2001年10月18日

日産リバイバルプラン進捗および2000年度決算報告記者会見 ゴーン社長スピーチ

I. はじめに

皆様、こんにちは。丁度2年前の今日、私は日産リバイバルプラン(NRP)を発表しました。当時の状況分析の結果、効果的かつ断固とした対策が緊急に必要なことは明白でした。NRP実施開始から18ヶ月経った現在、NRPは当初の予定よりも早く、アナリストの予想をも大幅に上回る利益を上げています。

NRPの目的は、日産を持続する利益ある成長の軌道に乗せることです。NRPは一冊の本と同様にいくつもの章から成り立っています。ひとつひとつの章に焦点となる分野が設定されているのです。例えば商品企画の章もあれば技術、ブランドアイデンティティーとブランド力、投資プロジェクト、資源の再配分、サプライヤー、生産システム、販売・マーケティングの効率等、色々です。業績にプラスとなる影響を与え始める時期は様々ですが、開始当初からそれぞれを同時にしかも集中して実施してまいりました。

日産は3年間で1兆円の原価低減、5000億円のコア事業以外の資産売却、そして自動車事業への投資を実現しなければなりませんでした。それらの活動の中にはすぐに効果を上げ、終了したものもありますが、中期的、即ち3ヵ年計画であるNRP終了間際またはNRP以降に成果が期待できる取り組みもあります。

いずれにしろNRPの使命は2年前に設定した3つのコミットメントに集約されている計測可能な成果を収めることです。すなわち00年度における黒字化、02年度迄の売上高営業利益率4.5%以上の達成、そして02年度迄の自動車事業実質有利子負債を半減し、7000億円以下への削減を実現することです。

NRP策定にあたっては、成長による業績への貢献は一切、前提にしませんでした。もちろん成長を計画しそれに向かって努力をしなかった訳ではありませんが、成長に過度に依存したくなかったからです。NRPによって期待される利益の大部分は市場環境の悪化および競争激化の可能性を埋め合わせるために確保されています。昨今の出来事を見聞きするにはこれは賢い決断でこそあれ、保守的な決断ではありません。しかし2000年度には全体需要の拡大が販売台数の増加に寄与しています。一方、今年度は自動車市場が世界的に落ち込んでいるため、販売台数の上昇は見込んでおりません。

本日、私は日産が3半期連続の増益かつ過去最高の中間決算になるであろうことを皆様にご報告致します。

黒字を計上しそれが拡大しているということは、NRPがフルスピードで実施されていることを証明しています。ですが、財務報告は過去の出来事を測定し将来の業績を見極める指標に過ぎません。以前も申し上げましたように、「日産は復活しました。」ですが将来、「日産は持てる実力を100%発揮しています」と言えるようになるのを心待ちにしています。グローバル市場において日産のプレゼンスを強化する舞台は整いました。成長と効率性が相俟って、日産の業績は更に向上するのです。

日産の成長の要となるのが商品計画です。商品計画にこそ今後の成長に向けての潜在能力が隠れているのです。私たちは忍耐強く、熱心に、セグメント毎、市場毎に意欲的な商品投入計画を練ってきました。今までの努力の大部分が来週のモーターショーで明らかになり、今後の日産車の姿が皆さんの目に触れることになるでしょう。

今日は、NRPの進捗状況と共に、暫定値ではありますが、01年度上期の主な財務値をご報告します。更に、下期の予測を発表し、プレゼンテーション終了後に質疑応答に移りたいと思います。

前もってお断りしておきますが、今日、お知らせする財務値は全て暫定値です。最終的な公式発表まではまだ時間がありますので、それまでに若干の修正が入る可能性がありますが、今日ご報告する内容から大きな乖離はない筈です。監査済みの確定決算数値は、1119日に予定している取締役会議以降に開示する予定です。

II.01年度上期NRP実績・予測

販売状況

まず販売台数についてご報告します。これらは全て小売の販売台数です。

01年度上期の全世界での当社の販売台数は、00年度上期の1,337,000台に対し、 前年同期比3.8%減1,286,000台でした。では日本をはじめとする市場毎に内訳を見てみましょう。

