研究通信
2022.03.04
研究通信#2の4号
社会デザイン研究
高齢ドライバー運転行動意識調査
「運転マナー&総まとめ編」
1.研究の目的
高齢ドライバーの交通事故要因解明の一方策として、全国20歳以上のクルマ運転者1,800人を対象に運転行動意識に関するWEBアンケート調査を行い、その意識に高齢者特有の傾向がないかを考察しました。
ドライバーの運転行動は、遵法マインドや他者調和性、危険源発見スキル、運転操作スキルなど色々な認知的・心理的因子により決定されると言われています。アンケートの質問項目は、これら因子に関連付けて抽出しました。
この調査の分析結果を、4回に分けて報告しています。今回はその4回目、マインド系影響因子、スキル・身体系影響因子の両方に関連して、運転マナーについてまとめました。最後に本調査全体の振り返りを行いました。
2.回答者プロフィール(基本データ)
回答者の人数 年代層別の内訳(単位:人)
20〜40代 | 50代 | 60代 | 70代 | 80代 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
都心エリア | 200 | 200 | 200 | 200 | 100 | 900 |
地方エリア | 200 | 200 | 200 | 200 | 100 | 900 |
※都心エリアは 東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,京都府,大阪府,兵庫県 地方エリアはそれ以外
調査時期:2021年9月
3.分析結果
- 目次
- 3-1.自分の運転マナーと他人の運転マナー、どう思う?
- 3-2.道路を安心して走れていますか?
- 3-3.実際プレッシャーを感じたことありますか?
- 3-4.他の車の速度についていけますか?
- 分析まとめ
3-1.自分の運転マナーと他人の運転マナー、どう思う?
自分の運転マナーは良いと思っている人は多いようです(91.8%/特に都心エリアが多い)。一方で、他人の運転マナーに対しては悪いと思うことが多くなっています(85.6%)。
50代より年齢が高い層を見ると、年齢が上がるほど、自分の運転マナーは良く、他人の運転マナーも気にならなくなる傾向にあります。
3-2.道路を安心して走れていますか?

他のドライバーに対して、プレッシャーを感じさせるような運転について、「とても不安」は4割強、「やや不安」を含めると8割以上になります。
男性は年齢が上がるほどこの不安が大きくなり、女性は年齢に関係なく大きな不安を持っています。
殆どの人が不安を持っている道路って、良くないですよね。自分では周囲に不安を与えるような運転をしているつもりはなくても、周囲の人はどう感じているかわかりません。自分の運転は周囲にどう思われているか、考えながら運転しましょう。
3-3.実際プレッシャーを感じたことありますか?
他のドライバーから、プレッシャー(圧迫感)を感じるような運転を、「頻繁に」「時々」されたことのある人は、約4割です。「全くない」は8.9%しかいません。
性別に関わらず、年齢が上がるほど、プレッシャーを感じるような運転をされた人は少なくなります。高齢になると、速度が出るような幹線道路や高速道路の走行が減り、自宅周辺の移動が多くなることが一因と考えられます。
3-4.他の車の速度についていけますか?
