図1 e-POWERと従来HEVシステムの違い*車両計画・性能計画部 ** シャシー開発部 ***車体技術開発部日産の電動化戦略において、e-POWER は環境性能と走りを両立するサステナブルな技術として、電気自動車(BEV)と両輪を成す位置付けにある。このシステムは、内燃機関を有しながらも、車を100%電動で駆動させることで(図1)、BEVの長所である加速性能、静粛性の良さを持ちながら、充電要らずの利便性を兼ね備えており、適用を拡大している。一方で、e-POWERは、従来のICE搭載車両とは異なり、ドライバーの運転操作と同期せずに、エンジンをON-OFFさせるため、エンジンON時とOFF時の騒音レベルの差を小さくすることが、騒音設計において重要である。本章は、これまで小型車を中心に展開してきたe-POWERシステムを、CセグメントのSUVに適用するにあたり、進化させた静粛性実現技術について記載する。新型エクストレイルのコンセプトは「タフギア×上質」である。上質感の重要な構成要素である静粛性を実現するため、下記三つのコンセプトで性能開発を行った。① エンジンの作動頻度を減らす。(以下3で記載)② エンジン音自体を静かにする。(以下4で記載)③ ドライバーの加速意図に合わせたエンジン音にする。 (以下5で記載)CセグメントのSUVの車格に合わせ、発電用エンジンを高出力3気筒ダウンサイジングターボエンジンに変更しており、NV性能に対し、対応が必要な課題(低周波のこもり音、車体振動等)も発生するため、エンジンマウント、エキゾースト、アクティブノイズコントロール、車体なども含めて車両全体で最適化を行っている。さらに、お客様が車に乗った瞬間や走り出した瞬間に圧倒的な静粛性を感じられる様、車両全体のバランス考え、遮音性能も向上した。これら車両の静粛性技術を6に記述する。低速走行時等の暗騒音が低い条件ではエンジン騒音が目立ちやすいため、そのような条件では極力エンジンをかけないことがポイントとなる。このため、暗騒音が高い走行シーンで積極的に発電させ電力を貯めるエネルギーマネジメント制御を行った。具体的には高速走行時では風音のレベルが高く、エンジンの音がマスキングされ目立ちにくいため積極的に発電させるとともに、暗騒音が低い低車速時にはバッテリ充電量(SOC)に応じて、極力エンジンをかけないように制御している。さらに低車速走行が続く条件に於いても、極力エンジン音が目立たぬよう、ロードノイズレベルに応じてエンジン始動をコントロールする路面検知制御を採用し、エンジン音をロードノイズでマスキングする設計を行っている。一方、従来のe-POWER車では、SOCによらずに、エンジンを始動させる条件が存在していたため、これらを回避する対応も追加している。具体的には、従来ブレーキシステムへの負圧供給のためエンジン始動するシーンがあったが(図2)、電動型制御ブレーキユニット※と協調制御を行うことで、負圧生25特集1:「タフギア」×「上質」 新型エクストレイル李 梦沢* 菅沼 真一* 桑田 敏久* 舩津 宣成** 福岡 浩彰**三谷 健文** 前田 和茂** 寺島 康統*** 五十嵐 雄一*** 岡田 和久*1. まえがき2. 静粛性の狙い3. エンジンの作動頻度を減らす5. EV並みの静粛性を実現するNV技術
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