図10 アルミ板接合試験片のCT画像図8 X-ray spectra図9 The value of POAの低減効果に作用する仮説を得た。上記仮説を実験的に検証するために取得したアルミ、および銅フィルタ適用時のX線スペクトルを図8に示す。各フィルタの厚みは1mmである。グラフは横軸がX線エネルギー、縦軸が各エネルギーの光子数である。定性的に、銅フィルタ、アルミフィルタともに低エネルギー側のX線光子が減少していることが確認できる。両者のX線スペクトルを比較すると、20keV~40keVのエネルギー帯で銅フィルタの光子数がアルミフィルタに対し著しく減少している。このX線スペクトルの差異を定量的に評価するために、20keV~ 40keV、および80keV~100keVのエネルギー帯のPOA(Partial over all)から光子の減少数を算出した結果を図9に示す。エネルギー帯20keV-40keVにおける光子数の減少について、銅フィルタはアルミフィルタの約3.5 倍である。一方、エネルギー帯80keV-100keVでは、アルミフィルタの20-40keVエネルギー特集2:電動化に貢献する実験技術 - 6. 車体軽量化技術を支えるX線CT非破壊計測技術帯に対して、いずれも0.1倍以下であり、エネルギー帯20keV-40keVにおいて、銅とアルミの減衰に顕著な違いが確認できる。これにより、入射されるX線のエネルギー分布において、金属フィルタによる低エネルギー帯での分布変化が、ハードニングの低減効果に作用する仮説が正しいことを検証した。X線エネルギー分布とCT撮像結果の関係性を明らかにし、最適な金属フィルタの選定手法を開発した。これにより、撮像準備において、オペレーターの長年の経験や勘だけに頼ることなく、工学的なアプローチで確実な撮像が可能になった。過去に経験のない新規部素材において高い有効性が得られている。これまでは画像ノイズによって可視化が困難であった内部構造を鮮明に可視化した事例を以下に示す。事例1)アルミ材の板を鉄のSPRと接着剤で接合した試験片の外観と撮像結果を図10に示す。接着剤の塗布状態(形状)、およびSPRの接合要件である、リベットによる上板の貫通、下板内でのリベット脚先の広がり、下板に割れがないことを3次元構造で評価できる。603.5 仮説の検証4. 軽量化部品への適用結果
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