日産技報 No.89 (2023)
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図7 Engine operation time図5 Relationship between background noise and engine noise図8 Engine speed of fixed-point operation図6 Comparison of engine startup frequency5.1.2 エンジン低回転化5.2 加速性能・運転性5.2.1 加速性能新規開発e-POWERシステムでは、ドライバーがエンジン始動時の騒音を感じ難い静かな走行フィーリングを実現するために、ドライバーがエンジン騒音を感じる領域を定義し、可能な限りこの領域ではエンジンが始動しないようにした。図5に今回定義したエンジン作動領域を示す。車室内の騒音レベルを評価し、車外で発生するロードノイズよりエンジン騒音が大となる低車速域ではエンジン始動頻度を減少させ、また、エンジン騒音がロードノイズより小となる高車速域でのエンジン始動頻度を増加させた。図6に実用走行パターンにおける車速ごとのエンジン始動回数を示す。全車速域でエンジン始動回数を低減した第2世代コンパクトカーと比べ、20-40km/h領域の始動頻度を低減し、40-60km/h領域での始動頻度を増加させた。これより発電エネルギーを増加しながら静粛性を向上する事ができた。また、車速やバッテリーSOC、要求駆動力などの諸条件によりエンジン始動・停止を行うが、発電を開始した際、発電1回当たりの充電エネルギー量を増加させることで、1回の走行特集1:「タフギア」×「上質」 新型エクストレイル - 2. 「VCターボ」×「e-POWER」システムにおけるエンジン始動回数を大幅に低下させた。図7にWLTC モードにおけるエンジン作動時間を示す。エンジン始動回数を大幅に減少させることができ、静粛性を向上させるとともに、燃費性能向上にも貢献した。新規開発e-POWERシステムと組み合わせるVC-ターボエンジンは従来の自然吸気エンジンに比べ低回転で高トルクを発生することが可能である。この特性により、自然吸気エンジンに対し、より低いエンジン回転数で等出力を発生させ、エンジン定点運転時の回転数を低下させることを可能にした。図8 に車速ごとの定点運転時のエンジン回転数を示す。第2世代コンパクトカーと比較し、暗騒音の低い低車速領域から高車速領域まで、エンジン回転数を低下させることが可能となっている。これにより、エンジン作動時においても、エンジン騒音レベルを低下した。新規開発e-POWERシステムの新型モータによる高駆動力と、VC-ターボエンジンによる高出力の発電により、クラストップレベルの加速性能を実現した。図9に従来型HEVシステムとの発進加速時のGおよび車速のプロフィール比較を示す。100%モータ駆動特性を生かし発進加速直後に素早く加速Gを立ち上げ高レスポンスを実現した。また、加速G立ち上がり後も、加速の伸び感を演出するため高Gを持続させた。13

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