第41回(2024年度)大賞受賞者インタビュー

- 童話の部 「春風の魔法使い」
紫野 さん
影響を受けた作品は?
村上春樹の、とくに翻訳作品のファンです。村上春樹の文体に触れると自分の文章力が調律される気がして、同じ作品を何度も何度も読み返します。チューニングみたいなものです。
有栖川有栖。中学生のころから「火村英生シリーズ」が大好きで、大人になって火村先生とアリスの年齢を自分が追い越してしまったときは本当にショックでした。
私が文章の師と仰ぐ先生に、こちらのコンテストの受賞作の『なすびは何色?』と『ながみちくんがわからない』を紹介していただいて。子ども向けの短編でも、こんなに人の心を感動させられるんだなあ、自分も書いてみようかなあ、と思ったのがきっかけです。
主人公や登場人物たちの成長を描くこと。
文章の師匠である先生に、「こんなコンテストあるよ」と教えていただきました。
初めてです。
私は高校で国語の教員をしているのですが、古典の授業で『春暁』を教えたときに、中国籍の生徒が中国語の発音で読んでくれたことがありました。私自身、それまで漢詩は字面で教えているようなところがあったのですが、中国語で読まれると本当にきれいな音楽みたいに聴こえて、ああ、漢詩って歌なんだなあと。その発見が今回の作品のスタート地点です。
構想は早くからできていたのですが、書き始めたのは締め切りの1週間前くらいです。間に合わなければ今年の応募は見送ろうと思っていたくらいで、ぎりぎりでしたね。
検索すればAIがなんでも教えてくれて、自分が実際に経験していなくても、なんとなく「知っている」ような気になる時代だけれど、スマホやタブレットの画面を眺めるだけでは想像もできないような素敵なことが、この世界にはあふれています。怖くても未知の世界へ飛び出して、その世界を自分の目でじかに見る。触る。音を聴く。匂いを嗅ぐ。そこにいる人と関わる。そういう〈実体験〉は絶対に想像を超えてくるから、たくさんの生身の経験をして、自分の世界を広げてほしいということです。
特にお気に入りの場面はどこですか?
授業中にたんぽぽの綿毛を捕まえて、逃がしてあげるシーンです。これも実際に私の生徒がしていたことで、その子は私がこっそり見ていたなんてつゆも知らないと思いますが(笑)、それを目撃するに至って、この作品を作り上げるピースが全部揃った気がしました。
書きたいシーンがたくさんあったので、それを原稿用紙10枚に収めること。
周りにいる人や出会った人を観察して、ドラマを見つけることです。
今回の作品は短編で、アイデアで書き切ったようなところがあるので、今後はもっと構成やキャラクターを練って、長編を書きたいと思っています。

- 絵本の部 「うらがわ」
河原 久美子 さん
影響を受けた作品は?
『ピッキーとポッキー』(あらしやまこうざぶろう/ぶん あんざいみずまる/え 福音館書店)は人生で最初に好きになった絵本です。すみれのサンドイッチはどんな味だろうかとときめきます。
イギリスの絵本作家ジル・バークレム。秘密の扉をあけて奥に続く階段を駆け上がる、パッチワークのひざかけ、黒いちごのジャム、全てに憧れます。
絵本を創るようになったきっかけを教えてください
昔に読んでいた絵本を手にとるとその時の気持ちが真空パックを開封したようによみがえり、絵本いいなあと再発見し自分でも作りたくなりました。
絵本を創作するうえで気をつけていることはなんですか?
登場人物の気持ちがどう変わっていくかに気をつけています。
絵本創作の仲間と話した時に「日産の賞が向いているのでは」と言われたことが耳に残っていました。
初めてです。
水彩紙にアクリルガッシュです。
植木鉢をひっくり返したらいる虫に、子供の頃の自分を重ねていた気持ちから。
2022年2月から考え始めました。
好きな事で自分を表現できるといいね。
特にお気に入りの場面はどこですか?
ラストシーンです。前向きな未来を感じるかなと。
全ページです。どういう絵がいいか何度も考えました。
常に気になる会話、発見、出来事を探しています。
幼かった自分がわくわくする絵本を作ります。