日本では、市場全体が4月から9月にかけて、僅かに0.9%上昇し、1,946,000台を記録しました。これは当社が5月に発表した2%という年間成長の予測を下回っています。国内市場は引き続き弱含んでおり、通期で前年比2.6%減4,011,000台になると見られています。

以上を背景に、日産の販売台数は前年比7,000台増に相当する2.1%増342,000台となり、市場占有率は0.2%増17.6%を実現しました。これは、日産の国内市場における後退に歯止めがかかったことを示しています。ではいかにしてそれを実現し、何が収益性に貢献したかについてお話ししましょう。

商品について申し上げますと、上期に新型車2台を投入しました。キャラバンとスカイラインです。また、マイナーチェンジも、プレサージュ/バサラと、リバティについて行いました。

更に今週ステージアを発表しました。来週にはウィングロードのマイナーチェンジを予定しております。どちらのワゴンも当社の業績に寄与することが期待されています。

通年での国内市場の占有率の見通しは18.2%で、販売台数は729,000台です。

販売台数と同様に、全体的な収益性も重要です。NRPにより、国内市場向けの収益性のある車種の数は飛躍的に伸びました。これこそが日本市場における日産の収益向上の鍵です。国内の商品ラインアップに占める収益の出ていない車種の割合は大幅に削減されました。99年度には43車種の内、売上台数の12%にあたる4車種のみが利益を上げていました。00年度では40車種の内11車種へと改善し、売上台数において27%の車種が利益を上げました。01年度には合計38車種の内の18車種、売上台数においては42%の車種が連結営業利益に貢献します。この傾向は02年度まで続き、その時点では3分の2以上の車種が利益に貢献する見込みです。

米国では4月から9月にかけての全体需要が5.7%減少し、台数は8,677,000台に留まりました。しかし、この期間中の高いインセンティブがなかったならば、この落ち込みは更に大きかったものと認識しております。ですが、9月に起こったテロ事件の経済的影響から、下期は更に急激な約11.5%の減少率が予想されます。従って、通年の全体需要は1,570万台を見込んでいます。

米国市場における01年度上期の日産の販売台数は、前年同期比14%減349,000台でした。市場占有率は前年の4.4%から4.0%に減少しています。では詳しく見ていきましょう。

昨年度は、フロンティアのマイナーチェンジ以外、新型車の投入が全くなかったため、新車効果による販売増が今年の9月までありませんでした。9月には新型アルティマ並びにマイナーチェンジしたエクステラ、フロンティアのロングベッド(長尺)、マキシマ3.5リッター車を発売開始しました。

第二に、以前にも申し上げましたように、日産の戦略は、一台当りの収益性の改善に注力すると共に力強いブランドアイデンティティーの再構築を図ることであり、何を犠牲にしても販売台数を確保することではありません。インセンティブについては極力引き締める方針で臨み、このチャートに見られるように業界のインセンティブが総体的に上昇傾向にある中、当社はインセンティブを最小限に抑えています。

また、法人顧客に対しても、この図に示されている通り、競合他社に比べてリース販売台数をおさえております。販売金融会社であるNMAC(米国日産販売金融会社)の小売リースは無理のないレベルにあります。リースは注意深く行っており、01年度上期のNMACの新規契約件数のうち20%を占めています。昨年度は25%でした。今後、NMACの事業は北米日産の収益に大きく寄与すると予想しており、体制も万全です。

販売台数が伸び悩んだのは主に小型トラックのセグメントです。このセグメントでは常に高いインセンティブを伴う熾烈な競争にさらされてきました。ロング・ベッド(長尺)のフロンティアとマイナーチェンジしたエクステラを9月に投入しましたが、これで日産の状況は安定に向かうでしょう。

