「第29回ニッサン童話と絵本のグランプリ」表彰式を開催

大賞受賞者インタビュー<絵本の部> 宮崎 明美 さん


【プロフィール】
美術大学卒業後は演劇の道に進み、その後、自己表現の世界から離れた仕事に就く。出産後に絵本の魅力に触れ、創作した作品がグランプリで評価されて、絵本作りの世界に進むことを志す。5回目の応募で、絵本の部大賞を受賞。

【受賞作】
『ゆみちゃんはねぞうがわるい子です』
(あらすじ)
寝相が悪くてベッドから落ちる、ゆみちゃん。大ぐまくんが「よいしょ」と戻します。ゆみちゃんはまた落ちて、大ぐまくんが「よいしょ」。また落ちて、「よいしょ」。ゆみちゃんが戻りましたが、疲れた大ぐまくんは戻りません。そこで小ぐまちゃんが大ぐまくんを「よいしょ」…。

「絵本作家になっていいよ」と言ってもらいたい思いで続けました。

Q:絵本を描き始めたきっかけは?
A:子どもが産まれて絵本でコミュニケーションをとるようになったとき、以前演劇をやっていたこともあり、当時書いていた脚本に登場するキャラクターを題材にした作品を作りたいと思ったのがきっかけでした。
その作品をグランプリに応募して、授賞式ではじめて「絵本の世界」を知りました。審査員の先生方の「子どもたちに対する熱意」にとても驚いて、絵本作りって本当にやりがいのある仕事だなと感じ、この職業をやってみたいと思ったんです。
それから、惚れ込んだ先生方に「よし、絵本作家になっていいよ」と言ってもらいたい思いで、応募を続けてきました。


Q:以前の入賞時、童話作品の挿絵の依頼を辞退されたと聞いていますが。
A:私の絵は、上手と言われることが多いんです。でも一生懸命に真面目に描いているだけで、特徴や個性がなく「自分の絵」と言えるものがないと思っています。
挿絵の依頼をいただいた作品が、とてもきれいな印象のお話で、自分に応える力がないと思いました。絵とお話で表現していきたいという思いがあったので、絵だけはまだ自信がない、未熟だという思いもありました。それに、挿絵のお仕事をすると、今後のグランプリに応募ができないということも伺っていたので、やはり審査員の方に認めていただいて絵本の世界に進みたいという決意もあり、ご依頼を辞退させていただきました。
Q:今回の作品の着想はどこから?
A:娘たちが寝る前にぬいぐるみをきれいに並べるのですが、やっぱり寝相が悪くて、朝になるとあちこちに散らばっているんです。夜中に蹴飛ばされているぬいぐるみたちが、子どもの寝相を良くしようとしたら、と考えたのがはじまりでした。
熊のぬいぐるみが出てきますが、お話を顔の表情で語りたくなかったのと、夜の場面でも見分けが付きやすいようにと、「大ぐまくん」と「小ぐまちゃん」という大きさの違うぬいぐるみを登場させました。
Q:作品の中で苦労した点は?
A:最初に文章ができて、それから、絵を描こうとしたときに、私の絵が合わないと感じました。
お話は、小さな子どもとお母さんが寝る前に何度でも読んで楽しめるような、単純な繰り返しの文章を作ろういう考えからできたのですが、それなら、もっと元気な絵のほうがいいと思ったんです。
輪郭をはっきりさせて、色調を明るくして変えてみようかとか、試行錯誤して納得したものができたと思ったら、やっぱりいつもの自分の絵になりました。そうして、一枚目の絵を描いたときに、もうこれは「自分の絵で、先にできた文章と戦わないといけない」と吹っ切れました。
実は、審査の対象にはなっていない絵が一枚あります。どうしてもこの絵がないと、子どもたちがこのお話を納得しないというページです。まだわかりませんが、出版されたら絵本に入っているかもしれません。


Q:今後の抱負についてお聞かせください。
A:まずはグランプリをいただいたこの作品を、子どもたちが楽しめるように手直しして出版したいですね。まだまだ、小さい子どもとお母さんが読むには、暗いお話だと思っています。
それから、ひとつひとつ、自分が納得して、時間をかけて、良いものができたら、絵本として出版していきたいと考えています。

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