まで気を緩めることができなさそうです。

19:00、最後の欧州メディアのインタビュー終了。Zoomの接続が切断された瞬間、誰からともなく拍手が湧きました。「ああ、無事終わって良かった。」誰もがホッと一息ついたのも束の間、吉成は皆をさらに鼓舞します。「さあ、撤収しましょう!」そうです、、まだ撤収作業があるのです。

「数日前に雨の日に撤収がうまくいかなかくてクルーや業者の方々に迷惑をかけてしまったので、今回はその失敗を繰り返さないようにしました」

前回のベテラン社員からのアドバイスを活かし、荷捌き場からの動線やタイミングを見直したことで、1時間ほどで順調に撤収作業を終えることができたのを、吉成は万感の思いで見届けました。
「実は14日を迎えたところで『ひと山超えたな』と思ってはいましたが、15日のイベントを終了して心底ホッとしました。イベントはこれまでも経験してきましたが、商品広報としてメインで担当するのは初めてで、しかも新型コロナの影響で数多くのステークホルダーと思うように調整が進められず苦労しましたが、多くの貴重な経験を積むことができました。
そうした意味でも日産 アリアは自分にとって特別なクルマですし、変革期にある会社としてもとても重要な位置付けの商品です。
ここニッサン パビリオンをはじめ、日産ギャラリーや日産クロッシングで、数多くのお客さまに日産 アリアをご覧いただいて、世界中の皆さんに愛されるクルマとなって欲しいですね。」

7月16日、吉成は羽を伸ばしているでしょうか?
いえいえ、まだ膨大なメディア露出報告 -- おかげさまで今回はとても好評いただいているようです -- と請求書の処理が待っています。

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