クルマから地域社会へ:日産リーフ再生バッテリーの新たな活躍の場

クルマから地域社会へ:日産リーフ再生バッテリーの新たな活躍の場

2025/04/23
  • サステナビリティ
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電気自動車「日産リーフ」がデビューして15年。クルマとして使われなくなったリーフからリチウムイオンバッテリーが取り出され、別の用途で「第二の人生」を歩み始めています。

例えば、停電が頻発する地域の学校では、太陽光で発電した電気を貯める蓄電池として。国の電力網がカバーしていない地方コミュニティでは、バックアップ電源として。リーフの再生バッテリーが利用される場面とその可能性は広がり続けています。バッテリーの再利用は、持続可能な循環型の経済を構築する上で重要な役割を果たしています。日産が掲げる4R(再利用、再製造、再販、リサイクル)のコンセプトによって、リーフの再生バッテリーは、当初の狙いを超えて活躍の場を広げ続けているのです。

教育支援 – 南アフリカの教室に明かりをともす

南アフリカの「フィラデルフィア学校」では、停電が頻発し、授業や寮生活に支障をきたしていました。この学校では障がいのある生徒470名が生活しており、安定的な電力供給は欠かすことができません。

フィラデルフィア学校の教室

フィラデルフィア学校の教室

「聴覚障がいのある生徒には、手話で授業を受けるために明るい教室が必要ですし、視覚障がいのある生徒は点字プリンターに頼っています」と校長のテンバ テンバさん。「停電するたびに、料理や学習、さらには生活全般が中断されてしまうのです」

そこで、太陽光パネルとリーフの再生バッテリーを設置しました。太陽光で発電した電力をバッテリーに貯めることで、バックアップ電源を確保できました。停電しても授業や寮生活を続けられるため、テンバさんは「生徒たちは停電による中断を心配せずに学習に集中できるようになりました」と話します。

エネルギーのレジリエンスを確保する – 市内唯一の電源をバックアップ

北アフリカ沿岸のスペインの自治都市「メリーリャ」では、リーフの再生バッテリーが9万人以上の住民に安定した電力を供給しています。この都市は国の電力網から隔離されており、国際エネルギー企業「エネル」の子会社が運営する一カ所の火力発電所に、電力供給を完全に依存しています。そのため、この発電所が停止すると市全体が停電してしまいます。

都市の電力インフラの回復能力を高めるために、日産はエネル社と、測定・制御システムを専門とするロッコーニ社と提携し、使用済みリーフバッテリーを利用した革新的なバックアップ電源を作る「セカンドライフプロジェクト」を立ち上げました。停電時には、このストレージ施設から15分間電力が供給されるため、運転をリセットして再開するのに十分な時間を確保できます。またこのバックアップ電源は4MWの電力を蓄えることができ、メイン発電所の負荷を軽減しながら、最大1.7MWhを供給できます。

AMIEO(アフリカ、中東、インド、ヨーロッパ、オセアニア)地域のエネルギーサービスディレクター、スフィアン エル コムリは「私たちは、未来は電動化されると考えています。エネル社とのコラボレーションにより、バッテリー再生モデルを構築し、電力インフラの回復能力を支え、電気自動車のバッテリーを循環型経済の一部として再利用し始めました。そこには無限の可能性があるのです」

使用済みバッテリーのサーキュラ―エコノミー(循環型経済)モデル

使用済みバッテリーのサーキュラ―エコノミー(循環型経済)モデル

イノベーションの促進 – 日本の工場ロボットを動かす

日本の追浜工場では、700台以上の小型ロボット(AGV:無人搬送車)が床に貼られた磁気テープに沿って迅速かつ正確にクルマの部品を運んでいます。

「AGVに搭載されているバッテリーは電気自動車に載って数千キロを旅してきました」と、日産でAGVを開発している生産技術研究開発センターの部長、松本 将師は言います。「現在、使用済みバッテリーは、廃棄物を減らし、サステナブルな電動化を目指しながら、次世代の車を作るサポートをしています」

日産の工場内で稼働するAGV

使用済みバッテリーのサーキュラ―エコノミー(循環型経済)モデル

AGVに搭載されている再生リチウムイオンバッテリーは最大8年間使うことができ、従来の鉛酸バッテリーよりも長持ちで、短時間で充電できます。このイノベーションは時間を節約し、廃棄物を減らし、より環境に優しい効率的な工場の実現に貢献しています。

サステナビリティの推進 – 北米日産本社で節電

リーフの再生バッテリーは、アメリカのテネシー州にある北米日産本社でも持続可能な未来を築いています。バッテリーエネルギー貯蔵ソリューション(BESS)プロジェクトを通じ、オフピーク時に電力を再生バッテリーに蓄え、ピーク時には供給することで、オフィスの二酸化炭素の排出量を抑制し、エネルギーコストを低減しています。

「季節によって、1日に2回のエネルギー需要のピークがあります」と北米日産の地域エネルギー・環境マネージャー、クリス ゴダードは言います。「このプロジェクトでは、オフピーク時に再生バッテリーに蓄えた電力を供給することで、建物で使用する電力を補っています」

北米日産の本社ビル

北米日産の本社ビル

このシステムにはリーフ約50~60台分のリチウムイオンバッテリーが使われていて、二酸化炭素の排出を年間3.7トン削減できる見込みです。

「これは単なる技術開発ではなく、サステナブルな未来を築くためにリソースをどう使うかが問われているのです」とゴダードは指摘しています。

コミュニティを変革 – オフグリッドや遠隔地に光をもたらす

リーフの再生バッテリーは、地域社会でも人々の生活を支えています。日産は4Rエナジー社と提携し、太陽光パネル付きの外灯を作っています。太陽光発電で作られた電力がリーフの再生バッテリーに蓄えられる仕組みです。ケーブルや大きなインフラを必要としないため、電力網から離れている場所でも使えますし、自然災害から復興中の地域でも活用されています。

日産と4Rエナジー社は2018年から、東日本大震災の際に津波で甚大な被害を受けた福島県浪江町や、2024年の能登半島地震で被災した石川県珠洲市などにこの外灯を設置し、各地で希望の光をともしています。単に道路を照らすだけでなく、地域の安全性と快適性の向上に貢献し、復興活動を支援する存在となっています。

日産リーフの再生バッテリーが使われた太陽光発電パネル付き外灯(浪江町に設置)

日産リーフの再生バッテリーが使われた太陽光発電パネル付き外灯(浪江町に設置)

廃棄の少ない未来に向けて

クルマが走ることを終えたとしても、搭載されたバッテリーの物語は終わりません。第二章の始まりです。廃車から生まれる再生バッテリーは、都市や地域社会を支え、人々の日常生活をより良くする力となり、サステナブルな未来を実現する担い手となります。これは単に地球を守ることだけではありません。再生バッテリーの需要が高まるにつれ、リーフのような電気自動車の付加価値が高まり、電気自動車がドライバーにとってより賢い選択肢となることにつながっているのです。

日産のサステナビリティの取り組みに関する詳細はこちら

※ ミドルテネシー電力会社、7 States Power Corp.、およびテネシー大学オークリッジイノベーション研究所との協業により、北米日産アメリカ本社で実施している日産リーフの再生バッテリーを活用したプロジェクト。

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