図9 Acceleration G at standing start図11 Zone definition of engine sound図10 Time chart of Driving torque5.2.3 エンジン音による加速感の向上5.3 燃費・排気性能図10に加速時の供給エネルギーと発生駆動トルクの関係を示す。加速直後は、バッテリーのエネルギーを用いてレスポンス良く駆動トルクを発生する。同時にエンジンを始動し、エンジン始動後はバッテリーのエネルギーにエンジンの発電エネルギーを加え駆動トルクを上昇させる。この際、過給応答遅れによりエンジン発電エネルギーの供給が遅れるが、この遅れに伴って駆動トルクを一時的に落ち込ませず滑らかに上昇させるように駆動トルクを制御した(a)。また、エンジン過給開始後は、充分な発電エネルギーを供給する事が可能となる為、ドライバーの加速要求に応じて駆動力を変更した(b)。これにより、自然吸気エンジンとの組み合わせに対し、アクセル操作に対し違和感のないスムーズで過給圧の盛り上がり感を演出しながら、力強い加速を実現した。5.2.2 過給エンジン特性に合わせた駆動トルク制御一般的に過給エンジンは自然吸気エンジンに対し、トルクの立ち上がり時に過給応答遅れを伴う。新規開発e-POWERシステムではこの特性を踏まえ、スムーズで過給圧の盛り上がり感を演出しながら加速するため駆動トルクを制御する技術を開発した。特集1:「タフギア」×「上質」 新型エクストレイル - 2. 「VCターボ」×「e-POWER」システムドライバーは、加速時に加速Gだけではなく、エンジン音からも加速感を得るため、発電中のエンジン音により気持ちの良い加速感を得る技術開発を行った。e-POWERシステムは、エンジンと車輪軸の駆動系を独立して制御できるため、加速時のエンジン回転数を自由に設定できる。また、VC-ターボエンジンにより低回転域でも十分なエンジントルクを発生可能である。この2つの特性を活用し、ドライバーの加速要求が強い場合(アクセル踏み込み量が多い場合)でも、エンジン回転数をすぐに上昇させるのではなく、車速に連動して上昇させた。車速と連動したエンジン回転数の設定に当たり、ドライバーの加速要求に対するエンジン音(回転数)の関係を、官能評価にて以下2つの領域に定義した。①車速に対しエンジン音(回転数)が高い領域②車速とエンジン音(回転数)が同調する領域上記①~②の領域を図11に示す。①の領域では車速の上昇よりエンジン音(回転数)が先行して上昇し違和感をえるのに対し、②の領域では車速とエンジン音(回転数)が連動して上昇し、加速要求に合った加速感を得る。これよりドライバーの加速要求が強い場合、②の領域を用いる設定とした。e-POWERシステムではエンジンと駆動軸が機械的に連結していないため、エンジン作動タイミングと始動後の運転点を自由に選択できる。この特徴を生かすことで燃費性能および排気性能を大幅に改善させた。5.1.1 で述べたエンジン作動頻度の低減に加え、VCターボエンジンによるエンジン最良燃費点の改善(BSFC 217g/kWh@ 2000rpm)の結果、WLTC モードにおいて4WD:18.4 km/L、2WD:19.7km/Lのクラストップレベルの燃費性能を達成した。また、排気性能においても、平成30年基準排出ガス75%低減レベルを達成した。14
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