車を運転時、他の車の速度についていけないと感じることが、「頻繁に」「時々」ある人は3割弱。決して少なくない数字だと思います。
この質問では、踏み間違いの不安と似た傾向を示しています(研究通信#2の2号)。全体では、年齢が上がると、60代あたりを底に一旦減少しますが、高齢になるほどまた増加していきます。女性は男性より、速度についていけないと感じる人は多いようですが、その意識は高齢になるほど、減っていきます。
分析まとめ
全年齢層で自分の運転マナーは良いと思っている人は多いですが(91.8%)、一方で、他人の運転マナーに対しては悪いと思うことが多いようです(85.6%)。自分の運転マナーを振り返ってみることも必要なのかもしれません。
今回の調査では、他のドライバーに対して、プレッシャーを感じさせるような運転について、年齢にかかわらず非常に多くのドライバーが不安を持っていることが分かりました(「やや不安」を含めると8割以上)。実際、 そのような運転をされた経験が「全くない」人は8.9%しかいません。一方で、若年層や高齢者を中心に、他の車の速度についていけないと感じる人が多くいることが分かりました。他の車の速度についていけない人にプレッシャーをかけているとしたら、非常に危険な行為と言えます。他のドライバーにプレッシャーをかける理由は色々なケースがあると思われますが、いかなる理由であっても、このような運転は許されることではありません。
交通安全未来創造ラボから
ドライバーの皆さんへのメッセージ
クルマに乗っていると、ともすると自分が大きく、
強くなったように勘違いしてしまいがちです。
時には周囲が邪魔もののように見えてしまうこともあるかもしれません。
他のドライバーに対して、プレッシャーを感じさせるような
運転は絶対止めましょう。自分の運転が周囲に
どう思われているか一度振り返ってみませんか。
高齢ドライバー運転行動意識調査 『振り返りと今後』
高齢ドライバー運転行動意識の分析結果を研究通信4回に分けてお送りしてきました。サマリーすると下図のようになります。
今回の研究を通し、高齢ドライバーの安全運転・遵法マインド、他者調和性等は比較的高く、運転に自信を持っていることが分かりました。一方で、その自信の裏付けとなるはずの運転スキルが十分備わっているとは限らないことも垣間見えてきました。また、低速事故の認識が低いなど年齢に共通する課題もいくつか分かってきました。
今後は、今回分かった「運転行動意識」の傾向と、実際の運転スキルとの関係について、北里大学 川守田先生の有効視野研究、新潟大学 村山先生の運動・運転機能研究、相模女子大学 角田先生の「おしゃれ×安全」研究、日産自動車の運転行動モデル研究を連動させて解明していく予定です。今後の交通安全未来創造ラボの活動にご期待下さい!
高齢者の運転行動意識について4回続いた研究通信は、今回が最終回です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
余話---こんな調査もやってみました(その1)
交通安全は何色?
交通安全をイメージする色は、「緑」が4割台で一番多くなっています。
年齢が上がると、緑を選択する人が増える傾向にあり、黄色を選択する人は明らかに減っていきます。この原因ははっきりしませんが、年齢の低い子育て世代は、子供が交通安全で黄色いものを身に着けている影響かもしれません。
交通事故は何色?
交通事故をイメージする色は、年齢に関係なく、圧倒的に「赤」が多いという結果になりました。
年齢が上がると、女性は若干「赤」以外を選択する人が増えていきますが、やはり多くの人が「赤」を選んでいます。
道路では、悲しい「赤」を見ないように、安全運転に心がけましょう。
余話---こんな調査もやってみました(その2)
目標を設定する教育プログラムに関心ありますか?
健康を長く維持するための目標に向けた無料の教育プログラムへの参加意向は、「非常に」「やや」そう思うは7割弱。
年齢が上がると、この参加意向は増えていく傾向にあります。男性より女性のほうが若干参加意欲が高いようです。
仲間づくりを大切にする教育プログラムに関心ありますか?
健康を長く維持するための仲間作りやコミュニケーションを大切にする無料の教育プログラムへの参加意向は、「非常に」「やや」そう思うは6割強。
年齢が上がると、この参加意向は増えていく傾向にあります。男性より女性のほうが若干参加意欲が高いようです。
- レポート制作:
- 堀越実研究員、大村佳子研究員、大槻裕茂研究員(サポート:奥田寛規研究員)
- アドバイザー:
- 長谷川哲男ラボ リーダー兼 研究員、ラボ研究員各位
※本稿は交通安全未来創造ラボの独自調査によるものですが、一部(公財)交通事故総合分析センター(ITARDA)などのデータ・公表資料も参考にさせて頂きました。この場をお借りして感謝申し上げます。