図13 0.1G加速時 エンジン回転1.5次こもり音のANCによる低減効果図14 車体骨格固有値配列表図15 車体骨格構造ANCによるこもり音低減効果を図13に示す。 新型エクストレイルでは、高出力3気筒エンジン化による振動レベルの増加に対し、上質なNVH性能達成のため、高剛性・低感度車体を開発した。1.低周波域での車体骨格固有値(モード)を減らす、2.音になりにくいモードにすることで、お客様に音・振動を伝えない車体を実現させた。車体骨格固有値は、ねじり、曲げ等、車体骨格が持つ固有の振動モードであり、各エンジン、サスペンション等の入力によるキャビンの体積変化を増幅させるため、音感度レベルを構成する主要因となっている。骨格固有値が低周波域に多数存在する(密度が高い)と、各種入力に対してモードが励起されやすい=音になりやすい車体となる。旧型エクストレイルに対し、高出力3気筒エンジンを採用することで、エンジン振動レベルが増加する新型エクストレイルでは、車体の音感度を向上させるために固有値密度を低減させる必要がある(図14)。具体的な固有値(モード)向上、低感度化の方策を図15に示す。最初の固有値であるねじり共振に対しては、OTR側に断面を設けた従来のCピラー構造に対し、より効率的に剛性を向上させるため、剛性に寄与の高いINR(圧縮側)の断面を確保した環状構造(①)を採用することで、骨格固有値を30→40Hzに向上させた。第2の固有値であるエンジンコンパートメント部の横方向の曲げ共振に対しては、フードリッジ先端とフロントサイドメンバー間を繋ぐ骨格(②)を配置することで、特集1:「タフギア」×「上質」 新型エクストレイル - 5. EV並みの静粛性を実現するNV技術横方向剛性および固有値を向上させている。第3の固有値である車体縦方向の曲げ共振に対しては、前述のCピラーINR環状構造にて後部の車体上下方向の変形モードを抑制させ、更にフロアトンネル前に環状構造(③)を設けることでトンネル開きモードを抑えることで固有値を上げている。これら構造の適用により、低周波域での固有値密度を低減させることで、音感度の向上を図った。さらに、固有モード自体を音になりにくいモードにする(振動ゲインを下げる)ために、発音部位を特定し補剛することで低音感度化をさせた。発音部位の1つであるダッシュ膜前後モードに対し、ダッシュアッパークロスをダッシュ上部に左右方向に閉断面(④)を設定した。また、7thクロスメンバー(⑤)は、リヤサスペンションメンバー取付点間を結合し、リヤサイドメンバーの上下モードおよびリヤフロア膜モードを抑制させることで、各部位での発音を抑えた。その他の骨格においても、パッケージングを考慮して、稜線の屈曲点を極力無くしつつ図心のオフセット量を減らし、各取付部座面の最小化による局部剛性の向上等により剛性高効率化を図ることで、旧エクストレイルに対し主要骨格の板厚低減・軽量化しながらも、ねじり剛性+44%、縦曲げ剛性+40%させ、新型エクストレイルの高出力3気筒化エンジンに対応した高剛性・低感度車体を実現させた。296.4 低感度車体6.4.1 骨格固有値密度の低減6.4.2 固有値(モード)の向上
元のページ ../index.html#34