「フェアレディZ プロトタイプ」のデザイン誕生秘話

日産のデザイン担当役員がプロトタイプ誕生の経緯を語る

2020/09/16
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「Z」の名称は、50年以上にわたり世界中で愛されてきました。日産が9月16日に発表した「フェアレディZ プロトタイプ」は、このスポーツカーの伝説を背負い生み出されました。新たな扉を開き、事業構造改革を推し進める日産は、情熱と革新、そしてワクワクする走りという日産の伝統を引き継ぐこのモデルとともに新たな伝説を作り出します。

このインタビューでは、日産のグローバルデザイン担当専務執行役員であるアルフォンソ アルバイサが、「フェアレディZ プロトタイプ」が日産にとってどのような意味を持つのか、そして彼が率いるデザインチームがこのプロトタイプをどのように生み出したのかを説明します。また、歴代Zへのオマージュと最新のデザインとの間の絶妙なバランスについても語ります。

Q:「フェアレディZ プロトタイプ」の狙いは何ですか?

アルバイサ:何よりも、新型Zの登場を世界中の皆さんに知ってもらいたいと思っています。Zは日産にとって大変重要なモデルです。世界初の量産電気自動車「日産リーフ」をはじめ、日産は最先端の技術を誰の手にも届くものとしてきました。誰でも乗れる本格的なスポーツカー、それがZです。

Q:デザインに際して、どのようなアプローチをしましたか?

アルバイサ:これまでの歴史に深いオマージュを捧げるか、未来志向を貫くか、2つの方向性を検討しました。デザイナーたちは、歴代モデル一つひとつについて、幅広い年代のファンとオーナーの間で高い人気を誇った理由を調べながら、検討とスケッチを重ねました。最終的に、過去から未来へと時代を超えるデザインに決定しました。

Q:初代Zの面影を残すことを、どれくらい重視しましたか?

アルバイサ:これほど象徴的な歴史を持つクルマのデザインをするのは、大きなチャレンジです。これまでに北米だけで130万台以上、世界中では累計約180万台のZが販売されてきました。これだけのお客さまが、自分だけのZのストーリーを持っているわけです。誰もが、初めてZを見た日のことを覚えています。ですから、単にレトロな雰囲気を醸し出すだけでなく、お客さま一人ひとりに、大切なZの記憶を思い出させ、笑顔にさせるようなデザインにしたいと考えました。私は6歳のとき、生まれ育ったマイアミで、初めて初代Zを見ました。とても印象的でしたね。停まっていても、速そうに見えました。そのとき以降、ずっとZを追いかけてきました。精密な初代モデルから、80年代の300ZX(Z32型)、最新テクノロジーを搭載した90年代のZまでです。私は、350Z(Z33型)を無邪気な子どもたちに見せたいと思いました。かつて、私が初代Zに抱いた憧れの気持ちを彼らと共有したかったのです。

Q:歴代のZのなかで、初代(S30)以外にヒントをもらったモデルはありますか?

アルバイサ:デザインの初期段階では、あらゆる世代のモデルからヒントを得ました。初代Zへの深いオマージュもありますし、300ZXも意識しました。300ZXは、日産にとってもZにとっても、技術のブレイクスルーとなったモデルでした。ボディラインを意識させないシームレスな面が、水の流れで角がとれた石のように滑らかな質感を生み出し、特徴的なプロジェクターランプは、スマートで先進的な印象を与えていました。「フェアレディZ プロトタイプ」もこうした特徴を引き継いでいます。滑らかなエクステリアの面が、夢のクルマにふさわしいすっきりした流線形を実現しています。

Q:特徴的なシルエットのほかに、どんな部分に過去のZの雰囲気が感じられますか?

アルバイサ:全体的に歴代モデルを意識していますが、その雰囲気が色濃く出ている部分もあります。例えば、エクステリアのデザインで絶対に譲れなかったポイントは、フードの高さです。初代Z(S30)と同じように、フードをテールより高くしています。デザイナーも、かなり苦労したのですが、この特徴的なシルエットはどうしても守りたかったのです。

LEDヘッドライトを囲む「こ」の字形のデザインも、240ZGの「Gノーズ」モデルのオーナーなら一目で気づくはずです。240ZGは、ヘッドライトの上に透明なヘッドライトカバーがついています。光が当たると、このドーム形の部分に反射して丸い輪ができます。私たちはこの特徴が大好きで、「フェアレディZ プロトタイプ」のアイデンティティにも馴染むと考えました。

テールライトは、300ZXのデザインを参考にしました。300ZXが技術の飛躍的進歩を象徴したように、私たちもテールライトに最先端のデザイン手法を採用し、昼夜を問わずくっきりと鮮明に光るライトを実現しました。

Q:「フェアレディZ プロトタイプ」の最大の特徴は何ですか?

アルバイサ:初代Zの要素を残しつつ、極めて低重心なスタイルが、このクルマに全く新しい印象を与えています。エクステリアデザインは、力強くダイナミックでありながら、自然で魅力的な外観を生み出し、低いリヤフェンダーと張り出したホイールは、飛びかかろうとする瞬間の猫を思わせます。

初代Zは軽く、俊敏でした。このクルマは、それに力強さを加えています。例えば、寒い朝に小気味よくギヤチェンジをしながら大地を捉えて走る、内に秘めた「ゾクゾクするような」パワーを感じさせます。

Q:イエローのモデルが目をひきます。これも歴代Zへのオマージュですか?

アルバイサ:初代Zと300ZXに設定されていたイエローのボディカラーを意識して、光沢のあるパール系のイエローを選びました。パールを加えたのは、日の光の下でキラキラ輝くようにしたかったからです。300ZXにもこの系統のカラーがありましたが、当時の技術ではこれほど鮮やかな発色はできませんでした。

Q:インテリアデザインには、どのようなアプローチをしましたか?

アルバイサ:車内に足を踏み入れた瞬間、別世界を体験できるようにしました。インテリアは手袋のようにぴったりとフィットし、ドライバーと一体化するとともに、必要な情報に素早くアクセスできます。もちろんコックピットは、くつろいでドライブする際に、見た目も操作も楽しめる空間になっています。

また、純粋にドライビングに集中できるよう、データを一目で把握できるということを重視しました。そのためにデジタルパネルの表示に統一性をもたせています。外観はクラシックなスポーツカーですが、ドライバーはハンドルのスイッチでインフォテインメントや車両の設定をコントロールすることができます。

とはいえ、インテリア全体はモダンな印象です。現代のドライバーのニーズに合わせてデジタル機能を最適な配置にしたので、気が散ったり、操作が面倒だったりということはありませんよ。

Q:「フェアレディZ プロトタイプ」を通じて、どのようなメッセージを伝えたいですか?

アルバイサ:「フェアレディZ プロトタイプ」は日産のDNAを体現したクルマで、Zファンと歴代Zに対する私たちのコミットメントを表しています。これはコンセプトカーでもなければ、将来のスタディモデルでもありません。新型Zの登場を宣言するものなのです。

何故、日産はZをつくり続けるのか、と聞く人もいるでしょう。私に言わせれば、それは、何故人間は息をするのかと聞くようなものです。日産が存在する上で、決して欠かすことができないクルマなのです。日産は、幅広い商品ラインナップと豊かな歴史を持つクリエイティブな企業です。私たちの過去から未来へと続く情熱を感じてもらいたいですね。お客さまにとって思い入れが深いクルマをつくるのは、素晴らしいことです。「フェアレディZ プロトタイプ」は、過去へのオマージュを感じさせながら、内外装に先進的な最新のテクノロジーを感じさせるクルマに仕上がっています。

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