日産技報 No.89 (2023)
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図3 エンジン騒音に対するエンジン回転の感度図4 エンジン騒音に対するエンジントルクの感度図2 従来e-POWERが市街地走行時負圧生成のためにエンジン始動する頻度図5 新型エクストレイルのe-POWERと競合車の0.2G加速時のエンジン騒音差成のためのエンジン始動を回避させている。※ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems, 先進運転支援システム)、衝突安全性能を目的として新型エクストレイルに採用した電動型制御ブレーキユニットを静粛性向上にも活用した。SOC低下によってエンジンがかかる場合、特に低負荷低車速のシーンに於いて、従来のe-POWERに対し、エンジン回転を下げて、静粛性を確保している。これは、ダウンサイジングターボとして発表・発売している1.5L VCターボエンジンをe-POWERに合わせて再適合し、従来小型車に搭載していた1.2LのNAエンジンと比較して、低回転・高トルク・高効率で稼働させることを可能とし、十分な発電量を確保しながら低騒音運転させ、エンジン騒音低減と燃費を両立させている。強い加速が必要な場合、エンジンによる電力供給が必要になるが、加速時にも違和感のない音を実現するために、ドライバーの加速意図に合わせたエンジン音レベルとなるよう、エンジンを制御している。具体的には、エンジン音のレベルはトルク感度に対して回転数感度が高いため(図3、図4)、アクセル開度(加速G)と車速に応じて回転数をリニアに上げていく適合を行っている(図5)。特集1:「タフギア」×「上質」 新型エクストレイル - 5. EV並みの静粛性を実現するNV技術さらに、駆動に必要な電力※は可変圧縮エンジン(VC)の特性を生かし、回転を抑えてトルク優先させることで、回転上昇を可能な限り抑えて違和感のないエンジン音としている。本章3、4、5の詳細は1-2.「VCターボ」×「e-POWER」システムの記事を参照ください。※エンジン発電電力 = トルク × 回転数大トルク3気筒エンジンの採用によって低回転化によるエンジン騒音の低減には有利だが、一方、こもり音や車体振動等の低周波現象は不利である。このため、エンジンマウント、エキゾースト、アクティブノイズコントコントロール、車体で低周波感度を改善する対応を行った。264. エンジン音自体を静かにする5. ドライバーの加速意図に合わせたエンジン音にする6. 静粛性を支える車両技術

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