研究通信

2021.05.26

研究通信#1

マスクの色の違いによる視認性評価
(輝度・視線解析)

今回調査したテーマは「マスクの色による安全性の違い」について。
コロナ禍において必需品となったマスクですが、夕暮れや夜間、或いは雨で薄暗い時などには、白いマスクと黒いマスクは、ドライバーからどのように見えているのでしょうか?
マスクの色について服装との関連を含めて調査しました。

マスクの見えやすさを輝度解析で計測

まず初めに、マスクの輝度の解析を川守田拓志特別研究員(北里大学)監修のもと、実施しました。

図1 マスクの輝度解析図1 マスクの輝度解析

測定の結果は、白いマスクの輝度が一番高く、ブラックグレーやライトグレーのマスクは低い結果になりました。

視線解析による時間帯別の計測

この結果をもう少し深掘りしてみます。
白のマスクが輝度が高いという事が分かりましたが、時間帯に関わらず白のマスクは目立つのか、「視線解析」を行いました。

図2 マスクの視線解析図2 マスクの視線解析

図3 人(マネキン)の撮影現場図3 人(マネキン)の撮影現場

調査は、クルマから人(マネキン)を撮影したデータを解析しました。
今回は日の入り前から日の入りまで、時間帯別で白のマスクの見られやすさについて計測しました。

辺りが薄暗くなる日の入り時間になるにつれ、白のマスク周辺に視線が集中するようになり、白のマスクは周りから認識されやすいことがわかりました。

マスクと服装を組み合わせた視線解析

更に「視線解析」の範囲をマスクから、全身に広げてみます。
角田千枝特別研究員(相模女子大学)監修のもと、一般的な成人男女を想定し、最近のトレンドを取り入れた5つスタイリングを用意。白のマスクを着用させ、撮影と解析を行いました。

図4 スタイリング一覧図4 スタイリング一覧

図5 図4における視線解析結果図5 図4における視線解析結果

日の入り40〜30分前はまだ辺りが暗くない時間帯ですが、服装に関わらず、白のマスクに視線が行くことが分かりました。
服装の視点で見てみると、写真では比較的どの服装も見えやすい印象がありますが、画像解析をしてみると差が明らかになりました。
明るい色や黄色のものを取り入れた「サムシング・イエロースタイル」と若年層男性が全体的に視線を集めやすく、男性サラリーマンにも部分的に視線が行く結果になりました。

サムシング・イエロースタイルには強い視線の集中はありませんが、黄色と白の明るい色の組み合わせのため、全体的に認識されているような状態です。一方、若年層男性は全体的に認識されつつも、赤いパーカーから出ている白いインナー部分に強い視線が集中しています。また、男性サラリーマンの黒いジャケットとワイシャツの境目部分やデニムと白いスニーカーにも強い視線が集中していることから、白と他の色のコントラストの強い部分に視線が集中しやすいこともわかりました。

また、高齢者は暗いところが特に見えにくくなる傾向にあります。白いマスクを装着することで、高齢ドライバーから視認されやすくなると考えられます。

より安全性の高いマスクとコーディネートとは?

川守田拓志特別研究員による「マスクの色」についての考察

「マスクが目立つ」という観点で見ると、マスクから反射する光の強さ(明るさ)と、肌や服装との明暗差、面積の影響が大きく関係していることがわかりました。日の入り前、黒色と白色のマスクの明るさ(輝度)を比べたところ、4〜5倍の差が出ました(*条件によって変わる可能性があります)。
よって、ドライバーからの見られやすさを考えると、マスクはやはり白がおすすめです。白は、多くの光を反射するので、明るく、目立ちやすい色で、昼間から夕方、夜間まで幅広いシーンで高い視認性を保つことができます。

角田千枝特別研究員による「マスクと服装のスタイリング」についての考察

マスクだけでなく、着ている服装の色もドライバーからの見られやすさに関係する重要な要素だとわかりました。実験では、女性会社員とシニア女性のスタイリングにどちらも同じ色味を使用しましたが、オフィスカジュアルの女性会社員は明るくシニアは暗いという差を持たせたところ、オフィスカジュアルの女性会社員のスタイリングの方が視認性が高いことが確認できました。明るめの洋服を選ぶ意識を持つだけで、交通事故防止につながりそうです。
暗い服装のときには、白や反射材など明るい色のマスクを「差し色」として取り入れるコーディネートを実践することで安全性が上がります。ぜひ一工夫してみてください!

結論

マスクの色は「白」がおすすめ。
明るい洋服との組み合わせ&
差し色のコーディネートで安全性アップ!

レポート制作:
井村晋作研究員、榊原あすか研究員
(サポート:奥田寛規研究員、堀越実研究員、大村佳子研究員)
監修:
川守田拓志特別研究員
(北里大学 医療衛生学 部視覚機能療法学 准教授)
角田千枝特別研究員
(相模女子大学 学芸学部 生活デザイン学科 教授)
協力:
おもいやりライト運動事務局、株式会社 丸仁(再帰性反射材マスク)、株式会社リネアストリア/LINEASTORIA(ウィッグ)
撮影機材:
SONY FDR-AX40