日産技報 No.89 (2023)
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図6 第2世代e-POWER x VCターボ図4 ダート登坂発進性能(20%勾配)図5 静粛性3.1 第2世代e-POWER3.2 e-POWER用VCターボエンジンまた、各4輪のグリップ限界を算出しながら駆動力、回生制動力を1/10,000秒単位で緻密にコントロールしているため、スリップしやすい雪道の下り坂などにおいても、アクセル操作で不安なく走行することができる。そしてさらに、格段に向上した静粛性や乗心地によって「上質さ」も感じていただける。市街地など低速走行時はEV走行し、発電時にもエンジンがかかっていることに気づかないレベルの静粛性を実現している(図5)。また、サスペンション形式の刷新に加え、e-4ORCEのピッチングコントロールにより、減速時のクルマの沈み込みや揺れを抑え、街中や渋滞走行時の発進と停止を繰り返すようなシーンにおいても、前後の揺れを感じることが少なくなり、運転席特集1:「タフギア」×「上質」 新型エクストレイル - 1. 進化した本格SUV 新型エクストレイル e-4ORCE6のみならず助手席や後席でも快適で上質な乗り心地を実現している。以下、新型エクストレイルの「タフギア」×「上質」を可能にした技術革新について、次章からの詳細な説明に先立ち、概説する。新型エクストレイルは前後に高出力モーターを配置し、発電用エンジンには日産が世界で初めて量産化に成功した可変圧縮比エンジン「VCターボ」を採用すること(図6)で、力強い加速と低燃費、加えて驚異的に静粛性が向上している。新型エクストレイルに搭載した第2世代e-POWERは、フロントモーター:150kW/330N・m, リアモーター:100kW/195N・mと高出力/高トルクで、世界の速度域の高い道路やオフロードでも、レスポンスのよい、力強い加速を可能にする一方、通常走行ではe-POWERが頻繁に使用する領域に合わせて最良のエネルギー効率とすることで低燃費を実現している。また、市街地など低速走行時は極力エンジンを始動せず、必要な場合にも低回転で効率よく発電する緻密なエネルギーマネジメントを行う。また、路面検知によりロードノイズが大きい時にエンジンを始動する制御技術も採用することで、通常走行時にはEV並みの静粛性を手に入れることができた。従来のe-POWERでは、エンジンで高出力を出そうとすると高回転でエンジンを回す必要があった。これに対してVCターボは、大幅なトルク/出力向上によりエンジンの低回転化を可能にした。加えて、低燃費を求めるシーンでは圧縮比を上げて高効率で発電し、エンジンの高出力を求めるシーンでは圧縮比を下げ、過給圧を上げて発電する(図7)。この結果、低燃費、高出力、静粛性を高い次元で達成し、高出力モーターに余裕ある電力を供給する。3. 力強さと高い静粛性 「e-POWER」×「VCターボ」

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