図1 軽量化材料の適用例*カスタマーパフォーマンス&実験技術革新部グローバル競争が加速する電動車開発において、航続距離の伸長は商品力向上になる。電動パワートレインのさらなる性能向上を図るため、モータ高効率化・バッテリ高出力密度化とともに、車体軽量化も進展しており、部品構造の合理化が追求されている。これらの研究開発段階において、X線CTによる非破壊計測技術は、分解すると元の性能・状態から変化する精密な内部構造を3次元形状データとして解析することができ、電動車の性能向上に幅広く貢献している。本稿では、電動化の加速に伴って重要性が一層高まっている車体軽量化におけるX線CT活用に着目する。車体軽量化開発では物性が異なる材料を最適に組み合わせる構造設計技術が求められる。車体部材は、構造合理化に加えて図1に示すように従来の鋼板から高張力鋼板(ハイテン)、アルミニウム合金板、樹脂、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などによるマルチマテリアル化が加速している(1)。マルチマテリアル化に不可欠な材料、および異材接合の技術開発を効率化するための適用事例を紹介するとともに、本計測技術の将来展望について述べる。自動車産業では、材料や部品のサプライチェーンがグローバル化し、開発・製造拠点の現地化が拡大している。個別の部素材を組み合わせる軽量化車体の開発では、製造拠点の設備要件を考慮し、様々な部素材を組み合わせて性能目標を達成しなければならない。例えば、異材接合では接合継手部の内部構造、CFRPでは強度・剛性を担う材料内部の繊維配向などを評価する。その性能目標を達成するためには、多くの試作評価による材料加工プロセスの設計最適化が必要である。異種部素材の接合技術には、用途、材料特性に合わせて、機械的接合、固相接合、接着接合などがある。例を挙げると、機械的接合のSPR (Self-Piercing Rivet) とは、上板を貫通したリベットの脚先が下板を貫通せずに展開することで締結する方法である。材料技術では、CFRPの用途が航空宇宙分野から自動車分野に拡大している。目的に応じて、樹脂注入成形、プレス成型、射出成型などの工法を用いる。例えば、樹脂注入成形は、炭素繊維を部品形状に整えて金型に設置した後に樹脂を注入し、繊維の中に含浸、硬化させる工法である。これらの加工プロセス開発では、強度・剛性・耐久性などの結果系の性能指標とともに、加工パラメーターに紐づく要因系の内部構造を解析する。さまざまな条件下で試作した部品の内部構造を解析・評価することで現象のメカニズムを理解し、結果系に作用する要因を特定することが重要になる。しかし、従来の内部構造の解析・評価技術は、機械加工による破壊断面観察である。特定一断面の情報を得るのにも時間を要する。車体部品では、繰り返し負荷に対する疲労強度を考慮した設計が不可欠である。疲労メカニズムを理解するためには、同一サンプルを用いて内部構造の変化を時系列に把握するこ572.1 背 景2.2 材料加工プロセス開発の効率化特集2:電動化に貢献する実験技術菅田 安洋* 臼井 徳貴*1. 概要2. 軽量化車体開発における課題6. 車体軽量化技術を支えるX線CT非破壊計測技術
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