「第26回ニッサン童話と絵本のグランプリ」入賞作品決定及び表彰式開催

大賞受賞者インタビュー<童話の部> 田中 きんぎょ さん


<プロフィール>
子どもの頃から、本を読んだり文章を書いたりすることが好きだった。長女を出産した頃から童話に興味を持ち、昨年春、長女が小学校に入って時間的に余裕ができたことを機に、本格的な執筆に挑戦。初めての応募で見事、大賞を受賞。

<受賞作>
「トンノの秘密のプレゼント」
あらすじ
子ブタのトンノは、お母さんの誕生日のために用意したプレゼントを、秘密の場所にかくしていた。そのプレゼントを取りに森へ行くために、お母さんに小さなウソをつく。プレゼントの隠し場所にいたウサギのおばさんにウソをつき、シカのマーキーにもウソをつき…。ところが、ウサギのおばさんとシカのマーキーについたウソが、偶然、ホントウになってしまう。トンノは、「お母さんについたウソがホントウになったら大変」と、慌ててしまい…。

表現することの難しさを学びながら、書き続けていきたい


Q:童話を書いてみようと思ったきっかけは?
A:本を読んだり文章を書いたりすることは、子どもの頃から好きでした。結婚して娘が生まれてからは、毎日の暮らしの中で発見したことなどを、日記のように書き留めるくらいでしたが、娘が4歳くらいの頃はじめて、娘を主人公にした「お話」を書いたんです。自分が主人公なので、娘はとても喜んでくれました。
Q:今回の作品の着想はどこから?
A:ふと「ウソが本当になったら、バレて誰かに怒られるより、もっと恐いかも」と思ったことがきっかけです。最初にお母さんにウソをついて、それはお母さんを喜ばせるためだったのだけど、その目的のためにどんどんウソを重ねてしまう。「ごめんなさい」と謝ってしまえばいいのに、タイミングがうまくつかめなくて・・・そんな時って、なんとなく心が痛いですよね。そんな思いから物語を紡いでいきました。
最初にノートに書き留めている時は、物語の流れは似ているけれど、ウソがどんどん本当になっていくことで主人公が恐くなってしまう、というストーリーだったんです。それをパソコンで書いて整理していくうちに、少しずつ内容が変っていきました。
Q:作品を書く上で、苦労した点は?
A:表現すること、伝えることの難しさ、でしょうか。自分の勉強不足を痛感しました。「主人公のこんな心情を描きたい」と思った時に、文章としてどう表現したら人に伝わるのか? 子どもたちに分かりやすい表現とは? 主人公の気持ちを思い、あれこれ悩みました。
また、応募に際しては、規程枚数に収める必要もあるため、どこを削ってどう伝えるか、いろいろ考えました。
Q:この作品の中で伝えたかったことは?
A:ウソというのは、子どもに限らず、何気なくついちゃいますよね。小さなウソは、「ちょっとごまかすため」と言い訳しながら、日常の中でつい口から出てしまうものかもしれません。でもやっぱり、ウソをつくとどこかで心が痛いものです。それは、誰かに怒られるとか、バレたらかっこわるいとか、そういった単純なことではなくて、もっと心の奥にある何かが痛い。この物語を読んだ人に、そんなところを感じていただければ、と思っています。
Q:この作品について、お子さんの感想はいかがでしたか?
A:娘に読み聞かせたのはグランプリに応募した後のことでしたが、読み終えた感想は「お母さんは、トンノにプレゼントをもらって喜んだのかな?」でした。実は、物語の最後に、お母さんの「ありがとう」という言葉を入れるべきか、ギリギリまで悩んでいたんです。娘の感想を聞いて「やっぱり入れた方が良かったのかな」と思いましたが、その一方で「そういった会話を親子でするのもいい」という思いも。娘と一緒に本を読むと、いつも読み終わった後に「これはどう思う?」と娘が問いかけてくるんです。そういった会話をできるのは幸せなことなので、物語の続きについて「どうなったんだろうね」と話ができるような、ちょっと余白のある終わりにしたかった。その意味では、娘の感想は狙い通りだったのかもしれません。


Q:今後の抱負をお聞かせください
A:今回の作品を書き上げることができたのは、「グランプリに応募する」という目標があったからです。これまでも文章を書いてきましたが、これほど集中して書いた作品はありません。書いている間は自分の勉強不足を痛感してばかりでしたが、創作の過程はとても楽しくて、もっともっと書きたくなりました。実際、書きたいことはいっぱいあります。メモ程度に書き溜めてきた作品がいくつかあるので、まずは、それらを見直すことからはじめて、作家として新しい物語を書いていきたいと思っています。

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