日産技報 No.89 (2023)
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Fig.10  Steering pattern and vehicle C.G. path (with enlarged view) to satisfy design specifi cation of vehicle and passenger motion: Inverse vehicle dynamics analysis fi xes both input and state variables simultaneously.Fig.11  Vehicle and passenger motion to satisfy the design specifi cation: Calculated results.Fig.12  Vehicle and passenger motion of actual vehicle test: Every data curve was averaged (n=5).最適化算出された車両運動として車両重心横加速度と、乗員身体のロール姿勢角を図11に示す。計算結果は、V0のSin関数状の変化に対して、乗員挙動を最適化した仕様R1では乗員挙動のピーク値が抑えられている。また、終端拘束を加えた仕様R2では姿勢角が計算終端で一定値収束している。実験方法は、車両に操舵ロボットを取付けて算出操舵波形を再現することで、後席乗員への加速度付加を行った。実環境対応のため、車両モデルには勾配の影響項を追加して計算を行った。計算値終端の4 秒に合わせて実験値を比較する。乗員は、乗員特性計測時の平均に近い体格を持つ運動性能評価エキスパートである。乗員は、操舵ロボットでは不可避な駆動音で車両の運動開始を認識してしまう。けれども、外界視界は周辺視で捉えているだけなので、運動予測はできにくく、受動運動という設定に近いはずである。乗員姿勢変化は、後頸部に装着させた変位センサによる移動量から推定した。実験結果は計算例(図11)に対応させて図12に示す。加SAE International Journal of Advances and Current Practices in Mobility - VCターボエンジンに対応した受賞:第71回 自動車技術会賞 論文賞(2021年) - 乗員の快適性を向上させる車両運動の探求速度空間の再現性は確保できている。乗員姿勢変化量の計算値との乖離(図では係数2.0を掛けている)は、計算が図9の乗員モデル特性値(四分位範囲で約2倍の差が存在)であるため、評価者との個体差などの影響と考えている。仕様相互の相対的関係は計算による予測と対応していると判断している。主観評価では、仕様V0 は『動きは滑らかだが、身体姿勢変化は大きい印象』なのに対して、身体ロール角加速度を抑えた仕様R1 は『身体ロール姿勢変化が小さい』と感じることができている。別表現では『身体の並行移動感が高まった』という評価も得た。ただし、終端でのロール姿勢拘束を追加した仕様R2は、『運動初期の動きがV0 比較で大きい』という評価であった。また、身体姿勢保持を狙った終端身体ロール抑制は、『高周波の動きは気になるが、身体抑制による負荷低減は認識できる』との評価であった。以上、乗員受動運動設計を用い、計測と主観評価双方で快適性をパラメトライズできている。乗員身体モデルとしては、頭部を別体化するなどの自由度増は可能であるが、受動運動範囲とはいえ、頸椎部の剛性などの適切なモデル特性値の確定も難しくなる。乗員の乗車中の行動や状態は多様と考えられるので、乗員モデルの複雑化とは別に、モデル特性値の設定の工夫は研究課題であろう。一方、乗員の運動知覚に関しては、身体モデルから機械的に算出できる量ではなく、人間の内面の感覚特性のモデルも加えて、真の知覚量で評価関数を構成することが重要であるかもしれない。図13は、身体ロール角加速度を評価関数とした仕様での終端拘束の有(R2)無(R1)での身体挙動(計算値)を示している。R2仕様では中間時間での横移動量がR1仕様より大きく、終端での身体挙動を制御するためには、身体ロール運動を早期に励起させる必要があることがわかる。ロール運716日産技報 No.88 (2022)4.3 加速度(車両)空間を用いての評価5. 快適性探求に向けての考察

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