燃費向上の取り組み

エンジンの熱効率向上、CVTの伝達効率向上、電動化、車両軽量化により内燃機関の燃費向上を進めています。

VCターボおよびCVT

「VCターボ」エンジンは、燃費とパワーを決める最重要パラメータである圧縮比を自在に切り替えることで、通常はトレードオフの関係にある驚異的な低燃費と圧倒的なハイパワーをお客様の要求に応じて実現することができる量産型世界初のエンジンです。可変圧縮比ガソリンエンジン「VCターボ」を米国、中国においてインフィニティ QX50とアルティマに搭載しています。

「VCターボ」エンジンを始めとしたガソリンエンジンの効率向上のための技術として「ミラーボアコーティング」の適用を進めています。「ミラーボアコーティング」はピストンが上下運動するシリンダーの内壁に、従来の鋳鉄製シリンダーライナーに替えて溶かした鉄を溶射・吹付けすることで、機械損失低減や軽量化を図る技術です。

インフィニティQX50搭載のVCターボエンジンの特徴

トランスミッションによる燃費向上方策として、無段階に変速比を変えられるCVTの適用を進めています。CVTは、車速に応じて最も運転効率の良いエンジン回転数となるよう変速比を選択できることから、低速域から高速域まで滑らかで力強い走りと低燃費を両立することができます。日産はCVTを軽自動車から3.5リッタークラスの中型車まで幅広く採用しています。

スマートシンプルハイブリッドおよびe-POWER

パワートレインの電動化として、新型デイズにスマートシンプルハイブリッド、ノート・セレナにe-POWERを採用しています。

スマートシンプルハイブリッドは、エンジンにベルトで接続したモーターを使って減速エネルギーを回生し加速時に再利用することで燃費を向上させる技術です。新型デイズでは充放電能力の高いリチウムイオンバッテリーを組み合わせることで回生量を増やして、ブレーキで失われていたエネルギーを無駄なく再利用しています。

e-POWER搭載のノート

また、ノート・セレナに搭載している「e-POWER」はガソリンエンジンとモーターを融合した新しいパワーユニットで、ガソリンエンジンで発電した電力を利用したモーターの力で走行します。「e-POWER」は構造上、エンジンとタイヤが直接つながっていないため、最も効率の良いエンジンの回転数・トルクで発電することが可能となり、クルマが使われる頻度が高い市街地走行時において優れた燃費性能を実現しています。

燃費性能に加えて「日産リーフ」にも搭載している大出力モーターで100%駆動させることにより力強くレスポンスの良い加速と優れた静粛性を実現しています。

"e-POWERの発電機、バッテリー、駆動モーターのシステム

車両の軽量化の推進

車両の軽量化も燃費向上に向けた重要な取り組みのひとつです。日産は、構造の合理化、工法、材料置換の3つの手法により、車両の軽量化を推進しています。

材料置換においては、高強度と高成形性を両立できる世界初1.2GPa級超ハイテン材の採用を進めており、これまでに発売したインフィニティ「Q50」(日本では「スカイライン」)、北米「ムラーノ」に続き、2016年にはインフィニティ「Q60」にも拡大しました。さらに2018年3月米国で発売したインフィニティ「QX50」には、フロントサイドメンバーやリアサイドメンバーなどの車体骨格部材に世界で初めて高成形性980Mpa級超ハイテン材を採用しました。これらの超ハイテン材は、鋼材使用量低減や既存ラインでの生産が可能なため、薄肉化による軽量化を実現しながらトータルコストを削減できます。日産は車体の軽量化のために、車体部品における超ハイテン材を25%(重量ベース)以上に採用する目標を掲げ、超ハイテン材適用技術の開発に向けて積極的な取り組みを進めており、インフィニティ「QX50」では、超ハイテン材適用率27%を達成しています。これにより、ドライビングパフォーマンスを向上しながら軽量化を実現しました。

日産は、軽量化技術開発を積極的に進め、CO2の削減や新規採掘資源への依存低減を推進します。

ITSを活用した渋滞緩和プロジェクト

クルマの燃費は、車両性能のみならず、クルマを取り巻く交通環境やその使われ方にも左右されるため、日産は交通環境改善に向けた社会インフラ実現への取り組みを積極的に行っています。中でも渋滞緩和など自動車メーカー単体では実現が難しい道路交通問題の解決に向け、高度道路交通システム(ITS)を活用し、他業種と連携して取り組みを進めています。

ITSとは

ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)は、最先端の情報通信機器を用いて「人・道路・車両」の情報をネットワークでつなぎ、交通事故や渋滞などの道路交通問題を解決するシステムです。ITSにより、道路上の通信設備等のインフラと連携し、周辺車両の状況や自車を取り巻く交通環境の情報を利用することで、燃費の向上および渋滞緩和、さらに安全性なども向上させることができます。

ITSを活用したプロジェクト例

例1: 日本での「SKYプロジェクト」

日産は、主要拠点である神奈川県において、ITSを活用して交通事故低減や渋滞緩和を目指す「SKYプロジェクト」を2006年10月より実施。この大きな特徴は、一般のお客さまが参加し、日常の使用過程で渋滞緩和によるエネルギー利用の効率化やCO2(二酸化炭素)排出量の削減の可能性を検証していることです。
またこのプロジェクトは、自動車以外の業界とパートナーシップを組み、関係省庁の協力も得て進めています。 日産では、神奈川県で効果を検証して成功事例を導き、これを日本全国へ、そして世界へと広げていきたいと考えています。このように日産は、自動車メーカーの枠を超えた社会インフラの活用にも取り組みを広げています。

実験参加者のカーナビから、プローブ情報(車両の位置、速度などの情報)を収集し、プローブ情報センターで精度の高い交通情報に加工します。
このプローブ情報から加工された交通情報を実験参加者のカーナビに提供します。これにより、これまでのVICS交通情報に対し、より多くの道路の交通情報が得られます。また、この交通情報を使って、よりスピーディでスムーズなルートの探索が可能になり、渋滞緩和を促進します。

例2: 中国北京市 新交通情報システム技術実証プロジェクト

近年急激にクルマの普及が進む中国での渋滞緩和に向けて、日産は2010年からNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受け、北京市交通委員会とともに同市にてIT端末を活用した動的経路誘導(DRGS)とエコ運転支援の実証実験を行いました。うち望京地区では、自家用車を所有する一般ドライバー約1万2,000名にポータブルナビ(PND : Portable Navigation Device )を使用してもらい、動的経路誘導とエコ運転支援サービスを実施しました。
約1年間にわたる実証実験の結果、動的経路誘導システムの利用により、走行時間は5.1%短縮、燃費(中国での燃費基準で算出)も7.6%向上しました。渋滞区間を回避して交通量の少ない道路を利用することで交通量を分散できるため、地域全体における車両の走行速度を向上させることも可能になります。また、エコ運転支援サービスを受けたドライバーは、運転習慣が改善し、燃費が6.8%向上しました。同時に実施したシミュレーションでは、動的経路誘導システムが北京市全体で10%普及した場合、車両の平均速度が約10%向上し、また燃料消費量とCO2排出量を約10%削減できると試算されています。

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