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活動レポート
「日産NPOラーニング奨学金制度」 第9期活動報告(2007/07/11)
第9期修了式・第10期スタートアップセミナー
活動報告 榎本麻奈美さん


人生の大きな一歩

第10期生の皆さまはじめまして。社団法人シャンティ国際ボランティア会にインターンで参加いたしました、日産NPOラーニング第9期生で、現在早稲田大学法学部3年の榎本麻奈美と申します。
さて、本日こちらにいらっしゃる第10期生の皆様はどのような思いでこのインターンシップに参加されているのでしょうか?皆様それぞれ熱い思いをお持ちだと思います。
NPOには1人〜大勢で成り立つもの、環境問題に取り組むもの、国際協力に取り組むもの、福祉に力を注ぐもの等、さまざまな分野のNPOがあります。その中で私は国際協力に取り組む、シャンティ国際ボランティア会でのインターンを志望し、インターンシップを行いました。

 

はじめに、私がこのインターンシップに参加したきっかけをお話します。実は私はとりたてて国際開発学や海外援助論なるものを専門的に学んだことが一度もありません。またボランティア経験もありませんでした。ただ、それまでにメディアなどの影響でボランティアや国際協力という活動や仕事に漠然と興味と憧れを持っていました。そして私も人を助けられるようなことをしたいと思っていました。しかし、思いばかりが膨らんで実際に行動を起こすまでにはなかなか発展しませんでした。そんな時、大学でのある国際協力に関する講演会を聞きました。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、その時の講演者は地雷禁止国際キャンペーンの創始者であり1997年にノーベル平和賞を受賞したジョディ・ウィリアムズ女史です。彼女の活動や経験を聞いて、私も考えるだけではなくて実際にNPOの現場で行動しようと決心して応募しました。ですから昨年のインターンに参加することが私のNPOへの初めての関わりでした。

 

私が行ったシャンティ国際ボランティア会は、現在タイ・ラオス・カンボジア・ミャンマーなどの地域で学校建設などの教育支援活動、図書館事業、その国独自の文化伝承などの国際協力活動を行っているNGO団体です。国内活動では、阪神・淡路大震災以降、緊急救援活動にも力を入れています。そのためシャンティ国際ボランティア会には、海外事業課と国内事業課があります。私は国内事業の「絵本を届ける運動」という、事業に参加しました。この運動を簡単に説明しますと、まず日本全国の支援者の方々に日本語の絵本に現地語の訳文シールを貼っていただき、その絵本をシャンティが保管し、集まった絵本を年に一度現地の子どもたちに届けるというものです。昨年度は約1万5000冊の絵本を送りました。

 

その中で私が受け持った仕事は、絵本の梱包作業や、完成した絵本の点検・修正作業という一軒単純そうでとても地道な作業でした。しかしそれは、国内の支援者の皆様と現地の子どもたちを結ぶ立場であったため責任も重大でした。また、2万冊近い絵本のチェック作業は多大な時間と労力が必要な作業でもありました。
そのため、シャンティの活動は、たくさんのボランティアさんに支えられています。シャンティ東京事務所の真ん中には大きなテーブルがおいてあります。そこでは学生からお年寄りのボランティアさんまで毎日たくさんの人がボランティアにやってきて、そのテーブルで作業します。私は、そのボランティアさん達との交流の中でも、NPOに関すること、またそれ以外のことでも、大変多くのことを学ばせていただきました。世代の違うボランティアさんたちとの交流もとても貴重な経験でした。

 


ところで、支援を受ける国の事情を考えた時に食料や居住地、医療機関の支援、また衛生環境の整備などが思い浮かぶかもしれません。しかし、図書館や自分の国の言葉で書かれた本がないことを想像したことがあるでしょうか?私は、考えたことがありませんでした。むしろなぜ生活物資ではなく子どもを対象にした絵本なのだろう?と疑問を持っていました。
これには次のような理由があります。シャンティのこの運動は、1980年に、タイのカンボジア難民キャンプで始まりました。カンボジアでは恐怖政治によって多くの知識人が殺害され、またたくさんの書物が焼却されました。ですから当時のカンボジアにはカンボジア語の本が50冊もなかったそうです。本の無い生活なんて私たち日本人の立場からだと考えられないことだなと思いました。

幼児期には、ここにいる皆さんのほとんどが絵本を手にとって読んだことがあるかと思います。カンボジアには今現在も自分の絵本を持っている子どもは極少数に過ぎません。絵本は、食べ物のように一瞬でなくなってしまうものではなく、継続して使用することが出来るということ、子どもたちの文字を書く能力などの教養を高めてくれるということ、何より、内戦などで家族や国を失って心に傷を負った子どもたちに笑顔を与えてくれます。そのような理由からシャンティは絵本を送り続けているのです。
シャンティ(SVA)の創設者である、有馬実成(ありまじつじょう)さんは、「難民を救うことができるのは難民自身だ、ボランティアはそこを勘違いしてはいけない」という言葉を残されました。確かに支援は必要だけれども、支援を一方通行にせず今後難民自身が学んだことを自らの力とし自分たちで自律することが大切だという意味です。その言葉がとても印象的でした。こういうことは、自分が活動をしていることにやりがいを感じて夢中になっていると、つい無心になりがちですが、活動をしていく上でNPOの立場や役割をシビアに受け止め、明確に認識しておく必要があるなと思いました。

 


私は国際協力とは、現場で現地の人と共に汗を流して建物を建てたり、環境を整えたりすることだといったイメージを持っていました。しかしこうした活動を通じて憧れだけでイメージしていたNPOの仕事の裏側にはこんなに地道で大変且つ、重要な仕事がたくさんあるのだということを実感しました。
活動を続けていくうちに、私は、学んだことや、現地の子どもたちの声を多くの人に伝えたいと思うようになりました。そこで、「えほんのとびら」という通信を作成することになりました。現地のスタッフさんに現地の様子をメールで調査し、文献を調べたりしてホームページやパンフレットに載っていない現地の様子、子どもたちの声や、スタッフさんの日課などを配信するというものです。
今までお話したこれらの活動は学んだことの一部に過ぎませんが、私はインターンを通じて、NPOのあり方や目的など多くのことを学ぶことが出来ました。

 

あっという間に半年の期間のインターンを終え、気がつけばNPOの活動に同じく興味を持った学生さんたち、国際協力でも人生でも大大大先輩のボランティアさんの方々、長年NPOに関わってきたスタッフさんなど多くの人と出会いがあり多くを学ばせていただきました。ボランティアも経験したことのない私にとって今回のインターンに参加したことは憧れのNPOへのはじめての挑戦でした。はじめるまでは憧れを抱いていたもののどうしていいのかわからないという不安があり、このはじめの一歩を出すまでとても長い時間がかかりました。今では、今回の経験や知識を生かしてもっと他のことにも挑戦してみたいと思うようになりました。この一歩は私の人生でとても大きな一歩だったように思います。

 



私は知識・経験共にまだまだ未熟ですが、これまでに経験した活動についてお話させていただきました。今後の第10期生の皆様の活動の比較の対象に、また活動の参考になればと思います。
最後に、多くのアドバイスをくださり、暖かく見守ってくださいましたSVAのスタッフの皆様並びに日産の皆様に御礼申し上げます。そして本日ここに居られます第10期生の皆様の今後のご活動を応援いたしております。本日はご清聴誠に有難うございました。







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