日産技報 No.89 (2023)
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図8 トルクロッドシステムトータルバネ値の比較 図7 トルクロッド2本化による入力分担図6 エンジンマウントシステム図と配置更に、圧倒的な静粛性を実現するため、高周波のエンジン放射音も十分遮断させるため、高効率遮音技術を投入している。エンジンがかかっても気にならない、EV並みの静粛性を実現するためのコンポーネント技術であるエンジンマウントについて、3気筒振動モードを考慮した最適マウント配置と、新型エクストレイルのエンジンルームレイアウトと両立させながら、全開加速まで剛性変化の小さい、3気筒高トルクe-POWER専用に開発した低剛性ペンデュラムマウントシステムについて紹介する。従来、軽量且つ低トルクな3気筒エンジンの支持には、ペンデュラムマウントシステムが最も多く採用されている。また、ペンデュラムマウントシステムの高トルクエンジンへの対応として、駆動反力の分担と各マウントへの入力低減を目的に、右マウント上方にアッパートルクロッドを追加し、支持する手法がある。今回、新型エクストレイル e-POWER専用システムでは、ペンデュラムマウントシステムのロアトルクロッドをメインロッド、サポートロッドに2本化し、入力を低減することで、従来のインシュレータの大きさでレイアウトを成立させた。また、2本のトルクロッドを3気筒エンジン1次振動(車両X,Z軸周りの回転偶力)の節をまたいで配置し、上部に配置される左右マウントとの剛性バランスを適切にすることで、3気筒エンジン1次振動に対し位相キャンセルしつつ、最適な防振設計の両立を可能にした。(図6)。ロアトルクロッドの2本化はレイアウト及び3気筒エンジン1次振動との両立だけでなく、全開加速まで剛性変化の小さい低剛性トルクロッドとすることで静粛性に対し貢献している。特集1:「タフギア」×「上質」 新型エクストレイル - 5. EV並みの静粛性を実現するNV技術サポートロッドはストッパ構造を持たず、入力に対しせん断で受けるゴム形状とすることで、入力を受けてもバネ上昇しない構造とし、メインロッドは2本化により入力を低減させることで(図7)、ストッパ機能を持つ従来構造であっても低バネ化を可能とした。結果、こもり音寄与の大きいトルクロッドにおいて、2本化することで全開加速においても低バネ化を実現し、全領域に対して剛性変化の小さい低剛性トルクロッドを実現した(図8)。e-POWERを搭載する新型エクストレイルでは、市街地走行シーンでは車両の静粛性確保を実現するため、・エンジンの低回転稼働・発電のため高トルクでのエンジン稼働を行っているエンジンの低回転稼働化および高トルク化はともに排気騒音を増大させる要因となる。エンジン稼働時の車両の高い静粛性を実現するために、排気騒音の低減が求められることから、エキゾースト設計では排気システムの全長共鳴を低周波化するロングフローエキゾースト技術開発を行った。3気筒高トルクエンジン稼働時の排気騒音を低減するには276.1 エンジンマウント6.1.1 マウントシステムの構成6.1.2 ロアトルクロッド2本化による効果6.2 エキゾースト6.2.1 e-POWERの特徴を活用した排気騒音低減コンセプト

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