図2 DSシステム構成図1 DS外観*カスタマーパフォーマンス&実験技術革新部車両の電動化に伴い、応答性の良い駆動力をきめ細やかに制御することで、新しい運転感覚を作ることが出来るようになってきた。一方で、制御のパラメータの数や調整の幅が広がることで適合の自由度があがり、実車を用いた適合では多くの手間や、長い適合期間が必要になってきている。日産自動車では、2019年にドライビングシミュレータ(DS:図1)の本格稼働を始め、現在までProPILOT 2.0のオーバーライド時の安全性の検証、タイヤ特性や車両諸元(重心高、重量配分等)による操安性能の検証などで活用を進めてきた。最近では、高度なスキルを持つ評価ドライバー以外に一般ドライバーの運転操作検証が行えることから、人の感じ方をベースに新しい運転感覚の目標設定や達成レベルの適合への活用を始めている。このためにはより精度の高い運転感覚の再現が不可欠であり、DSのモーションシステムの改良や、キューイング制御の開発などの技術開発を行い、より再現精度の高い挙動を追求している。そこで、本章ではDSの技術開発における内容と、その結果を活用した適用事例について紹介する。日産自動車のDSは、リアルタイムにシミュレーションされた車両挙動をDS上で1:1の同じ動きで実現するため、長い並進レールと短い並進レール、ヘキサポット、ターンテーブルで構成されている(図2)。Y並進レールは最大加速度12m/s2を発生できる性能があるが、最大加速度から安全に停止する必要があるため、使用できるレール長さは改良前で有効ストロークが±11mであった。しかし、加速感や電動化による制御等の様々な評価を行うのにあたり、有効ストロークが足りず、DSシステムの急停止が起きるケースが発生した。その場合には、モーションキューイング上でゲインを落とし体感加速度を落とす、またはフィルターを通し体感時間を短くする必要があった。また、評価ドライバーによるDS評価では、実車に対して挙動の遅れを感じるコメントがあり、十分な性能になっていない事も分かってきた。改善方策として、Y並進レールの制御方法を見直す事で、有効ストロークが±11mから±14mとなり、従来と比べ6m有効距離を長くした事と、XY並進装置、ヘキサポット、ターンテーブルの応答改善を目的にサーボ特性の変更も行った。これにより、Y並進レールで従来の時定数に対して最大344%応答性を向上することができた。392.1 モーションシステムの改良特集2:電動化に貢献する実験技術藤田 裕幹* 磯野 洋一* 今村 昌幸* 町田 直也* 林 豊*1. はじめに2. DS新技術開発2. 電動車ならではの性能を創りこむドライビングシミュレータ実験技術
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