日産自動車は、そのDNAである「他のやらぬことをやる」の精神で、「技術の日産」の名のとおり技術により価値を創造してお客様に製品やサービスとして届けています。どんな先進技術も、製品として多くのお客様に喜んで使っていただき、更には地球温暖化や交通事故といった社会の課題解決にも貢献しないと意味がありません。そうした価値を提供するために必要な先進技術は、どのようにして生まれ、育てられて製品に適用されていくのかについて解説していきます。日産自動車では、将来に向けたヴィジョンを実現するために必要な技術ロードマップを過去から作成しそれに基づき研究、先行開発を実行しています。技術ロードマップは、将来の魅力ある商品やサービスとして提供していくべきお客様価値を考え抜いて作成しています。また、社会の要求や動向もとらえて、それらから生まれる課題に対する解決策を実現していくために必要となる技術開発についてもこのロードマップに織り込んでいきます。新しい技術を確立するまでには、多くの場合非常に長い期間を要します。従って、この長期的な技術戦略であるロードマップが非常に重要となります。この技術ロードマップは、社会動向の変化やお客様の価値観や行動の変化、また技術自体の進化・革新を確認しながら、更新していくことも重要なことです。電動化・知能化技術ロードマップを例として示します。1新しい技術を確立するには、基礎となる研究開発から実用化するための先行開発をStep by Stepで実行していきます。いくつかの技術要素の研究や先行開発を完了させた後に、それらの組み合わせることにより実現できる技術もあります。従って、一部の先行技術開発が終わってもすぐには製品への適用ができない場合も出てきます。そのような場合においても、当初描いたロードマップを実現するために粘り強く技術開発を進めていくことが重要です。例えば、1990年以前から他社に先んじてスタートしたモーターやバッテリーの研究開発の結果は、その20年後の2010年に量産初のEV日産リーフという製品として結実し、更には、2017年にe-POWERという日産自動車独自の電動化システムとして多くのお客様に新たな価値を提供することになりました。また、1990年代のATTESA ETSやHICASという当時最先端の4WDおよびシャシ制御技術は年々進化を続けながら、電動化との統合制御技術として生まれたのがe-4ORCEという技術です。e-4ORCEは、前後モーター駆動AWDとシャシーシステムを緻密に統合制御することにより、あらゆる走行シーンにおいて運転の操作のしやすさ、快適性、安心感を高い次元で実現したものです。日産自動車の技術開発の進展巻頭言常務執行役員 安徳 光郎1. はじめに2. 技術ロードマップ3. 研究開発〜先行開発先進技術を製品として仕上げる技術とプロセス
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