Fig.13 Error history in CD with increase of train casesFig.14 Comparison of coeffi cient of aerodynamic drag (CD) between CFD and proposed modelTable 5 Comparison of computational time between CFD and proposed model図13に学習ケース数を変えた場合の誤差の変化を示す。横軸は学習ケースの数であり縦軸は誤差(標準偏差)となっている。学習ケースの数が増えるに伴い、テストケースの誤差が小さくなることがわかる。汎化性能の向上に向けては学習ケースの増加が有効と考える。図14に提案モデルを用いて推定したテストケースのCD値とCFD結果の比較を散布図で示す。縦軸は提案モデルで推定したCD値であり、横軸はCFDで計算した値である。テストケースには6種類の車型が含まれているが、いずれの車型についても提案モデルで推定したCD値は、CFD結果に対して概ね±0.012以内に収まっていることがわかる。自動車開発の初期フェーズでは複数のデザイン案の空力評価を行うが、この段階では各デザイン案の形状差は大きく、CDの値も提案モデルの誤差以上に異なる。従って、初期フェーズであれば、各デザイン案に対するCD値の優劣関係の評価に提案モデルを利用することが可能であり、CFDの利用頻度、計算量の削減が期待できる。 提案モデルを用いて、前述のケースAの流速分布、圧力分布およびCD値を推定するのに要した時間を表5に示す。比受賞:第72回 自動車技術会賞 論文賞(2022年) - 機械学習を用いた自動車空力性能を予測するためのサロゲートモデル開発SAE International Journal of Advances and Current Practices in Mobility - VCターボエンジンに対応した較として商用のCFDソフトウェアを用いた場合に要する時間も記載した。CFDの場合、格子作成および流体計算で合わせて24時間程度の時間を要した(1)。これは、メッシュ数は約8,000万点、256cpuコア(Intel Xeon)を用いた場合の計算時間であり、一方で提案モデルの場合は、ノートPC (cpuスペック Intel Core-i5)を用いて距離関数の計算に約11分を要するものの、流速分布、圧力分布およびCD値の推定は3秒程度であった。提案モデルは、複数の形状案の定性的な流れ場やCD値を短時間に確認したい場合に有用なツールと言える。本研究では、複雑な3次元形状を有する自動車形状まわりの流れ場および空気抵抗係数(CD値)を学習できる実用的な機械学習モデルの開発に取り組んだ。1. 流れ場の学習モデルについては、Guoらの提案するネットワーク構造に対して、全結合層の代わりにResidual blocksを採用することで勾配爆発を抑制し、自動車形状まわりの流れ場を学習できるモデルを構築できた。2. 提案モデルを用いて推定した流れ場はCFDの結果を定性的に再現できることを確認できた。3. 提案モデルを用いて推定したCD値の誤差(MAPE)は1.4%であった。4. 提案モデルは複数の形状案の流れ場やCD値を短時間に確認できることから、CFDを代替する有用なサロゲートモデルと言える。本提案モデルを用いることで、空力解析の計算時間短縮および計算コストの削減が期待できる。(1) 赤坂啓ほか: CFDを活用した空力性能と熱性能の同時検討の取り組み、自動車技術会 学術講演会前刷集、No.96-05, pp.11-14 (2005).(2) M. Arai, et al.: Development of the Aerodynamics of the New Nissan Murano, SAE Technical Paper, 2015-01-1542 (2015).(3) N. Umetani, et al.: Learning Three-Dimensional 796日産技報 No.88 (2022)3.5 機械学習モデルの推定時間参 考 文 献4. まとめ
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