一方、乗用車については、セントラと先代アルティマが牽引役となり、小型セダンのセグメントにおける市場占有率を拡大しました。セントラの高性能バージョンであるSE-Rの発売は10月です。ですが最も重要なのは9月に投入された新型アルティマです。新型アルティマは、マスコミ、販売会社、そしてお客様に高く評価されており、年間190,000台の販売を見込んでいます。計画では、新型アルティマの一台当りの利益は旧型に比べ3倍になります。

01年度上期の乗用車部門のイベントを締めくくるのは最先端の3.5リッターVQエンジンを搭載した新型マキシマです。新型マキシマもアルティマ同様、9月に発売を開始しました。

通年で、米国市場の市場占有率は前年と変わらず4.3%を見込んでおり、台数で68万台を見込んでおります。

次に欧州ですが、1月から6月にかけて全体需要は前年比1.7%減9,090,000台でした。欧州日産の会計年度は暦年ベースの1月から12月です。ここでも市場は落ち込んでおり、通期の全体需要は1,640万台を予測しています。

当社の販売台数は前年比5.5%減273,000台、市場占有率は前年の2.9%から微減の2.8%でした。

その他の主要な市場と同様に、欧州でも新型車の投入は比較的少なく、積極攻勢をかける2002年に向けての準備期間となりました。昨年発売したアルメーラとアルメーラティーノに続き、エクストレイルを投入し9月のフランクフルトモーターショーで発売を開始しました。日本市場でのエクストレイルの販売は好調で、同セグメントでの首位の座を続けています。この発売を機に、欧州SUV市場における当社のイメージが一層強化されるでしょう。

また、当社は為替の影響の軽減を図るため、部品等の調達におけるソーシングに関し多くの変更をしました。その結果の一例が、現行車に比べて為替の影響を減少した次期型マイクラです。今回の見直しによる効果はまだ表れていませんが、これはNRPに付随する数多くの目に見えない取り組みのひとつと言えるでしょう。

欧州市場における市場占有率は通期で2.8%、販売台数は49万台を見込んでいます。

次に、海外一般市場における当社の01年度上期販売台数は前年同期比4.6%増293,000台でした。

牽引役となったのは好調な販売を維持するメキシコで、当社の販売台数は1月から6月にかけて14.1%増の89,000台、市場占有率は前年同期の20.1%から20.7%に上昇しました。

ブルーバードシルフィやエクストレイル等の販売の好調な車種は、世界各地で発売される予定で、当社のマーケットプレゼンスは更に強化されるでしょう。

ご覧のように、海外一般市場の重要性は増しており、販売とその結果としての利益バランスの改善に大きく寄与しています。

当社の世界市場における01年度の年間販売台数は前年比2.3%減2,571,000台を見込んでいます。

原価低減

次に原価低減の進捗状況についてご報告いたします。これまで達成した目標、進捗状況と共に今後の課題についてもご説明いたします。

収益性に最も影響する要素は引き続き購買です。2000年度の当社の原価低減活動は予想以上のスピードで進捗しましたが、今年度もその勢いを維持しています。実績ではコミットメントとターゲットを共に過達しており、累積の実績では2001年度末までに18%以上のコスト削減を達成する見込みです。

2年前の発表内容通り、 部品、資材、そしてサービスのサプライヤーの数は予定通り減少しています。現在、部品サプライヤーの数は35%減の750社となりました。サービスサプライヤーの数は当初に比べて50%減っています。

製造部門でのNRP活動は予定通り、進展しています。こちらは以前もお見せした図ですが、国内では当初7つの生産工場で合計24のプラットホームにより車両を生産していました。

現在はそれが4工場になり、15のプラットホームにて車両生産を行っています。これにより工場の稼働率は飛躍的に向上しました。NRP以前の平均稼働率は51.1%で、栃木工場の稼働率は28%でした。それに対し、現在では、各工場の稼働率は74%以上で、平均稼働率は75.7%です。

2004年までに更に3つのプラットホームが削減され、生産体制の簡素化を図ります。以前も申し上げましたように、再編による生産量への影響は全くありません。優れた生産体制は当社のコア資産のひとつであり、今後も更に発展させていく予定です。

