最新のEV技術で伝説のモデルを後世に残したい

最新のEV技術で伝説のモデルを後世に残したい

2025/01/10
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チャレンジ精神にあふれるエンジニア、日産を象徴するスポーツカー、それに最新の電動化技術を掛け合わせたら何が生まれるでしょうか。
クルマが好きで、挑戦心に溢れる日産のエンジニアたちが製作したR32型スカイラインGT-RのEVコンバージョンモデルは、オリジナルモデルがもつワクワクするドライビング体験を最新技術で再現したいという挑戦心から生まれました。

【R32EV PROJECT MOVIE】R32EVプロジェクトを追ったスペシャル映像

【R32EV PROJECT MOVIE】R32EVプロジェクトを追ったスペシャル映像4:55

原動力

本プロジェクトを率いたのは、長年、日産でパワートレイン・EV技術開発に携わってきた平工 良三エキスパートリーダーです。

R32型 GT-Rのファンであり、かつて自身もR32型スカイラインを所有していた平工は、このプロジェクトを推進したいと思う一方、さまざまな議論を引き起こすことも予期していました。

自身も憧れたR32型スカイラインGT-Rが持つ魅力を後世にも伝えていきたい。そのためにどのようにして残すべきか・・・平工は葛藤しながらも、R32を再現するためにはR32を使いたいと考え、R32 GT-Rをベース車両にする決断をしました。

平工 良三

「30年後、つまり2055年にガソリンを入れてオリジナルのGT-Rを運転する事は簡単ではありません。そこまでクルマを維持することも難しいでしょう。しかしクルマの魅力を電気やデジタル技術を使って再現することができて、未来の世代の人たちがR32 GT-Rを体験できるようにすることは、とても価値があることだと思っています」と平工は言います。

それに加えてチームメンバーは、伝説のモデルであるR32型スカイラインGT-Rの魅力を分析し、再現することができれば、そのノウハウを今後の電動車開発にも活かせるかもしれないと考えました。

エクステリアデザイン

外観をみると、R32型スカイラインGT-Rそのもののように見えます。ガンメタルグレーの車体色をまとった、EVコンバージョンモデルは、パワートレインがEV化されたようには見えません。外観上の違いは、16インチだった純正ホイールをオマージュした専用の18インチホイールと、ブレーキ性能を確保するために高性能ブレーキシステム、またテールパイプが無いという点です。

エクステリアデザイン
エクステリアデザイン

オリジナルを再現するための電動パワートレイン

2.6リッター ツインターボエンジンの性能を再現するため、最大340Nmのトルクを発生することができる電気モーターを前後に2基搭載しました。そして、リーフ NISMO RC02の62kWhのバッテリーをリアシート部分に搭載しています。

オリジナルを再現するための電動パワートレイン

チームが目指したのは、オリジナルモデルを超えたハイパワー車を作ることではなく、最高出力280PS(206kw)、最大トルク353Nmというオリジナルの性能を忠実に再現することでした。

バッテリーや電動部品の搭載により、R32EVの重量はオリジナルに比べて約370㎏増加していますが、オリジナルのR32型GT-Rと同じトルクウエイトレシオになるようモーターの出力とトルクを調整しています。

オリジナルを再現するための電動パワートレイン
オリジナルを再現するための電動パワートレイン

R32 GT-Rのダイナミック性能を目指して

R32 GT-R がそうであったように、R32EVの製作に取り組んでいるチームメンバーは、単に絶対的なパワーや加速性能を追求するのではなく、R32 GT-Rが持つ運転の気持ちよさを作り出したいと考えました。

R32 GT-R に搭載されたATTESA E-TS 四輪駆動システムは、35年前のデビュー以降、優れたトラクション性能と安定性能で日産のスポーツ4WDシステムの代名詞となっています。R32EVエンジンに比べて俊敏なレスポンスをもつ電動モーターを前後搭載していますが、R32 GT-Rのハンドリングに近づけるようなモータートルク制御を行うようチューニングされています。

