第20回(2003年度)選評
中川 正文
(財)大阪国際児童文学館理事長兼館長
例年どおり多くの童話や絵本に接し、こころ引き締る思いです。しかし新鮮で独創的世界を、次々開拓されるプロセスには共感をおぼえるのですが、それが結果として自分の人生に、どういう意味を持つかを省察し、自らに問うチャンスにしてほしいと願っています。
そして童話の方々にはテーマに対する姿勢のとり方を、絵本の方々には、ステキな絵に力をそそぐ以上に、文章のもつ微妙さ、恐しさに気がついて、芸術の原点である「ことばの世界」に関心をもっていただきたいものです。
あまん きみこ
童話作家
書く喜びは一言で言えば発見する喜びではないかと思います。自分で解っていることをどんなに技巧的に書いてもどきどきはしません。書くことで何かを見つけた時、作者はわくわくしその喜びは読む人に届くのではないでしょうか。
今回、最終選考に残った作品は全体に形が整ってよく纏まったものが多かったと思います。その中で「誰に書いたか」ということが度々問題になりました。発見の喜びと「誰に書くか」という目線が一致する童話の難しさを、私は自分の問題として痛感しました。
松岡 享子
(財)東京子ども図書館理事長
今年は、残念ながら童話の部では大賞の受賞者はありませんでした。テーマにおいても、文章力においても、群を抜いた方がいらっしゃらなかったからです。
来年応募してみようかなとお思いの方がいらっしゃったら、思い切って冒険なさることをおすすめします。ちいさく、ほどよくまとめようとなさらず、破綻してもいいから、元気いっぱい、エネルギーをぶつけてみてください。とくに、くっきりしたストーリーのあるもの、大声をあげて笑えるようなお話を待っています。
杉田 豊
絵本作家
絵本は印刷され製本された本が作品として価値が問われます。しかし原画には画材などの質感を含めて独自な迫力と、絵画的な存在感があります。勿論描くだけではなくコラージュなどの表現技術を駆使した自由な印刷原稿の制作が認められています。選考の場では、この原画に魅力が感じられるかどうかで評価されるのが国際通念になっております。
応募点数が多くなったのは嬉しいことです。最終選考に残った作品は何れも個性が感じられるユニークな世界を描いていました。
杉浦 範茂
絵本作家
恐らく過去最多と思われる千点近い応募作品群を前にして、身が引き締まりました。選考委員という立場から言えば、嬉しい身の引き締まりです。全作品を一巡しての感想は、数の多さで引き締まったこちらに比べて、相手(作品)の引き締まりが足りません。……と言ってレベルが低い訳では無いのです。作品数の割に頂点が高くはないけれど、残った作品は粒揃いというのが最終の感想です。今回応募の皆さん達が少しでもレベルアップされれば、こちらも又嬉しく引き締められることでしょう。
塙 義一
日産自動車(株)取締役会長
今回も昨年を上回る多くの作品をお寄せ頂き、大変嬉しく思います。毎年果敢にチャレンジし、受賞に至る方々のご努力にも、心より敬意を表します。
「継続は力」です。
今年、私ども日産自動車は創立70周年という節目を迎え、さらなる成長へ向けて加速してまいります。引き続き、皆さまとともに、新しい才能の輩出に貢献し、子どもたちに夢や想像力あふれる作品を届けて行くグランプリであり続けたいと強く願っています。