図3-1 X線エネルギーの透過イメージ図3-2 ハードニングのイメージ図図4 透過長さに応じた透過率の崩れ図2 Reconstruction process of X-ray CT3.1 X線CTの概要3.2 車体軽量化開発におけるX線CTの課題とが有効な手段となる。これらのことから、非破壊で内部構造を効率的に解析する技術が、軽量化車体開発の競争力につながる。ここでは、X線CTを活用した自社開発による3次元内部構造の撮像技術について述べる。X線の発生原理は、線源内部のフィラメントに電流を流し、加熱することで熱電子を発生させる。その熱電子を高電圧で加速し、ターゲットに衝突させることによりX線を発生させる。X線CTでは、X線を撮像対象に対して360°の方向から照射し、その対向する位置にある検出器でX線透過強度を透過画像として撮像する。各方向のデータを投影データと呼び、360°方向からの全投影データを用いて再構成した3次元画像がCT画像である。一連の処理の流れを図2に示す。市販の産業用X線CT装置から照射されるX線のエネルギーは低エネルギー側にピークを持ち、高エネルギー側に向かって緩やかに減少する連続的な分布である。密度の高い鉄部品はX線が吸収されやすく、エネルギーの低い低エネルギー側の吸収が多いため、高エネルギー側のみが透過するようになる。見かけ上、エネルギー分布が高い側に移動するため、ハードニング(線質硬化)と呼ぶ。図3-1にX線エネルギーの透過イメージ、図3-2にハードニングのイメージを示す。特集2:電動化に貢献する実験技術 - 6. 車体軽量化技術を支えるX線CT非破壊計測技術そのハードニングが原因となり、図4に示すように透過長と透過率(照射量/透過量)との関係がランベルト・ベール則から崩れ、再構成時にCT画像に実際には存在しない構造のノイズ(メタルアーチファクト)が観察される。ハードニングの対策には、金属フィルタの適用などがある。金属フィルタはX線の照射部に金属板を設置することでノイズ低減効果が得られる。ノイズを低減したCT画像を得るには、金属フィルタの設置、トライアル撮像、ノイズ低減効果を確認する一連の作業が発生する。オペレーターの長年の経験や勘に頼っており、計測対象が変わるたびに撮像条件の決定に時間を要する。特に、鋼材やCFRPなどの樹脂系材料を用いたマルチマテリアル部材のX線CT撮像ではメタルアーチファクトノイズが発生しやすい。内部構造の正確な情報を得るためには、金属フィルタの仕様を効率的に決定する工学的手法を確立することが課題である。(2)583. X線CTによる内部可視化技術
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