Fig.7 Methodology to construct acceleration spaceFig.8 Example of vehicle motion task: Lane change as a typical transient vehicle motion scene.Table.4 Vehicle and passenger motion design specifi cation: Three condition to exemplify design methodology.Fig.9 Passenger body roll stiffness (box-and-whisker plot) and other characteristics: Passenger model parameters were fi xed from subject measurement (n=15) and estimation. 以上から、状態オブザーバを用いることで、乗員の運動知覚に関係する加速度やJerk の近似量を、状態変数として組込み、それを用いて評価関数を設計することが可能になった。快適性を向上できる車両運動探索の方法論を具体化させる。そのために、乗員の身体運動による運動知覚量を組込んだ評価関数の最小化を逆車両運動で導くことを考えていく。既に先行研究(7) において論理展開している事であるが、車両評価においては、『何を同じ条件として比較を行うか』という同一性の担保が重要となる。逆車両運動解析では、図1の車両運動タスク部(Vehicle Motion Task)で、運動初期と終端での状態・入力変数の値を設定して解くことで、同一性が担保される。これから、評価関数に基づく運動設計が成立する。そこで、設計の流れとしては、以下の三段階となる; (ⅰ) 評価する走行シーンを設定(車両運動タスク) (ⅱ) 快適性要因を評価関数で設定して最適解を算出 (ⅲ) 最適解を車両運動として再現させて実験評価。最適解として得られるのは、想定車両の操作量および運動である。そこで、最後の段階における車両運動再現は、図7に示すように、操作量を実車に与えるか、または加速度空間を再現できる装置を用いて、乗員に運動を付加することで行う。まず、快適性評価の走行シーンとしては、操作入力の種類(操舵単独か、ブレーキ・アクセルによる積極的な加減速を加えるかなど)にもよるが、定常運動では運動知覚に関係する評価関数差が顕著になり難い。そこで本論文では、運動知覚差を得やすい走行シーン例として、過渡運動を題材とした(図8)。SAE International Journal of Advances and Current Practices in Mobility - VCターボエンジンに対応した受賞:第71回 自動車技術会賞 論文賞(2021年) - 乗員の快適性を向上させる車両運動の探求日産技報 No.88 (2022)次に、表4に例として用いる車両運動設計仕様を示す。車両運動タスクとして、終端における操作と、路面平面運動の状態量である方位角やヨー角速度を直進(=0)に戻すレーンチェンジを設定した。評価関数は、ドライバの快適性を仮定した操舵操作量最小化仕様(V0)と、乗員の快適性向上の仮定として、身体ロール角加速度最小仕様(R1)を設定した。比較のため、身体ロール角加速度最小仕様に、終端でのロール角加速度と角速度を0に戻す条件を追加した仕様(R2)も設定している。運動の設計仕様に従って計算を行う。ここで、乗員身体モデルの特性を決める必要がある(車両特性の設定は、著者らの先行研究(7) にて用いた車両と同一)。単純な乗員モデルなので、モデル特性の厳密性追求による精度向上効果は小さい。そこで、形状や質量特性値としては、後工程4.3 節での実車実験評価者に近い値を仮定する。横加速度2[m/s2] 付近の身体剛性Kʙを、被験者計測結果(15例)の分布を参考に設定した。図9に計測例を箱ひげ図で示す。計算は、乗員が下向き姿勢でテキストリーディング時の値を用い、後席左位置に着座させた。これで計算に必要な設定が完了したので、逆車両運動解析を行い、終端条件を満たしつつ評価関数を最小化する操作入力と、車両運動(図は車両重心軌跡)を算出した(図10)。7054.1 快適性評価としての運動設計4.2 設計に基づく乗員加速度空間の算出4. 乗員の受動運動設計による快適性要因探索
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