独立社外取締役と機関投資家の対話について
当社は、会社情報の適時・適切な開示と継続的なコミュニケーションを通じて、株主・投資家との建設的な対話を行い、相互信頼の関係を構築することをコーポレートガバナンスガイドラインで定めており、その一環として、独立社外取締役と機関投資家の皆様とのラウンドテーブルを実施しました。
2024年6月開催
参加投資家:13社20名
参加独立社外取締役:
木村康取締役会議長
ベルナール デルマス筆頭独立社外取締役
井原慶子報酬委員会 委員長
永井素夫監査委員会 委員長
アンドリュー ハウス指名委員会 委員長
ブレンダ ハーヴィー
開催方法/場所:オンライン
質疑応答要旨
今年3月に日産は公正取引委員会から下請法違反で勧告を受けたが、独立社外取締役としてどう考えているか。
今回の事案は重大と認識しており、重く受け止めている。事案の経過についてはタイムリーに報告を受けており、対外コミュニケーションについても透明性を持って行うよう指導した。下請業者に過度に請求していた金額に関しては、既に全額返金済である。監査委員会としては違法性のある行為についての責任追及を行い、関係した経営陣への処分も取締役会に諮って決定した。また、公正取引委員会からの勧告後も、下請け業者に対して過度な請求を継続していたとの一部報道を受け、事実究明のために外部弁護士に調査を行ってもらったが、違法性のある事案は認められなかった。今後に向けたサプライヤーと日産の関係性の改善のため、取引先向け専用のスピークアップできる仕組みを構築した。サプライヤーとの健全な関係を維持する事は非常に重要であり、今後も下請法に関連する事案は監査委員会の重点監査項目に入れ、再発防止を含め引き続きモニタリングしていく。あわせて倫理観の醸成も重要であり、従業員へのコンプライアンス教育についても確認を行っていきたい。
今年3月に発表した経営計画The Arcの策定過程に、独立社外取締役としてどの程度関わったのか。
自動車産業は大きな変革期にきており、外部環境の変化に適応できるかが問われるなか、経営計画The Arcの策定において、計画発表までに執行側と8回ほど議論を行った。日産が、自身の強み・弱みを明確に把握し、事業の選択と集中を行っているのか、アライアンスの活用方法などを中心に、実現性のある計画かつ、2030年に向けた長期ビジョンNissan Ambition 2030への架け橋となる経営計画になるよう要望した。また、取締役会では毎回、非常に闊達な議論を行っており、引き続き、The Arcの進捗状況をモニタリングしながら、達成に向けて一丸となって協力していく。
近年低PBRの状態が続いているが、独立社外取締役として、長期的な視点で企業価値を向上させていくために優先的に取り組むべき課題をどのように認識しているか。
ご指摘の通り、企業価値を上げることは極めて重要だと思っている。今後の取締役会では、パフォーマンスが新経営計画通りに進捗しているのか、株価の動き、財務健全性、信託に残っているルノー保有分の日産の株式買い戻しの方向性など、企業価値を高めるための議論を執行側と共にしっかり行う予定である。
直近5年を振り返れば、会社が生き残るために財務体質の改善、販売の質の向上が重要であり、新型コロナウイルス感染拡大による混乱や半導体不足などの逆風はあったが、業績の改善を着実に進めてきた。今の自動車業界は100年に一度の変革期の中にあり、今後も、競争力の高い商品と、その価値をお客様に訴求する事でブランド、企業価値の強化に貢献していくことが必要だと思っている。
役員報酬の業績連動報酬で設定しているKPIは、短期的な指標が多く、中長期的な視点が欠けているのではないか?独立社外独立取締役として、業績連動報酬のKPI設定をどう考えているか。
自動車産業の変化が激しい中で、長期的な視点での事業の持続性や株価・企業価値向上を重要だと認識しており、販売の質の向上やカーボンニュートラル・人権尊重に向けた取り組みなど、長期的に達成が必要な評価指標も組み込まれている。株価や企業価値向上について株主様と同じ視点を持ち、また、中長期的な事業の成長にコミットすることも考慮し、執行側をモチベートできる報酬形態とするために、金銭報酬だけでなく長期インセンティブにつながる譲渡制限付株式ユニット(RSU)を導入している。
サプライヤーとの共存共栄の思想がないと新たな技術分野での発展はないと思うが、サプライヤー向けの取り組みについて、独立社外取締役としての考えは?
サプライヤーとの共存共栄が何よりも優先度が高い。今後もサプライヤー全体に対して日産としてどう付き合っていくか、包括的にしっかり確認しながら、問題は早期に察知して管理監督していくことも重要なので注視していきたい。
国土交通省が調査を行った自動車メーカーの型式指定申請における不正行為の問題について、日産は該当なしとのことだったが、不正防止についてどのような対策・取り組みが必要と思うか?
