耐久品質の改善

優れた耐久性の実現に向けた、数々の実験

お客さまにできるだけ長く、快適に乗り続けていただくため、日産では、時間の経過とともに生じる問題について、さまざまな角度から性能の確認を綿密に行っています。

錆びることのないクルマづくり

塩害耐久実験は、空気中や水に含まれる成分によって金属が腐食する現象、つまり“錆”に対する耐久性を評価・確認する実験です。そして長期間使用後の「錆にくさ」を評価するため、腐食を早く起こさせる特別な試験方法により、短期間に数年先の劣化状態の再現をしています。
具体的には、錆の発生を促すために最も適切な濃度の塩水をクルマに吹きかける塩水噴霧室や、まるでサウナのような高温多湿の湿潤室に試作車を置くような条件を、何度も繰り返します。さらにテストコース内の水溜まり路面や砂利路を何度も走行します。これらの実験は世界的に塩害に厳しい地域を想定して設定されています。
このような規定の試験が完了した試作車は、金属パネル一枚一枚をバラバラにして、錆が発生していないか隅々まで確認します。万が一、想定より早く錆びた場合は、材質を見直したり、構造を変更するなどの対策を行っています。

塩害耐久実験

円錐噴霧室と湿潤質を交互に行き来させるほか、塩が含まれた塩泥路を走行。 短期間で「クルマの一生分」となる使用状況を再現し、錆の発生有無を確認しています。

強度の確認実験

ある特定の条件下で、タイヤに大きな力が加わった時に、変形したりする部品がないかを確認します。例えば、歩道と道路の段差や駐車場の縁石などにうっかり強く乗り上げてしまった時、足回りにダメージを受けてまっすぐに走らなくなってしまうことがないよう、確かめています。

1.思いのほか勢いよく段差に乗り上げてしまい、ハッとしたことはないでしょうか。縁石や路面の凹みなどを見落として、クルマの直進性や走行性能に影響を与えたりしないよう、足回りの強度についてさまざまな場面を想定して確認を行っています。

2.雨の降る日や雪道でクルマがスリップし、タイヤが歩道の段差にぶつかった時の再現。

3.深い側溝に落ちたときの再現。

炎天下から極寒まで、耐え得る品質の確認

炎天下や極寒の環境下における使用で、クルマの内外にわたってどのような劣化が起こるかについても、専用の施設のなかで実験を行っています。クルマには温度変化や紫外線の影響を比較的受けやすい樹脂やゴム素材が採用されていますが、日照付恒温槽では太陽光による紫外線や温度上昇の影響のほか、低温による劣化の様子を確認しています。さまざまな地域を想定でき、灼熱のアリゾナや零下40℃にもなるロシアも、現地に出向かずとも再現しています。

日射

炎天下に停めたクルマのハンドルが熱くて触れない経験は多くの人にあるでしょう。日射実験ではダッシュボードの表面温度が100℃以上にもなり、過酷な環境での変形などをチェックしています。

低温

日照付恒温槽では、零下40℃までの低温実験を行うことができます。想定した環境下での正確な評価には低温を保ったままクルマを確認する必要があるため、担当者は防寒具に身を包んで作業を行っています。

劣化の確認は、外装においては樹脂製バンパーやヘッドライトレンズのひずみをはじめ、グリルやエンブレムなどのメッキ部品も検査の対象となります。さらに室内ではダッシュボードやドアトリム、フロアカーペット、スイッチ類など多岐にわたり、最近では先進安全装備のためにフロントウィンドウ上部に設置されたカメラのカバーも検査項目に加わりました。実験の結果は、変形や破損を防ぐ対策についての適切な提案とともに、設計へフィードバックしています。

空調実験

日射と低温の環境が再現できるという点において、日照付恒温槽と似ている低温日射実験室は、エアコンの性能評価に使用されています。日産には多様な地域の気象条件やクルマの使い方に合わせた実験が行える施設が整えられています。