冷熱システム統合熱マネジメントシステム​

facebook
X
linkedin
mail

クルマ全体の冷熱システムを一括して制御する統合熱マネジメントシステムが最小限のエネルギーで快適な走行を実現します

電気自動車(EV)の航続距離を伸ばし、快適な室内環境を提供するためには、バッテリーとキャビンの温度管理が重要です。

クルマ全体の冷熱システムを一括して制御する統合熱マネジメントシステムによって、クルマの中で発生する熱を効率的に管理することで、バッテリーの消費電力を抑えながら快適なロングドライブを可能とします。

技術の働き

キャビンを快適にするためには空調機能は欠かせませんが、温度調節にはエネルギーを必要とします。特に冬場の暖房は大きなエネルギーを消費するため、エンジンなどの発熱源を持たないEVは効率的な暖房性能が求められます。また、バッテリーは適切な温度域に保つことでその性能を最大限発揮させることができます。バッテリー温度が低いと十分な回生が得られなかったり、急速充電性能が低下します。一方、急速充電や高負荷走行によって温度が上がった場合も性能や寿命が悪化します。昇温や冷却にはエネルギーが必要となりますが、このシステムによってより効率的な温度調整を行います。

統合熱マネジメントシステムはキャビン、バッテリー、パワートレインシステムの冷熱回路を統合することで、走行時や充電時に発生し捨てていた熱をキャビンの空調やバッテリーの温度調整に活用したり、冷却の方法を適切に切り替えるなど、車両全体でエネルギー効率を向上させる熱マネジメントシステムです。

さらに、バッテリーはナビとも連携し、ルートに応じた最適な温度調整が可能です。

統合熱マネジメントシステム

技術の仕組み

キャビンの熱マネジメント

除湿暖房付きヒートポンプシステム

日産は世界に先駆けて初代「日産リーフ」よりヒートポンプを採用し、効率的な空調システムの開発に取り組んできました。暖房時に電気ヒーターを使うと消費電力が大きくなりますが、ヒートポンプは冷媒を介して外気の熱をキャビンに取り込むことができ、電気ヒーターと比較して消費電力を大幅に減らすことができます。

さらに通常のヒートポンプは、弱い冷暖房時には電気ヒーターも併用することで温度をコントロールしていましたが、除湿暖房つきヒートポンプでは、冷媒の流路と流量を緻密にコントロールする電制バルブにより電気ヒーターが不要となり、消費電力を減らすことができます。

空調システム
除湿暖房付きヒートポンプシステム

廃熱を利用した暖房システム

統合熱マネジメントシステムは、走行や充電により発生したバッテリーや電動パワートレインの熱を、冷却水でチラーまで運び、そこで冷媒に移動させることができます。暖房時にこの熱を活用することで、空調システムの負荷を抑えて消費電力を削減します。

廃熱を利用した暖房システム
廃熱を利用した暖房システム

バッテリーの熱マネジメント

昇温制御(廃熱利用/ナビリンク機能)

自宅などで普通充電を行うと車載充電器(OBC)が発熱します。このシステムはOBCの熱をバッテリーの昇温に利用することができます。バッテリーを適温に近づけ、走行開始直後から十分に回生を行うことが可能となり、航続距離の増進につながります。

さらに、ナビリンク機能により、ルート上に充電スポットがある場合はルート負荷を先読みして充電スポット到着時のバッテリー残量を予測し、充電器の出力に応じた最適な温度を算出します。充電開始時にバッテリーが最適な温度になるように昇温開始タイミングを制御することで、バッテリーヒーターの作動時間を最小化して消費電力を抑えます。

OBCの熱をバッテリーへ利用

OBCの熱をバッテリーへ利用

ナビリンク機能による昇温制御

ナビリンク機能による昇温制御

冷却制御(冷却モード切り替え/ナビリンク機能)

外気温とバッテリー温度に応じて2つの冷却方法を自動的に切り替えます。強い冷却が必要な時は冷媒を用いた冷却システムを、それ以外では走行風によるラジエーター冷却を積極利用することで冷却時の消費電力を抑えます。

ナビリンク機能によりルート負荷を予測してバッテリーの温度調整に最適な冷却方法を自動で選択し、消費電力を削減します。ルート負荷は道路勾配、リアルタイムの平均車速や渋滞情報、エアコンなどの使用状況をもとに予測します。

平坦な道が続く場合など、負荷が低いと判定した時はラジエーターで冷却し、先のルートに高速道路がある場合など負荷が高いと判定した時は、冷媒を用いて冷却を行います。また、急速充電後の走行負荷が低いと判断した場合は、バッテリーの受入温度を調整し、急速充電時の充電量を増加させます。

ナビリンク機能による冷却制御
ナビリンク機能による冷却制御

ナビリンク機能による冷却制御