「第25回ニッサン童話と絵本のグランプリ」入賞作品決定及び表彰式開催

大賞受賞者インタビュー<絵本の部> 宮ア 優さん/宮ア 俊枝さん


<プロフィール>
優さん:図工教員として働くかたわら、創作活動を続ける。40代を過ぎた頃から個展発表はしていなかったが、数年前、海外の絵本作家の作品を目にしたことをきっかけに、絵本に興味を持つ。
俊枝さん:着物の染色作家として伝統工芸展などにも出展していたが、結婚・出産を機に専業主婦に。その後、優氏とともに絵本の共同制作に携わるが、実は、独身時代に出版社に自作の絵本を持ち込んだ経験がある。

<受賞作>
「おんでこのそら」
あらすじ
まつりのたいこだ ドドンガドン みなといっしょに ドデガデン
たいこでうみがたちあがり 中から龍神あらわれる
デンドンダダーン ズンドデン

夫婦喧嘩を繰り返し、二人三脚で最後まで作り上げた作品


Q:受賞の感想は?
A:優さん(以下、M)/今回は、最後まで諦めずに取り組んで良かったです(笑)。
俊枝さん(以下、T)/実は、佳作をいただいた昨年も一緒に取り組んでいたのですが、応募締切の1週間ほど前に大喧嘩をして、主人が降りてしまったんです。やむを得ず私一人の名前で応募したところ、佳作をいただいてしまいまして。先生方から「次はどんなことがあっても二人で仲良く作るんですよ」とアドバイスをいただいたので、今回はとにかく二人で最後まで作り、応募しました。
M/女房が一人で授賞式に行った時は、当然、ひがみましたよ(笑)。でも、そこで審査員の先生方からお話を伺うことが出来たので、考えるべき点を肝に命じて、制作に励みました。その結果の大賞受賞だと思うので、本当に嬉しいですね。
Q:絵本制作に取り組んだはじめたきっかけは?
A:M/ずっとタブローを描いてきて、40代までは個展も開いていました。絵本に出会ったのは、上野であった野間絵本コンクールの「夢色パレット」という展覧会です。アジアやアフリカ、中南米など世界中の作品を目にして、色彩の素晴らしさに目がくらみました。「絵本は人に何かを伝える媒体になり得る」ということを知り、その翌日から絵本の創作に取りかかりました。
T/私は、結婚する前に一度だけ、絵本を出版社に持ち込んだことがあるんです。その時は全く相手にしてもらえませんでしたが、そんな経験があったので、主人が絵本の創作をはじめた時は、すぐに一緒の気持ちになれました。
Q:今回の作品の着想はどこから?
A:M/今回は、宮沢賢治の「原体剣舞連(はらたいけんばいれん)」という詩が原点です。ただ、いつもは作っていくうちにテーマが見えてくるのですが、今回は5?6点作ってみたものの、自分の中でイメージがまとまらない。ましてや女房に伝えるのはもっと難しいことだったので、一旦は制作が途絶えそうになりました。
T/私も一生懸命作ったんですが、主人がどんなものを目指しているのか、なかなか伝わらなくて。手を動かしているのに見えて来ない、というのはキツかったですね。ようやく「わかった」と思ったのは、9月下旬に入ってからでしょうか。そこからは、締切に向かって頑張りました。
M/決まったストーリーはなく、作品ありきで制作していったので、絵の並び順は最後に決めました。最終的にテキストをつけて応募しましたが、最後までどうしようか迷っていたほどです。ようやく絵本の完成が見えたのは、「黒夜神」のシーンが仕上がった時。画面の上に黒い紙を置いたところ、偶然ハイライトが現れ、「ここが“おんでこのそら”への入り口になる」という作品全体の世界が、自分の中にできてきたんです。
T/例えば、白い画用紙の上に顔になる黒い紙を置くと、主人が目の位置に穴を開け、その上で「足はこんな感じ?」と言って紙を置く。私がその足に影を作ると「足の間には小さな鬼がいるね」と言うので、私が小鬼を作り、それを見た主人と「背景はこんな世界かな」という話になる。まさに、一人の人間が作るように、二人で一つの世界を作り上げていった感じです。
Q:どんな点に苦労しましたか?
A:M/二人のコミュニケーションですね。一つの作品を一緒に作っていくわけですから、それは仕方のないことです。自分が強引なのはわかっていますが、何が何でもやってもらわないと作品は仕上がらないので、心を鬼にして自分の思いを伝え、作り続けました。
T/私だって一生懸命やっているのに、仕事から帰ってきて「これ、何?」みたいなことを言われると、やはり頭に来ますよね。でも、私が行き詰まってどうしていいかわからない時に、主人が「こうやればいいんだよ」と言って、絵の天地を逆さまにするくらいの発想で、画面の上で大胆なことをやって見せてくれる。そんなことが何回かあると、キツいことを言われても「我慢しようかな」という気持ちになるし、私自身、自分一人では行けなかった視点に立つことができたので、どうにか作品を仕上げることができました。


Q:今後の抱負をお聞かせください
A:M/私はこの春で教員を定年退職します。その後は創作活動に専念するつもりでいましたが、今回の大賞受賞で「絵本」という指針が一つで来たことは、大変励みになりました。絵本作家として創作を続けていけたら、これに勝る喜びはありません。

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