日産技報 No.89 (2023)
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(a) Feeling of comfort 図12 Sensitivity analysis by driving simulator (b) Feeling of acceleration図13 Subjective evaluation of driving simulator本紹介では、DSを活用した内容について説明する。図12に示されるように、車両挙動シミュレーションで得られた前後運動に対する定常前後加速度の大きさや前後加速度の微分である前後ジャークの大きさまた同様に、ピッチ角やその微分値であるピッチレートを任意の数値で模擬し、ドライビングシミュレータに入力することで、各影響因子に対する感度分析をDSで実施した。結果を図13に示す。横軸それぞれに前後ジャーク、及びピッチレートを示す。また、縦軸は乗員の評点を示し、図上方向ほど主観評点が良いことを意味し、評点毎に色分けをしている。快適感に対する評点を図13a、加速感に対する評点を図13bに示す。図13aではピッチレート及び前後ジャークが小さいほど乗員は高い快適性を感じていることがわかる。一方加速感の評点については前後ジャークが高いほど評点は高いものの、ピッチレートについては高すぎると評点が下がる傾向がみられる。そのため、ピッチレートについては抑えることで、加速感、快適性が共に増加し、前後ジャークについてはドライバーの状況に応じた適切な値に設定することで加減速挙動において高い主観評価が得られると考えられる。特集2:電動化に貢献する実験技術 - 2. 電動車ならではの性能を創りこむドライビングシミュレータ実験技術以上のドライビングシミュレータの実験結果及び乗員挙動予測モデルのシミュレーション結果を踏まえて、乗員の快適性を向上させるための前後ジャーク、及びピッチレートに対して目標性能を定めた。上記の目標設定を用いて実際の試作車両で効果を確認した。車両が停止状態から特定の車速になるまで同一の加速度で加速する場合において、乗員への負荷を軽減していない結果を図14aに示し、また乗員への負荷を軽減する制御を使用した時の結果を図14bに示す。赤線は加速時に乗員頭部に取り付けられた加速度であり、青線は車両ばね上に取り付けられた加速度である。また前後ジャーク及びピッチレートを第2軸に示す。前後ジャーク及びピッチレートを抑えることで、人間の頭部加速度と車両加速度の乖離が少なくなっていることが確認できる。このことから乗員の頭部の揺れを軽減できていることが確認できる。また同様に主観評価についても乗員の快適性が向上していることが確認することができた。本ドライビングシミュレータで定めた目標値を用いることで、効果的にスムーズな加速感を実現できることが分かった。43

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