イムでサイバー空間上に再現するデジタル技術を用いた解析にも注力しています。VR技術を用いて、開発設計段階で実験計測に基づく事象を事前に再現し検証しています。サイバー空間上で実寸大の評価をすることも可能です。例えば運転操作や視界評価などの運転性評価では、設計情報の再現に加え、車外環境として外部360度且つ走行距離分の遠方までサイバー再現しておくと、運転等ドライバーの所作に連動した視界再現でVR体験でき、走行中の運転性評価が可能になってきました。ミラーの視野や運転操作スイッチ等の使い易さ・見易さなどの評価精度が上がっています。上記のようなステップを踏んでシステムや部品の設計が完了すると車両を試作して、実験検証に移行します。部品、システム、車両、それぞれのレベルでの機能、性能保証を実験検証するプロセスです。昨今の実験とシミュレーション技術の向上により、フィジカルな実験検証も効率的に行えるようになってきました。実験技術にシミュレーション技術を融合することで、短期間での的確な製品の開発評価が可能となりました。特に複雑なシステムにおいては、この技術はなくてはならないものになっています。開発での効率的な検証と並行して、生産技術、工場、サプライヤともデータを共有しながら、量産品質、生産技術、工場製造、サプライヤの協力を得ながら、量産品質保証のための検討、確認も丁寧に実施して品質が造り込まれていきます。本技報のもう一つの特集である新型エクストレイルにおける先進技術の適用開発の例を以下に示します。e-POWER用VCターボエンジンの採用にあたっては、低燃費と高出力の両立に加えて、高い静粛性と加速時の心地よい音(リニアフィール)を目指しました。このVCターボエンジンは、圧縮比が自由に変化させられることから、適合すべき定数が従来エンジンに比べて2.8倍程度あります。それらは、外気温度・標高・道路の負荷などの外部環境や、車速・加速度・アクセル開度などの運転状況に応じて適合するのですが、その際には、バッテリーの充電状況・燃費・排気・熱マネージメント・更にはエンジンサウンドや静粛性も確認しながらきめ細かく実施する必要がありました。検討すべき走行条件の組合せは膨大なため、モデルベースのツール開発によるシミュレーション、台上評価、実車評価の融合によって、適合すべき多くの定数を効率よく定めることができました。3e-4ORCEがもたらす価値の一つである「フラットライド」は、ドライビングシミュレータを広く活用しています。「フラットライド」は従来との比較では目標設定ができないため、ドライビングシミュレータを活用し、車両加減速やピッチングモーションに由来する"人の感じ方"を分析して目標設定しました。また、目標に沿った設計で狙い通りの感じ方を提供できるのかも、ドライビングシミュレータによって実車両製造前に確認しました。ProPILOTの製品化においては、走行する道路環境、交通状況、走行条件など、さまざまな要件を考慮する必要があります。個々の部品評価やシステム評価、ドライビングシミュレータやテストコースでの実車評価に加え、実際の市場環境で狙い通りの性能を達成しているかについて数万km以上の公道走行評価を積み重ねて機能・性能保証し、実用化しました。また、機能限界を超えたような外部環境に遭遇した場合や、万が一部品に不具合が発生した場合においても安全にお客様に使っていただけるようなフェイルセーフ設計開発も製品化において重要な技術開発の一部です。更に新型エクストレイルへのProPILOT適用に当たっては、お客様にとってより一層わかりやすく安心安全に使っていただくために表示や操作性向上に徹底的にこだわって開発しました。このようなHMIの最適化には、多様な体格、年代、運転経験の人にとって使いやすさを評価するためのドライビングシミュレータは、欠かせない技術です。このように研究、先行開発した技術を、製品へと適用する開発プロセスを経て、初めてお客様に安心して喜んで使用いVCターボエンジンe-4ORCEがもたらすフラットライド
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