日産技報 No.89 (2023)
33/103

図11 ロングフローエキゾーストシステム図9 周辺部品レイアウト図12 ロングフロー化を具現化したマフラ内部構造図10 e-POWER専用マフラ消音コンセプト車両中央部および車両後方に大容量マフラが必要となる。しかし、e-POWERはICEのフューエルタンク、リヤサスペンション、リヤバンパに追加して大型バッテリ、DC-DCコンバータ等を搭載しており、パッケージング上の制約から車両として高い静粛性を実現させるレベルの大容量マフラの搭載が難しい(図9)。そこで、e-POWERが、ICEで使用しているアイドル回転域を使わない点に着目し、ICEのアイドル回転域に排気システムの全長共鳴を移動(低周波化)させることでe-POWERとして利用する回転域の排気騒音を低減するコンセプトとした(図10)。全長共鳴の低周波化の実現のため、ICEの従来設計に対して排気システムの排気ガス流路をICEに対して1.3m延長するロングフロー化行った。流路延長により高い消音効率を確保するためには、全長共鳴の音圧の腹にリヤマフラを近づけることができるテールチューブを延長するロングテール化が最も効果的である。しかしマフラ後方での流路延長はパッケージング制約により困難である。これら消音効率およびパッケージングを両立する手法としてリヤマフラ内部でチューブを往復させることでロングフローエキゾースト化した。一方、リヤマフラ内でのロングフローの実現にあたっては、特集1:「タフギア」×「上質」 新型エクストレイル - 5. EV並みの静粛性を実現するNV技術ロングテールチューブの新たな共鳴による排気騒音への影響を避ける必要があり、またエンジンの高トルク実現のために、低排圧であることが必要である。そこで、ロングテールチューブの共鳴コントロールおよびガス流量コントロールを目的としてe-POWERに最適なバイパス経路を設定した。以上より、低騒音・低排圧を同時に満足するCセグメントパッケージに搭載可能なe-POWER専用のロングフローエキゾーストシステムを開発した(図11、12)。特に低負荷低車速のシーンに於いて、エンジン回転を下げ静粛性を確保するコンセプトであるが、一方で必要発電量を担保するため、高トルク運転により出力確保している。この際、3気筒エンジンによる低周波加振力に対応する必要が生じるため、前述した新開発のエンジンマウント、エキゾーストシステムに加え、VCターボエンジン+e-POWERへ最適に適合したアクティブノイズコントロール(ANC)も採用し、車内音の消音を行っている。286.2.2 ロングフローエキゾースト化による消音6.3 アクティブノイズコントロール

元のページ  ../index.html#33

このブックを見る