研究開発部門の効率性は引き続き向上しています。01年度上期の各車両プロジェクトの平均開発コストは、NRP当初に対し25%減となりました。

営業・マーケティング分野でも活動は順調に進んでいます。

例えば国内では3年間で300拠点の閉鎖を予定していたのに対し、既に335拠点を閉鎖しました。また、販売子会社18社の地場化を計画しておりますが、既にその内、12社を実施済みです。

グループ全体の総人員数は今年度上期末で128,100人となっており、NRP終了時点での目標である21,000人削減の127,000人に極めて近いレベルになっています。

金融市場の激しい変動に拘わらず、当社は投入資源をコアビジネスである自動車事業に集中させる方針を徹底してきました。01年度上期には、810億円にのぼる資産譲渡額を計上しましたが、その内訳は、590億円が有価証券、220億円は不動産の売却によるものです。全額、負債の削減に充当しています。NRPスタート時点からは譲渡額で4,220億円の資産売却を実施していますが、これは2年前に計画した数字の85%となります。

将来に向けての準備

NRPの第一段階は、将来の成長に向けた財務体質の強化のために、必要かつ唯一の方法でした。現時点では、計画されていたリストラクチャリングの大部分が実施され、投資に回す資金的余裕もできました。また、商品計画についても、本格的に展開しようとしているところです。

東京モーターショーを数日後に控えていますので、車についてお話ししましょう。

ご承知のように、NRPでは22の新型車の投入を計画しています。内、4車種は昨年発売し、今年度は5車種を予定しています。その内4車種は既に投入しましたが、更に重要な新型車が2月末に発売されます。日本市場に登場する新型マーチです。

新型マーチはルノーと共通するBプラットホームを使用した量産車の第一弾です。また、新型マーチは、重要なるエントリーレベルセグメントにおいて、当社の立場を再確立していくための最初の商品です。国内では、エントリーカーのセグメントが登録台数の22%を占めていますが、当社の商品ラインアップはモデルライフ後期にあったため、収益性を確保することができませんでした。

新型マーチは、現在収益の出ていない現行型にかわる収益力のある車です。販売台数的にも意欲を持って取り組む所存です。

来年、日本では新型6車種を投入する予定です。上期に3車種発売しますが、この数字にはスズキとの提携による軽自動車も含まれています。そして下期には新型キューブを含む3車種を投入します。更に、現行車7車種のマイナーチェンジも行います。上期に4車種、下期には3車種です。

米国でも商品の投入に注力します。8月に発売予定の待ちに待ったZカーを含む新型車3車種が来年度に登場します。下期にはクロスオーバーSUVに続き2003年の初めには新型マキシマを発表します。

インフィニティについては、大きな変化が待ち受けています。来年3月に発表する高級車のエントリーレベルであるG35を皮切りに新しい中型高級セダン、新型クーペ、そして新型SUVの発売を予定しています。これによりインフィニティブランドは力を増し、他社と競合することができるでしょう。

欧州では、フランクフルトモーターショーで発表したプリメーラのセダン、ハッチバック、そしてワゴンを2002年の3月に投入します。3月にはまた、日産のカーバッジを付けたルノー製の小型商用車の第一弾を発売します。それに次いで更にサイズの小さい小型商用車を発表しますが、これは当社のバルセロナ工場生産する日産車です。また、2003年の初めには新型マイクラが登場します。マイクラは欧州の商品群の中でも極めて重要な車です。

一般海外市場でも積極的に事業を展開します。一般海外市場全体で合計7つの新型車を投入する予定です。上期に3車種、下期には4車種です。また、上期には2車種のモデルチェンジも行います。その内の一つがルノーのクリオの派生商品で、当社が生産するメキシコ市場向けの日産車です。

