図7 熱マネジメントシステム実験図5 ドライビングシミュレータ図6 e-POWERパワートレイン台上実験技術図8 X線CTの例ICE車に比べてBEVになると航続距離に対するお客さまの重視度が高くなる。BEVの航続距離はバッテリ容量と電費で決まるが、電費に最も影響の大きい因子は空気抵抗であり、その空気抵抗を低減する手段の一つとして電動格納式のドアハンドルの採用が進んでいる。このような電動部品の動き方ひとつをとっても適切な目標設定をすることで、お客さまに高級感や先進感といった情緒的価値を提供することができる。ここでも様々な仕様の先行試作品でトライ&エラーを繰り返すよりも、バーチャル技術を活用することが効率的・効果的であり、それが第4章のバーチャルリアリティ実験技術の適用例である。電動化に伴って熱収支に関して新たな課題が生じる。BEVはICEのような排熱エネルギーが無いため効率kが高い一方で排熱を利用した室内暖房が出来なくなる。また、バッテリやモータを適正温度に保つためには高負荷走行時や急速充電時に冷却が必要となるが、その冷却システムは室内冷房システムと共用している。システムが複雑化している上に、走行や充電のシーンと周囲の温度環境の組合せによって膨大なパターンの実験評価によって、効率の高い熱マネジメントシステムを実現することができる。そのために開発したのが第5章の熱マネジメントシステム実験技術である。特集2:電動化に貢献する実験技術 - 1. 電動車両の競争力を支える実験技術とは最後に紹介するのはX線CT非破壊計測技術である。バッテリやモータなどの電動車特有の部品・システムの開発、あるいは車両軽量化のための新材料・新工法の採用など、非破壊計測のニーズは高まっている。日産自動車では社内にその技術を持つことによって、スピーディな対応が可能となっている。これらの技術に共通するのは、どれも既製品を買ってきてそのまま使っているのではなく、社内で独自開発しているということである。もちろん、それ以外にも、一般に市販されている製品を買ってきたり、設備メーカーや計測器メーカーに作ってもらっている物も多い。しかし、どのような仕様の設備を導入するのか、どんなスペックの計測器が必要なのか、それらをどう組み合わせてどう動かすのか、そういったことを考えるのは実験部のエンジニアが担っている。車両の評価を行っている当事者だからこそ、何が必要なのか見抜くことができるのである。36
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