<童話の部>優秀賞一席受賞者インタビュー いながき ふさこ さん
【プロフィール】
中学時代から詩を書くことが好きで、高校生の時に読んだ物語に感動したことをきっかけに執筆活動を始める。10年ほど前からは学生時代の友人と年一回、文集を発行するなど、主婦として子育て中心の生活の中で創作を続けている。今回が初めての応募で、童話の部で最優秀賞となる優秀賞一席を受賞。
【受賞作】
『あやとユキ』
(あらすじ)
東京で暮らす女の子あやは、戦争が始まったことで、一人で長野のばあちゃんの家に疎開する。蚕の世話を手伝うことになったあやは、たくさんいる蚕の中で成長の遅い一匹を「ユキ」と名付けた。蚕を手放すことが迫った夏のある日、大きく成長して白い糸をはくユキを見て、あやはうれしいような悲しいような気持ちになる。その夜、あやは夢を見た。「あやちゃん」と呼ぶ女の子の声。白い布で包まれた不思議な夢だった。
心と心、短く儚い時間の中で結ばれた絆
- Q:今回の作品の着想はどこから?
- A:小学校3年生の娘がいるのですが、昨年の春に学校の総合学習で、蚕を飼育したことがありました。休みの日に家に持ち帰った時などは、蚕の餌になる桑の葉を家族で探したりして世話をしました。
娘の話を聞いたり、学校便りを見たりすると、子どもたちが蚕をとても大切に思って育てていたことがわかって感動したんです。子どもたちと蚕の絆をお話にしたいと思ったのが、この作品の始まりです。
- Q:時代背景はどうやって設定されましたか?
- A:蚕のお話にしようと決めてから、養蚕がより盛んだった時代の方がいきいきと書くことができるかなと思いました。私の祖母も養蚕をしていたと聞いたこともあって、少し昔のお話にしようと決めました。
書き始めたのがちょうど夏だったので、新聞などで当時の様子や疎開についての話を読んだりしてイメージを膨らませていきました。物語を読んだ娘も、時代の設定がいいね、と喜んでくれています。 - Q:作品の中で苦労した点は?
- A:まだまだ物語を書く経験が浅いので、全体の構成を決めることをはじめ、苦労といえばすべてに苦労したと言えます。ひとつひとつの言葉選びにも、よく考えて、とても悩んで作品を作っていきました。
私自身、養蚕を実際に見たことはないですし、現代ではなく昔のお話ということにしたので、いきいきとした描写を表現するためにもいろいろと話を見たり聞いたりしてお話を作り上げていきました。 - Q:お気に入りの場面とそこに込めた想いは?
- A:お話の終わりの方で、ユキと名付けられた蚕が人間の姿になって、あやが見た夢の中で二人仲良く遊ぶシーンがあります。最も思い入れがあるシーンで、物語を書こうとしたとき、そのイメージが心の中に浮かびあがりました。そこからお話を作りたい、書きたいと強く思ったんです。
幼い子どもと蚕は、ともに短かくて儚い時間を生きています。そんな双方の心と心が触れ合う場面が表現できればいいなと思いました。
- Q:今後の抱負についてお聞かせください。
- A:たくさんの物語、昔のもの、新しいもの、良い作品を読んで学んで、試行錯誤しながら、自分の作品を書いていきたいと思っています。
他の方の作品を読ませていただくと、それぞれに持ち味があって、その人らしい世界が作り上げられていると感じます。好きな題材で、心を込めて、物語を作る人の世界を作ることができれば、作品として素晴らしいものが完成するんだなと感じています。
私が本格的に童話を書き始めたのは、昨年の春ぐらいからで、右も左もわからない状態です。ひとつひとつ作品を書いていき、応募もしていきたいと思います。