日産技報 No.89 (2023)
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図1 光駆動型透明液晶ディスプレイのシステムレイアウト図3 材料構造領域は透明状態からスクリーン状態に変換される。Visプロジェクターは、UV照射を中断し、前方のスクリーン領域に映像を投影するものである。その後、青色光を照射すると、透明液晶前橋 良太  Ryota Maehashiフィルムは当初の透明な状態に戻る。光駆動型透明液晶フィルムは、LC、ポリマーネットワーク、キラルアゾベンゼン、および非フォトクロミックキラル化合物の複合体である。ポリマーネットワークは反応性メソゲン(RM)モノマーで構成されている。LCとは位相が分離されており、LCに対して強いアライメント効果を発揮する。UVを照射しないトランス状態のキラルアゾベンゼンのHTPが、相反するキラリティを持つ非フォトクロミックキラル化合物のHTPと等しい場合、LCは補色透明ネマチック相になる。この液晶混合物は、ITOと垂直配向PI層で覆われた2枚のガラス基板で挟まれたものである。UVを照射する前は、図2(a)のようにLCとポリマーネットワークが垂直に並んでおり、透明な状態である。UVを照射すると、キラルアゾベンゼンが光異性化によってトランス状態からシス状態に変化するため、キラリティのバランスが崩れ、LCにねじれ力が発生する。その結果、図2(b)に示すように、LCの配向が乱れ、光散乱スクリーンと化す。受賞:2021年 International Display Workshops Best Paper Award - Optically Switchable Transparent Liquid Crystal Display図3に本実験で使用した材料を示す。キラルアゾベンゼン(アゾAおよびアゾB)と非フォトクロミックキラル化合物(キラル)を合成し、そのHTPを表1に示した。ビナフチル基[9]の軸方向のキラリティを持つアゾAのΔHTPは、ポイントキラリティを有するアゾBのΔHTPよりも強力である。アゾAとアゾBを用いて2種類のLC混合液を調製し、それらのΔHTPへの影響を検討した。表2に各材料の組成を示す。本研究では、ポジティブネマチックLCであるSb-826010(Shanben社製)を使用し、その複屈折はΔn=0.26である。RM、4,4'-ビス(6-(アクリロイルオキシ)-ヘキシルオキシ)ビフェニル(東京化成工業株式会社製)、および光重合開始剤、Iragcure819(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)を使用した。表1に示すHTPの測定値に従って、キラルアゾベンゼンとキラルを混合し、補正された透明な試料を調製した。9092日産技報 No.89 (2023)図2 光駆動型透明液晶フィルムの模式図(a)透明状態および(b)スクリーン状態佐藤 文紀  Fuminori Sato分  野 : ディスプレイ、光工学2.2 光駆動型透明液晶フィルムの構造学  位 : 修士(工学)分  野 : 半導体デバイス、ディスプレイ、電気化学学  位 : 学士(工学)所属学会 : 自動車技術会 電気学会3. 実験

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