以上、日本、米国、欧州、一般海外市場を合計すると来年度、当社が世界中で投入する車種は22にのぼります。

01年度の上期は、重要な投資決定を注意深く行ってきました。

米国ではミシシッピー州のキャントン新工場の立上げ作業が計画通り順調に進んでいます。キャントン工場が操業すれば、商品ラインアップ拡大に伴う増産をカバーできます。10月の初旬にも発表しましたように、マキシマの生産を、テネシー州のスマーナ工場に移管し、2003年初頭からの生産開始を決定しました。これは販売地域で現地生産を行うことで、為替リスク、在庫、そして流通コストを最小限に抑える措置の一環です。

タイについては、先日発表しましたように、現地の提携先との交渉が合意に至らず、決裂しました。これは当社がマネジメントに関して決して妥協しないということを裏付けるものであり、期待する投資収益率を確保すると同時に当社の理にかなった合意になるという確証が得られない限り、合意を締結しないという当社の方針を示すものです。

インドネシアについては6月に予定通り合意を締結しパートナーであるインドモービルグループへの投資比率を75%に増やしました。同国での製造、販売、輸入事業を統合していく予定です。

最後に、中国では東風グループと本格的な交渉に入りました。ご承知のとおり、
当社と東風グループはすでにブルーバードの現地生産で関係があります。東風との関係を大幅に発展させ、多数あるビジネスチャンスの収益性について、現在評価を進めているところです。

III.01年度上期業績見通し

業績

では01年度上期の主要財務値の概要に移りましょう。冒頭でも申し上げましたように、これらの数字は暫定値であり、現在はまだ、決算確定前の段階であることから、今日は詳細な差異分析については触れません。

連結売上高は3兆円であり、2000年度上期と同じレベルにあります。為替影響が売上高増に寄与した一方で台数減が減収要因となっています。また、かつて連結対象だった会社が連結対象外になった事も減収要因となっていることを申しそえておきます。

連結営業利益は1,870億円で、前年比530億円改善し、前年同期比で39%増加しました。これは当社の過去最高の半期営業利益となります。売上高営業利益率は6.2%で、通期で見込んでいる5.5%を遥かに上回ると同時に、来年度のターゲットである6%をも過達しています。2001年度上期にこの営業利益率を達成できるグローバルな自動車メーカーは殆ど無いといってよろしいでしょう。

地域別に見てみますと収益の源泉が大幅にシフトしている事は明らかです。既に申し上げました通り、日本は最も大きなポテンシャルがあり、営業利益への貢献度は最大です。上期の日本での収益は大幅に改善しました。

上期の日本での利益は前年同期比で2倍以上となり、昨年の590億円から1,290億円へとなりました。国内市場における収益車種の数についての私の説明を思い起こしていただければこれはまだ終わりではない事がおわかりでしょう。

米国とカナダを含む北米事業での収益は42%減少しました。これは既にご説明した販売減によるものです。昨年同期の810億円の利益から今年度上期は470億円の利益に減少する見込みです。

欧州では改善が見られています。まだ赤字ではありますがその幅はごくわずかです。昨年度上期の150億円の損失から今年度上期は50億円の損失へと赤字幅は削減されています。

最後に、先の決算発表時にも申し上げましたが一般海外市場は全体収益に多大な貢献をしています。この上期の収益は前年同期の160億円から310億円へとほぼ倍増致しました。

連結消去はこの上期で150億円のマイナス、前年同期は70億円のマイナスでした。

分析するとこれらの数字には大変勇気付けられます。まず、日本市場での収益性が大幅に改善していること。第2に米国市場への依存度が減少していること。もちろん米国市場での収益が増加することは望ましいことですが、ご承知の通り上期にはそれは見込んでおりませんでした。しかし現在ある商品計画に基づけば下期には可能性があります。

欧州では多大な努力をしています。主要な新商品投入計画前にほぼブレークイーブンになったという事実は今年度にも黒字化を達成するための自信となります。最後に一般海外市場はえてして変動が激しいものですが、多大な利益貢献を果たしています。

