]m[noitaiveD ecarT eniLFig.7 Average of Line Trace Deviation by 25 DriversFig.8 Driver’s Steering Process in Small Steering Angleレース乖離量の変動と比較しても、その値は十分に小さいとは言えないことが分かる。本研究では、既報の研究で取り組んだ、ドライバが目標とした走行ラインを平均して正確に走行できる車両特性の解明に加えて、試行回ごとのバラツキが少ない、毎回正確に走行するための車両特性の解明に取り組む。図8に示したように、ドライバは直進走行から目標走行ラインに向けた操舵において、まず操舵反力の情報により概ね1deg前後の操舵角で車両に操舵入力を開始したことを認識する。よってこれと同じタイミングで車両がヨー運動を開始するようにヨーレイトに不感帯を設定しておくことで、ドライバの感覚に合う車両の動きが実現でき、最終的には平均的にライントレース乖離量も低減したと考えられる。しかしながら、ドライバが実際にこのヨーレイトの動きを視覚情報として感知できるのは、その値が0.21deg/sを超える、操舵角が約2degに達した時である。つまり、操舵角1~2degの区間では、ドライバは車両の動きの視覚からのフィードバック情報を得ること無く、操舵反力からの情報だけを頼りに、いわゆる“ブラインド的に”操舵を増している状態であると考えられる。3.1 微小域の操舵メカニズムと走行軌跡バラツキの考察ドライバの試行回ごとの走行軌跡のバラツキには、ドライバの視線の配り方やハンドルの握り方、運転に対する集中度合いのバラツキ等、様々な要因が考えられるが、本研究では既報の研究の中で仮説として定義した、微小操舵角域でのドライバの操舵のメカニズムの中に、その要因の一つがあることに着目し、詳細分析を行った。受賞:第72回 自動車技術会賞 論文賞(2022年) - 微小操舵角域のライントレースのバラツキを低減するピッチ特性に関する研究SAE International Journal of Advances and Current Practices in Mobility - VCターボエンジンに対応した日産技報 No.88 (2022)3.2 ドライバに視覚情報を与えるための車両挙動の選定前述の通り、今回の課題は操舵に対して車両が応答しヨー方向に運動を開始したことを、ヨー運動そのものではドライバに感知させられないことにある。ドライバがヨー方向の動きを感知するには0.21deg/sのヨーレイトが必要なためである。仮に車両が動き始めた瞬間からドライバが感知できる過大なヨーレイトを発生するような設定にすれば、車両のヨー方向の動きが機敏になりすぎて、本来目標とした走行ラインを正確に走行することすら出来なくなることは容易に想像できる。視覚からのフィードバック情報は、安定して正確な運転をする上で最も重要な情報の一つであることは明らかであり、1~2degという微小な舵角帯といえども、その影響は小さくないと考えられる。とりわけ今回のように操舵角5deg以下の微小操舵角域でのライントレース性に着目した場合にはその影響は大きく、今回の課題である走行軌跡のバラツキの大きな要因の一つになっているものと考えた。ドライバが操舵入力をしたと認識する操舵角1deg付近で車両がヨー方向の運動を開始し、操舵の増加とともにその動きも増加していることを、視覚からの情報としてドライバにフィードバックすることによって、ドライバはより安定した正確な操舵が出来るようになり、走行軌跡のバラツキが低減するものと考えられる。本研究では並進・回転の6方向の車両運動の中から、ヨー運動の開始直後から車両が応答していることを、ヨーの動きに代わって視覚情報としてドライバに伝えるための動きについて検討した。まず、ヨー方向の運動と同様に平面運動で車両の走行軌跡に直接影響を与える前後・左右方向の運動を除外した、ロール、ピッチ、バウンスの3つの運動を候補として選定した。そして、人間の感度を調査した先行研究2) 事例を参考に、視覚からの感度がヨー方向と同等に高い感度であることが報告されているピッチ方向の運動を最終的に選定することとした。84110.080.060.040.020.0012345678910111213141516171819202122232425Driver No.Average: 0.047m3. 走行軌跡のバラツキ要因と低減方策の検討
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