今回の車両認証不正問題を受け、独自にモデルチェンジ、マイナーチェンジ含む全358イベント分の約27,000件の検査項目に対して調査を実施した結果、当社では不正行為は認められなかった。当社では、2018年度の完成車検査問題以降、生産開発部門でのコンプライアンスへの意識は高まっており、この取り組みが今回の結果につながったと考えている。引き続き、風化防止に向けて定期的に執行側と連携し注視していく。
2021年3月開催
参加投資家:17社25名
参加社外取締役:
木村康取締役会議長
豊田正和指名委員会 委員長
井原慶子報酬委員会 委員長
永井素夫監査委員会 委員長
ベルナール デルマス
アンドリュー ハウス
ジェニファー ロジャース
開催方法/場所:オンライン
質疑応答要旨
ガバナンス体制の改善状況と今後の課題及び取締役会の実効性についてどのように評価されているか。
2019年度は指名委員会等設置会社に移行し3委員会が発足して方針や原則を定め、2020年度は各委員会がより戦略的に機能している。
取締役会や委員会は多様性のあるメンバーで活発な議論が行われているほか、執行サイドとのコミュニケーションもしっかりとっており、実効性は確保されている。
現在の最大の課題はNissan NEXTの成果を上げることであり、業績向上や中長期的な戦略についても深く議論している。
指名委員会の今後の課題・次の時代を担うリーダー人材の育成について教えてほしい。
指名委員会の3大重要案件の一つが次世代のCEO、後継者育成の計画作成であり、1年ぐらい前から、どういう要件を兼ね備えた人材を次世代のCEOとして育てていくか議論してきた。ベストプラクティスと言われるような会社の話も聞きながらプログラムを作る佳境に入っており、今後さらにスピードを上げて実行していく。
日産には、潜在力の高い次世代のリーダー候補者がそろっている。
気候変動対応の取り組みに対する評価。また、取締役会でどの様な議論があり、社外取締役としてどのようにモニターしているか。
今後は気候変動が最重要課題の一つになる。日産は2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みを発表したが、電動化や生産技術のイノベーション等、2030年代までにやるべきことがある。電動化における強み、コアコンピテンシーを活用し気候変動に対応するための戦略を決めていくことになる。
持続的成長軌道に乗せ、長期的な視点で企業価値を向上させていくための課題を社外取締役として、どのように認識しているか。
業績は回復しつつあるが、長期的な会社の持続性のためにはまだ不十分であり、台数を伸ばして利益ある成長を果たすということが重要。それを達成するには、会社としてどのような価値を提供できるのかを考え、新しい中期計画に織り込んでいく必要がある。
3社アライアンスについて、独立社外取締役として意識している点や議論された点は。
少数株主の利益保護は独立社外取締役の役割。日産は利益相反の解消のための指針を策定しており、監査委員長がグループ長を務める利益相反解消グループでその運営を行っている。アライアンスは重要なアセットであり、執行サイドがこのアセットを十分に活用して企業価値向上に活かしているかが重要。コンフリクトが発生していないか、少数株主にとってもメリットがある話なのかということをモニタリングしながら中立的な立場で監督している。
取締役会だけでなく執行役員レベルのダイバーシティも重要だが、取締役としてどう考えているか。
CEO、COOはダイバーシティ&インクルージョンの活動にも積極的だが、現場はまだ女性が少ない。日本企業の中ではダイバーシティー&インクルージョンのリーダーでもあると思うが、日本国内においても更にダイバーシティを進めていけるよう、取締役レベルだけでなく、執行レベルでも人事も含め話し合っていくべき。
2020年9月開催
参加投資家:12社12名(6名ずつのセッションを2回実施)
参加社外取締役:
木村康取締役会議長
豊田正和指名委員会 委員長
井原慶子報酬委員会 委員長
永井素夫監査委員会 委員長
開催方法/場所:当社グローバル本社
質疑応答要旨
指名委員会等設置会社に移行して変わった点。
取締役会が以前は30分程度だったのが、今は3-4時間、さらに事前ミーティングも含めると7-8時間かかっている。また、多様性をもった取締役会になったことにより議論が活性化した。
資本コストを上回るリターンを上げて市場を満足させ続けるための体制作りについて。
事業構造改革により、「量から質」の転換と「選択と集中」を行うとともに、アライアンスを活用して利益率を追求していく。
事業構造改革計画「Nissan NEXT」の策定における社外取締役の役割。
月1の取締役会だけでなく、独立社外取締役委員会や臨時取締役会などで議論を重ねた。執行側が作った案へのフィードバックや利益相反の有無の確認などを行った。
長期のビジョンや成長戦略の作成の予定は
長期のビジョンを作って次の中期計画につなげるということを早急に進めたいが、重要なのは中身。自動車会社の企業価値を決めるのは技術であり、そのシーズを日産はかなり持っている。
役員報酬にESGといった長期の目線は入っているのか。
ESGという項目にはなっていないが、Nissan Wayを実行できているかというのが報酬の一部になっている。業績やNissan Wayなど様々な要素がバランスよく入るよう設計されている。