Fig.11 Pitch Characteristics for Driver’s InformationFig.12 Pitch Motion by each “K” at Steering Angle 1degTable 1 Vehicle Model Parameter実験で得られたドライバのピッチ挙動に対する感度ライン(図10)と、式(1)(2)で定義した操舵に対するピッチ挙動の式から、ドライバが操舵角1degでちょうどピッチ挙動を感知できる比例定数Kの値を求める。図12は、ドライバのピッチ挙動に対する感度ラインに対して、比例定数Kを0~0.08まで0.02刻みで変更した時の、操舵角1degで発生するピッチレイトとピッチ角の値をプロットしたグラフである。Kの値が0.04以下の場合、操舵角1degで発生するピッチ挙動は、ドライバの感度ラインに到達しておらず、この設定ではドライバは操舵角1degでそのピッチの動きを感知できないことが分かる。一方、K=0.08とした場合、操舵角1degで既にドライバの感度ラインを大きく越えており、ドライバは操舵角が1degに到達する前に、その動きを感知してしまうものと思われる。そしてK=0.06とした時に、そのピッチ挙動が概ねドライバの 感度ライン上にあることから、これが、ドライバが操舵角受賞:第72回 自動車技術会賞 論文賞(2022年) - 微小操舵角域のライントレースのバラツキを低減するピッチ特性に関する研究SAE International Journal of Advances and Current Practices in Mobility - VCターボエンジンに対応した日産技報 No.88 (2022)1degでちょうどピッチ挙動を感知できるKの値になると考えられる。以上より、式(3)により、操舵角に対してピッチ角を付加することによって、ドライバが操舵入力をしたと認識するとともに、車両がヨー運動を開始する操舵角1deg付近で、車両が応答していること、更にそのヨーの動きが増加していることを、ピッチ挙動という視覚情報を使ってドライバに感知させられるものと考える。そして、これまでドライバがブラインド的に操舵をしていたと考えられる微小操舵角域において、視覚からのインフォメーションのフィードバックを付加することによって、操舵角及び走行軌跡のバラツキが低減すると考えられる。これらを仮説として、その検証を実施した。仮説の検証は、既報の研究と同じく、あるCセグメント車両のモデルを用い、図1で示した評価コースを再現したドライビングシミュレータを用いて実施した。以降その概要と実験方法及び結果の詳細について述べる。また、実験に用いたシミュレータの外観図を図13に示す。このシミュレータは、可動域が22×6mのスライドレールにヘキサポッドを介してマウントされたキャビン、それらを高精度に駆動する64個のリニアモータなどを備え、多くのシーンで高い実車再現性を実現しているものである5)。8613 5.1 実験に用いた車両モデルとシミュレータの概要実験に用いた車両モデルの主要なパラメータを表1に示す。5. 仮説の検証
元のページ ../index.html#91