第26回(2009年度)選評

向川 幹雄

(財)大阪国際児童文学館 館長

想像の世界をふくらませながら、楽しんで童話を書かれている様子が投稿作品からうかがえて、読む私も楽しくなります。この楽しんで書くことがもっともたいせつで、なにかを教えようなんてことは考えないで下さい。もう一つ心がけていただきたいことは、あまり子ども読者を意識しないことです。もちろん、童話は子どもの文芸ですから、まったく意識しないわけにはいかないでしょう。しかし、子どもだけを考えず、おとなにもはば広い人生哲学を訴えることを考えていただきたいと思います。

あまん きみこ

童話作家

どうしても表現したい世界を持っておられる?と感じた作品に、今回も幾つか出会いました。

その作品の中にある「惜しい」部分は、いっそう残念でなりません。作者は自分の内的宇宙を信じるだけではなく、読む側の目、耳になって読みなおすことが、やはり大切でしょう。「惜しくてならない」は、これから輝く未完の作品に対しての期待の思いです。どうぞ、入選しなかった、入賞しなかったとして、その作品を捨てないでください。育て続けてこそ見えるものが必ずあるはずですから。

松岡 享子

(財)東京子ども図書館理事長

私の担当は主に童話ですが、絵本も合わせて拝見しています。絵本の場合、作品の出来不出来は別として、あれだけの枚数の絵をかきあげるには、どんなに長い時間、集中して制作に励まれたことかと思い、いつも敬意を禁じえません。

童話のほうは、今年は、以前から私が願ってきたユーモアのある作品がちらほら見えてきたのがうれしいことでした。いつも申し上げることですが、冒険を怖れず、従来のやさしい、ほんわかとしたイメージの童話からはみだすような大胆な作品に挑戦してください。

杉田 豊

絵本作家

十数点の作品に絞り込むまで何回か見て行くうちに、その作品の存在価値が明確になってきます。この段階から上位を見定めるのが大変で、時間もかかるのですが、それだけ各作品が僅差で並び、以前に入賞している実力のある常連も抜け出られません。

伯仲している中から優秀賞候補になった作品はそれぞれ異なる筆致ですが、自由闊達な表現描出と云う新鮮に感じる力が共通に見られました。四分の一世紀も続いたグランプリから得られた素地であり、今後の研鑽を期待いたします。

杉浦 範茂

絵本作家

前回少し筋違いなつむじ風が吹いて、それまでの数年続いていたワン・パターンが変化を見せ始め今回に楽しみを繋ぎました。

筋違いのつむじ風が原因かどうかはともかくとして、繰返されて来たパターンの変動は続いて、常連の顔触れが変りました。前回筋違いのつむじ風を吹かせた新顔の皆さんが、上位入賞から姿を消したのは残念ですが、それに替って少し静かとは言え実力的には優るとも劣らない新顔の新しい楽しみに加え、前回の迫力ある筋違いのつむじ風待ちの楽しみも続きます。

川口 均

日産自動車(株)常務執行役員

当社の伝統ある社会貢献活動であります「ニッサン童話と絵本のグランプリ」が今年二十六回目を迎えることができました。これも審査員の先生方をはじめとする皆様の温かい継続的なご支援の賜物と感謝しております。長きに亘り、優れた、新しい作品を世に送り出すお手伝いを続けられていることは私どもにとっても大きな喜びです。私たちの絵本の寄贈活動を通じて作品がより多くの人の目に触れ、次世代を担う子どもたちが豊かな心や創造力を育んでくれることを願っております。