R32 GT-Rのダイナミック性能を目指して

スポーツサスペンション

R32 GT-R EVコンバージョンは、オーリンズ社製をベースとしたNISMO スポーツサスペンションキットを装着しています。車体重量が増加したにもかかわらず、最適なハンドリングと乗り心地を実現しました。

R32 GT-Rのドライビング感覚も再現

今日、ほとんどの量産EVは静かな室内空間を提供することを目指していますが、本プロジェクトでは、R32 GT-R の感覚も再現することを試みました。

R32 GT-R EVコンバージョンにはパドルシフト機能を搭載し、マニュアルギアシフトの感覚を再現しています。シフトチェンジの時は、まるで機械式ギアボックスを介してクラッチ操作でシフトチェンジをするような感覚を味わえる制御を入れています。また、室内のスピーカーからはオリジナルモデルが採用しているRB26DETTエンジン音をベースとしたサウンドも再現し、ドライバーの高揚感を醸成します。

R32 GT-Rのドライビング感覚も再現
R32 GT-Rのドライビング感覚も再現

大型化したブレーキと特別仕様のホイール

重量が増加したR32EVの制動力を最適化するため、R35 GT-R用の大きなローターとモノブロックキャリパーを装着しました。さらに、ブレーキローターとキャリパーの大型化に合わせて、R32 GT-Rのオリジナルモデルが装着している16インチのアルミホイールをオマージュした特別な18インチホイールを制作しました。

大型化したブレーキと特別仕様のホイール

インテリアの改良

インテリアは、オリジナルモデルの要素を可能な限り保ちながら、より快適なドライビング体験を実現するために必要なアイテムをアップグレードすることを目指しました。メーターやセンターコンソールは高解像度の液晶パネルタイプを採用しながらも、R32 GT-Rのオリジナルを忠実に再現したグラフィックにより、新しさと懐かしさを両立しています。シートは純正の色や表皮を再現したレカロシートを採用しています。

インテリアの改良
インテリアの改良

R32 GT-R開発ドライバーからのフィードバック

チームは車両の完成に伴い、日産のテストドライバーを務めていた、加藤 博義にその乗り味を評価してもらいました。加藤は日産で最も経験豊富なテストドライバーの一人であり、R32 GT-R開発時にメインテストドライバーでした。R32 GT-Rのすべてを知る加藤は、R32EV試乗後にチームメンバーに貴重なフィードバックを提供しました。

R32 GT-R開発ドライバーからのフィードバック
R32 GT-R開発ドライバーからのフィードバック

R32 GT-R EVコンバージョンの未来は?

R32EVコンバージョンモデルや、コンバージョンキットを販売する計画はありませんが、このプロジェクトに携わり、自分たちの思いの実現を目指して多くの時間を費やしたチームメンバーは、この経験から貴重な知見を得たに違いありません。この活動の経験は、今後の日産車の開発にも大いに活かされることでしょう。

R32 GT-R EVコンバージョンの未来は?
日産の名車GT-R × 最新の電動化技術――R32 GT-R EVコンバージョン誕生秘話における10の真実

日産の名車GT-R × 最新の電動化技術――R32 GT-R EVコンバージョン誕生秘話における10の真実1:00

主要諸元

R32 EVコンバージョン R32型スカイラインGT-R
全長(mm) 4,545 4,545
全幅(mm) 1,755 1,755
全高(mm) 1,340 1,340
重量(kg) 1,797 1,430
モーター/エンジン Twin electric motor RB26DETT
トランスミッション N/A 5-speed manual
最高出力 160kW 電気モーター x 2 206 kW(280 PS; 276 hp)
最大トルク 340Nm電気モーター x 2 353 Nm(260 lb⋅ft)
4WD システム ツインモーター4WD ATTESA E-TS
ブレーキ R35 GT-R コンバージョンキット
(NISMO社製)
ベンチレーテッドディスク
タイヤ 235/45R 18 225/50R16
シート数 2 4

*オリジナルのスペックは 発売時プレスリリースに準じています

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