第37回 日産 童話と絵本のグランプリ大賞受賞者インタビュー

大賞受賞者インタビュー<絵本の部> だるまもり さん


アーティスト 兵庫県神戸市

【受賞のことば】
この度は素晴らしい賞をいただきありがとうございます。自作自演の人形劇をやっているので、子どもたちに伝えるのが楽しみです。この作品も劇になるかしら?音楽はどんなのがいいかしら?どんな楽器を創ろうかしら?皆さんを驚かせようと、今から悪戯心満載になっている自分がいます(笑)。今後もこの作品を大切に育てていきたいです。

Q:影響を受けた作品はありますか?
A:『一千一秒物語』(稲垣 足穂)です。まだ少年だったボクにとって、この作品に収められた2~3行の凝縮された詩編は時に暴力的であったり、メルヘンであったり、ボクサーのようであったり、超特急列車のようであったりしました。衝撃的なポエムとの遭遇でした。
Q:好きな作家はだれですか?
A:アール・ブリュット作家の林田 嶺一です。彼の作品は、ぶっ飛んでいて美術館に並んでいた作品を見てボクは腰を抜かしました。
Q:絵本を創るようになったきっかけを教えてください
A:こどもの頃から絵本のようなものを作っていました。休み時間に友だちが集まってきて、その場でおはなしを作れって言うんです!話をでっちあげて絵をボールペンで描きなぐって!みんなを笑わすんです。気がつけばその延長線上にいます。
Q:絵本を創作するうえで気をつけていることはありますか?
A:「余韻の残る最後の頁」を心がけてお話を作っています。日常の中でもオシマイ!と区切りのつくことはまずないと思うし、終わってしまうと寂しいのです。
Q:応募のきっかけを教えてください
A:以前、別の絵本コンペで審査員特別賞を受賞した時に、黒井 健先生に励まして頂いたことがきっかけで今回応募いたしました。
Q:今回の作品は、どういったところから着想されましたか?
A:一昨年北海道の山の麓で、クマの糞に出会いました。ちょうど栗が旬の時期でいい栗のにおいがしました。一方で餌がないため、人里に降りざるを得なくなり射殺される熊のニュース。クマの問題ではなく、山の環境、人の環境、経済の問題で、悲しい社会テーマです。そしてそれらの雑多な出来事を繋いでくれたのが、今は亡き母親が大好物で押し入れに隠し持っていたマロングラッセの思い出でした。
Q:今回の作品は、いつごろから制作を始められたのですか?
A:2020年8月から提出日ギリギリまで作っていました。今回のおはなしをタブローにして2作品作ってから本編の制作に入りました。いつもエンジンがかかるのに時間がかかります。
Q:今回の作品でお使いになった画材や技法を教えてください
A:木版画とガリ版印刷のミックスメディアです。レトロなガリ版が面白くて昭和の古い機械を手に入れてバッタンバッタン印刷しました。色の部分は木版画です。
Q:今回の作品を通して子どもたちに伝えたいことは何ですか?
A:人間も生き物であるからには自然環境や一緒に生きている生物のことも十分気にかけながらの生活をしてほしいと願っています。
Q:特にお気に入りの場面はどこですか?
A:それはもう最後の頁!熊が残していったマロングラッセの箱の中身です。もうこの場面を描きたいがためにひと夏ずっと絵を描いてきたような気がします。クマがマロングラッセをたまらず食べてしまった可愛らしさ!そしてせめてものできる限りのごめんなさいの印のクリの山盛り!僕はもう描いていて可愛らしすぎて、実はそんな人間の子たちを思い浮かべながら、ちょっと涙ぐんだんです。
Q:普段の生活のなかで創作のために心掛けていることはありますか?
A:あまり無理やり作ろうとはしないようにしています。必ず出来上がると自分を信用してあげて委ねています。無理して作るとあまりいいものができないことが多いです。
Q:今後、どういった作品を作っていきたいですか?
A:大仰な事件が起こるわけではなく、読後の余韻が残るような作品。そしてハッキリと打ち出す訳ではないけれど、社会背景を見据えた作品を作っていきたいです。

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