新型「キックス」にちなんだスニーカーをデザイン、本業はバッテリーのエンジニア
モーガン クール、エレクトリカル デザイン エンジニア(米国)
2024年夏、北米日産から新型「キックス」が発売されました。「キックス」は、「ストリートで映える高級スニーカーのような洗練されたデザイン」が特徴のクルマです。では実際に、そのコンセプトであるストリートで映える高級スニーカーとは、いったいどのようなものでしょうか?
北米日産では「キックス」にぴったりなスニーカーのデザインを競う社内コンテストが開催されました。コンテストにあたっては、日産シニア デザイン ディレクターのケン リーによるコンセプトやデザインを説明するセッションが開催され、日産の役員15人が審査員を務めました。
このコンテストで選ばれたのが24歳のエレクトリカル デザイン エンジニアのモーガン クールです。「私はデザイナーではありませんが、コンテストのことを聞いて、これはぜひ応募しなくてはと思いました。グラフィックデザインが好きで、自分のクリエイティビティを活かせるチャンスを待っていたんです」と語っています。

「『キックス』の特徴は都会的で洗練されたスタイルです。スニーカーのデザインには抽象的なラインを使うことで、型にはまったスタイルから解放され、自由になるイメージを表現しました。それがまさに、『キックス』の大胆でユニークな特徴だと考えたからです」


彼女のデザインは現在、実際のスニーカーとして制作が進んでいます。「あのスニーカーをデザインした人」ということで、オフィスでも注目を集める存在になったモーガンですが、普段はどのような業務に携わっているのでしょうか?モーガンは日産でエレクトリカル デザイン エンジニアを務めています。その仕事においても、さまざまなプロジェクトや問題解決にモーガンのクリエイティビティがいかんなく発揮されています。
日産での仕事

モーガンはパワーアーキテクチャの設計チームに所属し、バッテリーのエンジニアを務めています。仕事柄、先進の技術にはいつも高い関心を寄せています。
「日産は全個体電池の開発を進めています。仕事としてこの分野に関わらせてもらえて、本当にワクワクしています」
と、モーガン。全固体電池は飛躍的に電気自動車の性能を向上させる高度な電池技術です。電気自動車(EV)の充電時間を大幅に短縮し、航続距離を延ばすことができると期待されています。また、従来のリチウムイオン電池より安全性も高まります。
カナダ出身のモーガンは、これまでデジタルマーケティングや原子力エンジニアリング、土木工学など、さまざまな分野でキャリアを積んできました。それでも最終的に自動車業界に入ってきたきっかけは、やっぱり「クルマが好き」ということにつきます。
また、電気系統にも多いに関心があります。日産での仕事は、クルマの設計だけではなく、モータースポーツやさまざまな車載技術にも関係するもの。クルマ好きで電気系統好きのモーガンには、まさにぴったりなキャリアでした。


日産に入社したきっかけは何でしょうか?
「以前に『日産ジューク』に乗っていて、そのクルマを本当に気にいっていたんです。大学在学中に、学生が自作のレーシングカーで競い合うフォーミュラSAEミシガンを見に行ったことがあります。その時、日産のブースで日産チームの人と『ジューク』について話し込んだのが、そもそもの日産と私の関係の始まりです。クルマや運転技術に関心があったので、2023年にエンジニアとして日産に入社しました」
ニッサン アクセラレーションチーム
クルマ好きのモーガンは、「ニッサン アクセラレーションチーム(NAT)」にも所属しています。NATは、モータースポーツ好きの従業員による任意のクラブで、米国ミシガン州ファーミントンヒルにあるテクニカルセンターに拠点を置いています。レースシーンで活躍してきた「GT-R」や、電気自動車(EV)のレース「フォーミュラE世界選手権」など、日産とモータースポーツは切っても切り離せない関係です。
このモータースポーツへの情熱は、従業員同士のつながりを深めるNATのような活動にも表れているのですね。
「入社する時に『ニッサン アクセラレーションチーム』のことを知りました。入社1か月後にはさっそく、オートクロスレースにマニュアルの『日産セントラ』で出場して、どっぷりのめり込むようになりました!」
モーガンは、以前のデジタルマーケティングのバックグランドを生かして、NATのSNS発信にも積極的に力を入れています。
「業務終了後の時間に、SNSで北米日産について知ってほしいことをいろいろ発信しています。日産の将来を担う人材に興味を持ってもらいたいですし、クルマ好きのコミュニティを広げることもできます。任意のクラブとはいえ、NATは北米日産にとても貢献していると思います!」
バッテリーエンジニアとして多忙な毎日を過ごしつつ、NATの活動も続けていくのは簡単なことではありません。しかし、仕事の専門分野と個人的な関心の分野がうまく重なりあっていることで、両方にメリットがあるとモーガンは考えています。つまり、「レースで学んだことをクルマの生産に生かすとともに、逆に、設計で得た知識をレースでも活用しています」。

モーガン クールの1日
午前6時:朝型なので早起きです。出勤前に愛犬をデイケアに預けに行く日は少しだけ起床が遅くなります。
午前7時から9時:まだ交通量の少ない静かな時間帯に愛車で出勤します。オフィスが静かなうちに、日本の同僚から夜のうちに届いたEメールに対応します。
午前10時から午後12時:バッテリーエンジニアの日々の仕事はさまざまです。たとえば、試験で判明したモジュールの問題解決にあたることもあります。


午後1時から2時:同僚とランチするか、1人になる時間を取ります。ランチの後も、チームのみんなといつもスナックをシェアして食べています。
午後3時から6時:午前中と同じく、やることは毎日違います。サプライヤーと設計変更に取り組むこともあります。最新ソフト設計を実車でテストし、バッテリーへの影響を見るために、クルマに再インストールすることもあります。
午後7時から就寝まで:仕事の後にNATの活動がない日は、近所の新しいお店に行ったり、犬の散歩をしたり、友人や家族と過ごしたりしています。
スニーカーデザインコンテストへの挑戦を通じて、コンフォートゾーンを抜け出すことで、思いがけない喜びや成果が得られることを実感しました。モーガン クールのキャリアは、創造力とチャンスをつかむ力の大切さを物語っています。日々の業務では、早朝からバッテリー設計に取り組み、夕方にはモータースポーツ活動にも精力的に参加するなど、彼女の1日は情熱と好奇心に満ちています。