図7 VR評価環境による上質感の評価(例)丸勢 修中園 泰徳久芳 憲治上野 英里奈ヘッドマウントディスプレイを用いたバーチャル空間上に、決定した再現要素を構築した。図6の再現要素のうち、「評価者の実際の目の位置と視線の向きに応じた視野範囲」については、バーチャル空間上に構築するソフトウエアを自社開発した。これにより、評価者の行動と視認対象の見え方が現実と一致して、格納式ドアハンドルの自動的な動きの印象を正確に評価可能となった。加えて、再現要素 「ドアハンドルが格納状態から突出する動き」についても、図3に例示する突出量のばらつきの時系列変化の設計値を直接入力できて、バーチャル空間内で、複数のばらつき特性を簡単に切り替えられるソフトウエアを自社開発した。これにより、突出量のばらつきの大きさを変更しながら、上質感を損なう閾値を評価可能とした(図7)。この様に、印象の評価に適するバーチャル空間は、汎用のVRシステムで実現しているものが存在しない為、評価のポイントを理解している自動車開発の実験部隊が、VR評価環境を自社開発した。自社開発した「評価者の実際の目の位置と視線の向きに応じた視野範囲」の再現が、バーチャル空間での見た目の印象の著者特集2:電動化に貢献する実験技術 - 3. 新機構部品の品質を試作レスで評価できるバーチャルリアリティ実験技術評価に大きく貢献している。実際に車を使用するシーンにおいて、目の位置、視線の向き、視野は、ドライバーの行動に応じて、時々刻々、変化する。つまり、見た目の印象に影響する視認対象の見え方は、乗車等の人の行動に紐づいて決まる為、評価者の実際の目の位置と視線の向きに応じた視野範囲と、行動に応じた変化の再現が重要である。汎用のVRシステムの視点の位置の決め方は、バーチャル空間内の一定位置を定義したものである為、現実空間の視点のある基準点に対する絶対位置を反映したものではない。そこで、汎用VRに備わっている基準点とヘッドマウントディスプレイの相対位置を検出する機能を利用して、評価者の足と地面の接地位置からヘッドマウントディスプレイまでの距離を求めて、ヘッドマウントディスプレイのセンサー位置と目の位置のズレを補正するロジックを作成して、VR評価環境に再現した。評価者の行動に連動した視野、および、設計公差によるモノの動きを実際の大きさで再現および視認できるデジタルモックアップを組み込んだVR評価環境を自社開発することにより、視覚から受ける印象を評価可能とした。その結果、情緒的価値の目標設定が可能となった。今後、様々な機能の情緒的価値に対応できるようにVR評価環境の再現要素を拡充させて、ますます増える電動化・知能化部品の価値の最大化に貢献する。(1) D. Zeltzer : "Autonomy, interaction and presence". Presence, 1, 1, pp.127-132(1992) MITPress(2) 舘 暲: バーチャルリアリティ, 3D映像, Vol.20, No.4, pp.91-98 (2006.11)(3) 廣瀬 通孝:トコトンやさしいVRの本、日刊工業新聞社 (2019/3/1)48参考文献4. 技術的特徴5. あとがき
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