図4 リアルタイムデータ処理システム図5 エアコンサイクルベンチ試験装置図3 p-h線図更に、EVの冷却システムは走行中だけではなく、EVに欠かせない充電中にも作動する。バッテリーは充電出力や充電前の走行状態によりバッテリー温度が変化し、バッテリー性能へ影響を与えるため、外気温度や走行条件に加えて、関連するシステムの温度環境を再現する必要がある。冷却のエネルギーとして用いている冷媒は、気体・液体・気液混合に状態変化している。この冷媒の状態が適切かどうかをモニターするために、各箇所の温度・圧力を測定し、冷媒物性に照らし合わせ状態把握を行う。更に、連成する冷却水の温度、流量も各箇所取得し、狙い通りの冷却が出来ているのか、確認を行う。この計測箇所のデータを基本とし、各温度条件×運転モードで実験を行いデータ取得することになるため、大量のデータ処理が必要となる。そのため、従来行っていた実験後の処理によるデータ分析では大量のデータを分析できず、判定に時間を要することになるため、リアルタイム処理システムを開発した。冷却エネルギーとなる冷媒の状態把握には、温度や圧力は直接計測によりリアルタイムにモニターできるが、これだけでは冷媒状態が分からず、適切な気液の状態となっていることを確認するために、温度と圧力を冷媒の物性に照らし合わせ、図3に示すようなp-h線図を描画し確認しなければならない。そのため、時系列で計測されるデータをリアルタイムに物性特性を算出するシステムを開発した。計測データをリアルタイムに取り込み、時系列データとしてリスト化するとともに、視覚的に冷媒状態を把握できるように、p-h線図もリアルタイムに描画することで、データ処理時間を短縮した。(図4)特集2:電動化に貢献する実験技術 - 5. 電費と快適性の両立を実現する熱マネジメントシステム実験技術冷却回路や室内快適性の実験には、エアコンサイクルベンチ試験装置と、高温から低温、雨や雪などの環境を再現する全天候型環境シャシダイナモによる実車実験を行っている。エアコンサイクルベンチ試験装置は、エアコン関連部品から冷却部品までの冷却回路に関連する部品の特性を、試作車を作る前にシステム性能を評価するために使用している。(図5)高温から低温まで、実車で想定される温度環境を再現し、HVACやコンプレッサ、その他冷却回路との熱収支が狙い通りになっているのかを確認するとともに、必要に応じて部品特性や制御を変更しながら実験を行うことが可能である。実車実験については、全天候型環境シャシダイナモを用いている(図6、図7)。クルマの温度環境には、外気温度や湿度、日射などの外的要因で決まるものと、パワートレインやバッテリーなどクルマを運転することで自己発熱する内的要因で決まるものがある。これらの温度環境は相互に影響を与える。例えば、クルマの自己発熱が外気へ温度影響を与え、外気温度が上昇すると一定の温度環境で実験を行うことができなくなる。そのため、クルマの自己発熱の影響を受けない実験設備が必要である。更に、HVACや冷却部品が作動した際の騒音についても評価できる設備が必要である。543.1 データ処理システムの開発3.2 温度環境を再現する実験設備3. 解決法策
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