今日、皆さんにお伝えする最後の損益計算書上の数字は税引後当期利益です。税金等の数値確定前ですが、最終的には2300億円になると見ています。 その結果、売上高当期利益率は7.5%以上となるでしょう。

自動車事業実質有利子負債は引き続き激減しています。既に01年度末のコミットメントを6ヶ月前倒しして達成し、負債額は8,040億円になる予定です。20013月末時点からの1,490億円もの削減は、自動車事業から生み出されるキャッシュの改善と810億円の譲渡額を生み出した資産売却によるものです。

これらの数字は心強い兆候を示すものであり、今後の優先事項を明示しています。つまり、日産の業績は引き続き改善しており、その勢いは増すばかりだということ。また、極めて厳しい市場の条件を克服し得る財務体質となっていることを物語っています。現在、自動車業界が直面している課題は、当社がNRPの目標を決して見失わないという決意を新たにするものです。その目標とはすなわち、持続する利益ある成長の実現です。

見通し

今、世界情勢は緊迫しています。この数ヶ月の出来事は、何が事実に基づくものなのか、何が感情に基づくものなのかを判断することが困難になってきています。過剰反応が至るところで見られます。乱高下する株式や債権市場がその一例です。

いずれにしろ、私たちはリスクと好機に直面しているのです。

リスクの一つは、世界の自動車市場が一斉に鈍化している事実です。先ほど申し上げましたように、当社は市場毎に慎重な検討を重ねた上で見通しを決定しました。ですが、今後予想外の出来事が、更に販売台数を圧迫する可能性もあります。

そのような場合、熾烈な競争が、インセンティブの大幅な増加とその長期化という形で表れ、これは収益性向上の阻害要因となるかもしれません。

NRPは引き続き日産の最大の好機です。かなり前倒しで結果を出しているとはいえ、NRPが完了したとは到底言えません。困難なリストラクチャリング、工場閉鎖、資産の売却、そして人員削減の大部分は既に終了、または今年度内には終了する予定です。

今後あるのは数多くの商品計画と成長に向けてのNRP活動です。

為替レートも、前年度及び当初の見通しと比べると当社に有利に推移しています。

これら全てを勘案し、通年では当初の業績見通しを維持することにします。即ち連結営業利益3,500億円、税引後当期利益3,300億円です。もちろん9月以前のように市場の予測が容易で、変動が少なければ上方修正を行ったことでしょう。現在の不透明感により、より慎重な見とおしを行わざるをえません。にもかかわらず、営業利益は20%以上増益を見込んでいるのです。

本日お伝えする唯一の見通し修正は自動車事業実質有利子負債です。2001年度末の自動車事業実質有利子負債は7,500億円を下回るでしょう。

IV.結び

最後に日産リバイバルプロセス、すなわち20002002年度のNRPそして20032005年度のプラン180の真髄についてお話させてください。プラン180は成長(現在に比べて100万台増)、収益性(グローバルな自動車会社の中でのトップレベルの営業利益率)、そして財務の健全性(負債ゼロ)を表すものです。

リバイバルプロセスの中核には2つの基盤となるミッションがあります。まず最初が日産社内そしてその回りのマインドセットを変え、我々が行っている変化、変革を表面上だけでなく心から受け入れ、競争力と業績向上に対する効果を永続的なものにする事です。

2番目は会社、ブランド、商品そしてサービスに対する高いレベルの信頼を確立することです。顧客の信頼、株主の信頼、従業員の信頼、そしてパートナーの信頼です。

信頼は高いレベルの透明性と同時に計測可能な実績を改善する事から得られるものです。ですから信頼は要求するものではなく、日々獲得されるべきものなのです。

これが現在そして将来の私たちを駆り立てるものです。日産の復活への努力が究極の成功と言えるかどうかの結論が下されるのはもちろんまだ先のことになります。にもかかわらず、客観的な目で皆さんが私たちを見ていただいている限り、ふさわしい宣告を受け取ることに対して私たちは一抹の不安も抱いてはおりません。

ご静聴ありがとうございました。


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