「第28回ニッサン童話と絵本のグランプリ」表彰式を開催

大賞受賞者インタビュー<童話の部> 瀧下 映子 さん


【プロフィール】
大学で児童文学を専攻し作品研究に没頭。卒業後は創作活動には縁がなかったが、自分の思いを人に伝えたいと思ったことから童話を書きはじめる。数年ぶりの応募で、見事大賞を受賞。

【受賞作】
『ぐうたら道のお師匠さん』
(あらすじ)
あたたかな春の昼下がり。主人公の真由は、買い物に出かけるお母さんたちを見送って、お気に入りのソファで昼寝をしようとしていた。すると、ソファには白いねこがすわっており「本当の『ぐうたら』のやり方を教えてさしあげたい」と言うではないか。真由は、ぐうたら道の師匠免許を持つというねこに言われるまま、ソファにクッションを並べ、テーブルの上を片付け、クッキーを焼く。

自分の中の物語を人に伝えたくて、書きはじめました

Q:童話を書いてみようと思ったきっかけは?
A:童話を読むのは昔から好きでした。でも実は、書くことには興味がなかったんです。あれこれ考えることは好きなので、面白いお話を思いついた時には「誰かに伝えたい」と思うものの、私は口ベタなので、思ったことがなかなか人に伝わりません。そこで「これは自分で書くしかない」と思ったんです。
実際に書いてみると、はじめは勢いで書けてしまったので「私って天才かも?」と思いました(笑)。ところが、1週間ほどして読み直すと、全然面白くない。さらに1カ月ほどして冷静になったところから、自分なりに手直しを加え、作品として仕上げるようになりました。
10年ほど前から、創作の勉強会にも参加しています。第三者の視線で批評してもらうと、私の文章がとても自己満足的なものだと気付かされました。自分の頭で考えているだけでは、他の人には何も伝わらない。勢いに任せるのではなく、意識的に伝える手段として「書く」ことを学んでいます。


Q:グランプリへの応募は今回が初めてですか?
A:ずいぶん前に、1度応募したことがあります。その時はまったくの選外でしたが、入賞作品を収録した小冊子を送っていただきました。自分もいつか、こんな立派な冊子に掲載されるような作品を書いてみたい、と思ったことを覚えています。
Q:今回の作品の着想はどこから?
A:以前「あくび指南」という落語を聞いたことがあり、それがヒントになっています。あくびにも礼儀作法がある、という噺が面白くて、ずっと心の中に残っていました。私は元来「ぐうたら」な人間なので、その言い訳として、「ぐうたら」の礼儀作法を身につければ人から非難されることもないのかな、と思いまして(笑)。つまり、自分自身のことを書いたようなものなので、とてもすらすら書けました。
もちろん、勢いで書いた文章は、そのままでは人に伝わる物語になっていません。その後推敲を重ねて、原稿用紙13枚程度の物語に仕上げました。自分なりによくできたと思ったので、コンテストに応募することも考えたのですが、それぞれに枚数規定があるので、しばらくは机の中で眠っていました。
Q:作品を仕上げる上で、苦労した点は?
A:この作品は、原稿用紙13枚程度にまとめたところで、自分なりに完成された文章だと思っていました。けれど、今回のグランプリに応募するためには、原稿用紙10枚以内にまとめ直すことが必要です。それがいちばん大変な作業でした。
お気に入りの作品なので、手を入れるのは忍びないのですが、その一方で、お気に入りだからこそ「皆に読んで欲しい」という思いもあります。文体を「です・ます調」から「である調」に変更したり、言い回しを変えたり。それでも足りなくて、ばっさり切り捨ててしまったシーンもあります。なんとか10枚以内に収めるまでに、3カ月ほどかかったでしょうか。再構成する前の作品は今でも大好きですが、苦労して規定枚数に収めた達成感もあるので、今回の作品にも愛着があります。


Q:受賞の感想と、今後の抱負をお聞かせください
A:まだ実感が湧かない、というのが本音です。ただ、賞をいただいたということは、自分の作品を認めていただけたということです。出版もされるので、いろんな人に読んでいただけます。不安ではありますが、とても嬉しいし、楽しみです。
これまでは、日常生活の中に不思議なモノが入り込んでくるお話が好きなので、そんな世界を書いてきました。今後はいろんなジャンルを書いてみたいと思っています。特別なことが何も起こらない、普通の子供の日常なども書いてみたいですね。

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