第25回(2008年度)選評
向川 幹雄
(財)大阪国際児童文学館 館長
幼い子どもにはダジャレを使いたがる一時期があります。ことばを音として自由に操れることが楽しいのだと思います。ことば遊びをテーマにした詩を子どもがすきなのは、このことと無関係ではありません。お話にも、ことば遊びを題材にしたすぐれた作品がたくさんあるのですが、応募作品はダジャレは使われているものの、難しいせいか、ことば遊びを正面にすえた作品は見られません。
児童文学作品をたくさん読んで、新しい分野に挑戦されることを期待します。
あまん きみこ
童話作家
一次審査を通った候補作の束が送られてくると、新しい出会いを期待してどきどきします。期待どおりではない時もありますが、今回は嬉しい思いをたくさんもらいました。リアリズムもファンタジーも説話風なものも、さまざまな色あいの作品があり、全体的に充実していたからでした。
自分の思いと読者の子ども達の目線を重ねあわせながら、作品を書きあげることを、それぞれのかたが楽しんでおられるーそう感じたことを記して、次回に期待したいと思います。
松岡 享子
(財)東京子ども図書館理事長
集まってきたたくさんの作品を拝見しながら、それを制作していらっしゃるみなさんのご様子を想像します。もてるものを惜しみなくそそぎこんで、集中して過ごす密度の高い時間。入賞するしないにかかわらず、その時間こそが、みなさんの宝物だと思います。
ただ、その先に待っているのは、作品がそれを受け取る相手とどれだけよいコミュニケーションを成立させ得るかという問題。そこから、制作動機、打ちこみの度合い、技術的な面(童話でいえば国語力)が、逆に問われてくるのです。
杉田 豊
絵本作家
作品の選考では最初の出会の一瞬に方向づけられます。勿論ただの一べつで決めることではなく、各要素の角度を包含して見て評価するのですが、良いものには存在感があります。見過ごせない空間に吸引される力が見えるのです。
今回はこの様子の勢いのある作品が最終に残ったものに多く見られました。特に上位の四点にはそれぞれ異なる発想、表現としての技法の高さと独自性を持っておりました。僅差の高質性のレベルは、積み重ねてきたコンクールの寄与する証であると感じられました。
杉浦 範茂
絵本作家
このところ数年、渦巻き状態の中だけで、お互いが上下しながら毎年その中の一作品が卒業して行くと言った、やや固定化したパターンが続いて来たように思います。
唯単に新顔というだけでなく、出来れば毛色の違う作品が参入し、少しは筋違いなつむじ風など起きたら全体が活気付いて、常連も刺激を受ける事になります。
今回、そのような兆しが現れたように思います。ちらりと顔を覗かせた兆しがどのような影響を及ぼすか? 兆しの延長ではなくより強い動きとなるか、楽しみです。
高橋 忠生
日産自動車株式会社
取締役
副会長
当社の伝統ある社会貢献活動であります「ニッサン童話と絵本のグランプリ」が今年二十五回目を迎えることができました。これも皆様の温かい継続的なご支援の賜物と感謝しております。四半世紀にも亘り、優れた、新しい作品を世に送り出すお手伝いを続けられていることは私どもにとっても大きな喜びです。当社の絵本の寄贈活動を通じて作品がより多くの人の目に触れ、次世代を担う子どもたちが豊かな心や創造力を育んでくれることを願っております。今後も皆様にご協力いただきながら本グランプリに取り組んでまいります。