「第27回ニッサン童話と絵本のグランプリ」表彰式を開催

<絵本の部>大賞受賞者インタビュー  松宮 敬治 さん


【プロフィール】
WEBディレクターとして仕事をする中で、子ども向けコンテンツを制作したことがきっかけとなり、絵本の創作に興味を持つ。5年前からアートスクールで絵を習い始め、会社勤めをする傍ら、絵本を描き続けていた。昨年秋に退職し、本格的に創作活動に注力する。今回が初めての応募で、絵本の部大賞を受賞。

【受賞作】
『うみのそこの てんし』
(あらすじ)
暗く冷たい海の底で、切れた電線をつなぐ仕事するロボット「27」。人間が乗る船とは一本のロープが結ばれているだけ、スクリューはさびてぼろぼろ。昔は大事にされていたのにと嘆いていた。ある日、海の中でがけ崩れに巻き込まれ、ロープが切れた「27」は海の底へと沈んでいく。天国へ行けるかなと目をとじるが、突然、ふわりと体が浮き上がる。天使が現れたと目を開けると、そこには角の折れたイッカクがいた。

たとえ希望をなくしても、そこから次が始まる


Q:絵本を描き始めたきっかけは?
A:WEBディレクターとして仕事をする中で、子どもを対象にした制作物をたくさん手がけてきました。あるとき、今の子どもたちが読む新しい絵本を見る機会があって、昔話や教訓の話ばかりではなく、こんなに面白くて楽しめるんだと感動したんです。それが、絵本に興味を持ったきっかけですね。
いざ絵本を作ろうとしたとき、先に物語ができあがりました。さあ絵をどうしようかとなったんですが、以前から興味があったこともあり、自分で描こうと思ったんです。アートスクールに通って絵を習い始めたのが5年ほど前になります。
Q:ご自身や周りのご感想はいかがでしたでしょうか?
A:非常にラッキーだったと感じています。絵を習っている教室では、先生も生徒の皆さんも喜んでくれていますし、できあがった作品を見てもらっている姪っこもとても喜んでくれています。
今回、主人公の名前を私のラッキーナンバー「27」にしたんですが、童話と絵本のグランプリも偶然、第27回ということは賞をいただいてから知りました。私の周りでいろんなことが「27」という数字に関連して起こっていて、本当に不思議な縁を感じています。
Q:今回の作品の着想はどこから?
A:これまでの私の作品では、テーマを決めてから作ることが多かったのですが、今回は、「かわいそうなロボット」というイメージで描きたいというのが先にあって、そこからお話が膨らんでいきました。
ロボットというのは、どうしても雑に扱われるものだと思いますが、万物なんにでも魂が宿っているんだという思いを形にしていきました。
Q:作品の中で苦労した点は?
A:実は、物語には3つのバージョンがあったんです。今回、グランプリに応募することに決めてから、子どもたちがもっと読みやすいようにと、あれこれ調整するのに試行錯誤しました。
また、これまでは絵を色鉛筆で描くことが多くて、どちらかと言えば軽めの絵だったんですが、今回は、重厚なイメージで表現したいという考えがあったので、初めてアクリルで描くことにチャレンジしました。
Q:作品に込めた想い、伝えたかったことは?
A:主人公「27」の背中には人間が乗っている船につながれたロープがあるんですが、それが切れてしまう。そのロープは自分でつなげられないのに、海の底で出会ったイッカクの角はつなげてあげられる。そんな皮肉な現実を表現したいという思いがありました。
「27」は、リストラされたサラリーマンのような存在なのかもしれません。用なしになって希望を失うのですが、そこからが次のスタートになるんです。新しい希望に向かう、そんな姿を見てもらえたら嬉しく思います。


Q:今後の抱負についてお聞かせください。
A:これを機会に、絵本の仕事をしていきたいと思います。息の長い絵本作家になりたいですね。
自分が描きたいものを描いたこの作品のように、自分が良いと思うものを信じて描くことがやはり大切だと思います。今回の作品でも、まだ直したいところがたくさんあります。それに、「27」がロボットの島にたどりつく続編の構想もできています。機会があれば、それらを発表したいなと思っています。

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