Fig.17 Line Trace Deviation Experimental ResultFig.18 Line Trace Deviation Average Experimental Resultれた。そして、K=0.06のピッチ角を付加した場合、ピッチ挙動を付加しない場合に対して、ライントレース乖離量のバラツキを約33%低減できることが確認できた。ここで、Kの増加に伴うライントレース乖離量の変化を考察する。K=0とK=0.02では乖離量の値に大きな差は見られない。これは、ピッチ挙動をまったく与えないK=0に対して、K=0.02とした場合でもドライバがその動きを感知できるのは操舵角で約3degと、2deg付近でヨーの動きを感知した後であり、1~2degのブラインド操舵区間の視覚情報を補うことが出来なかったためと考えられる。同様に考えると、K=0.04の場合は操舵角約1.5deg付近でピッチの動きをドライバに感知させられることが出来るため、K=0.06の場合のように、ブラインド区間を完全にカバーすることはできないまでも、それと比べて約半分の区間、ドライバに視覚情報を与えることが出来るため、相応のバラツキ低減効果があったものと考える。一方、K=0.08とした場合は、ドライバが操舵入力を認識したり、車両が実際にヨー運動を開始する、操舵角が約1degに達する前に、ピッチの動きをドライバに感知させてしまったと考えられ、むしろドライバの正確な操作を阻害する余計な視覚情報を与えてしまったことで、K=0.06の場合に対してバラツキが増加したものと考えられる。最後に、ピッチ挙動を追加することによる、ライントレース乖離量の平均値への影響について考察しておく。本研究においてピッチ挙動を追加する目的は、これまでドライバが操舵反力の情報だけを頼りに感じ取っていた車両の動き出しを、ピッチという視覚情報を加えることで、よりばらつき少なくそれを感じ取れるようにすることであった。よって、その目的を達成するために必要な量のピッチ挙動であれば、ライントレース乖離量の平均値には影響がないと考える。図18は、今回計測された25名のドライバのライントレース乖離量の平均値を示したものであるが、ピッチ挙動を加えることによってその値に大きな変化がないことが確認されている。受賞:第72回 自動車技術会賞 論文賞(2022年) - 微小操舵角域のライントレースのバラツキを低減するピッチ特性に関する研究SAE International Journal of Advances and Current Practices in Mobility - VCターボエンジンに対応した日産技報 No.88 (2022)微小操舵角域の走行軌跡の試行回ごとのバラツキの一要因がドライバのブラインド操舵区間の存在にあることに着目し、その区間にピッチ挙動を付加してドライバに視覚情報を与えることによってそのバラツキを低減できることを確認した。ドライバのピッチ挙動に対する感度調査から付加するピッチ挙動の適正量の仮説を立て、実験によりその検証を行うとともに、定量的な走行軌跡のバラツキ低減効果を抽出した。既報の研究で解明した微小操舵角域でドライバが平均して正確に走行できる車両特性に加えて、いつも正確に走行するために必要な車両特性の一つを解明した。(1) 田尾光規、他:微小操舵角域のライントレース性に対する操舵力とヨー特性の関係解明、自動車技術会論文集 Vol.51 No.3 pp.428-433 (2020)(2) 福井 勝彦、ほか:視覚特性に基づくロール感向上技術、自動車技術会論文集 Vol.40 No.5 pp.1185-1190 (2009)(3) 酒井 英樹、ほか:過渡的な旋回感覚を強調する減衰力制御、自動車技術会論文集 Vol.43 No.3 pp.709-716 (2012)(4) 山門 誠:EVの精密な制駆動力制御による3次元理想車体挙動の探求、精密工学会誌 Vol.84 No.9 pp.765-768 (2018) (5) 今村昌幸、ほか:高性能ドライビングシミュレータの開発、日産技報 ダイナミック・パフォーマンス技術No.83 pp.60-65 (2018)公益社団法人自動車技術会自動車技術会論文集Vol.52, No.2 文献番号:202141378815参 考 文 献出 典6. まとめ
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