日産技報 No.89 (2023)
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表1 キラル材料のHTP表2 材料組成(wt.%)セルギャップ10μmの基板をもつガラスセル(EHC社製)を、垂直配向PI層で処理したITOガラス基板を2枚重ねて、作製した。各LC混合液は、LCクリーニングポイントに等しい100℃のホットプレート上で毛細管力を利用してエンプティガラスセルに注入された。このセルに対して、50V-50Hz、室温の条件下でLEDの青色光(λmax = 450nm)を照射して硬化させ、LCの配向を揃えた。青色光の出力は、7mW/cm²であった。10分間硬化させた後、電圧をかけずに透明な状態で光駆動型透明液晶フィルムを作製した。作製したフィルムサンプルの試料の光学特性を調べるため、積分球式分光光度計(U-4000、株式会社日立製作所製)を用いて、透明状態での全透過率スペクトルとスクリーン状態での全反射率スペクトルを測定した。各ヘイズは、ヘイズメーター(HM-65 W、村上色彩技術研究所製)を使用して測定した。図4(a)は、光駆動型透明液晶フィルム試料の透明状態での全透過率を示したものである。透過率スペクトルは、広範な可視領域で約80%と高い数値を示した。500nm以下の領域では、アゾベンゼン自体の吸収により透過率が低下した。図4(b)は、室温で20mW/cm²のUVを60秒間にわたり、十分に照射した後のスクリーン状態の全反射率を表したものである。このUVエネルギーを用いて、光学特性の変動がなくなるまで、光駆動型透明液晶フィルム試料を十分にスクリーニングした。アゾAを添加したNo.1サンプルの反射率は、アゾBを添加したNo.2サンプルの反射率よりも高くなった。ヘイズ値で見た光学特性を表3にまとめた。表1、3より、アゾベンゼンのΔHTPは、スクリーン状態のフィルムの反射率およびヘイズに影響を与えることが明らかとなった。ΔHTPが大きくなると、LCの配向がより大きく乱れ、スクリーン状態での反射率やヘ受賞:2021年 International Display Workshops Best Paper Award - Optically Switchable Transparent Liquid Crystal Displayイズ値が大きくなる。図5は、輝度の視野角依存性を示したものである。UV照射後のNo.1サンプルのスクリーン状態において、照度3350lxの条件でVisプロジェクター(MW612、BenQ株式会社製)を用いて白画像を投影し、視野角を変えて輝度計(LS-110、ミノルタ株式会社製)で背景光を除く輝度を測定した。光散乱効果により、視野角60°で映像が見えることがわかった。図6の写真は、それぞれの状態におけるNo.1サンプルを示したものである。サンプルは10×10cmの大きさとした。透明な状態では、ガラスと同じように透き通っていた。UVを照射すると、照射した部分にスクリーンが浮かび上がった。UV LEDを消灯した後、フロントプロジェクターから投影される映像を確認することができた。投影を停止し、青色光を照射すると、サンプルは透明な状態に戻った。93図4  光駆動型透明液晶フィルム試料の光学特性。(a) UV照射前の透明状態での全透過率スペクトル、および(b) UV照射後のスクリーン状態での全反射率スペクトル4. 結果および考察

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